一億回の転生者

きのっぴー♪

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第一章「『魔法少女☆マジカラ』編」

第9話(Aパート)

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※学校の課題やら色々な事に追われ暫く投稿出来ませんでした事を此処にお詫び申し上げます、スイマセン…




ーー此処は、とある黒城の大広間

そこではとてもとても大勢の、まるで何処かの軍隊か何かかと思わせてしまう位に部屋ギッシリにと埋め尽くされた怪人の大群が待機していた
ドロドローンが大量に埋め尽くされている他、横にはあのジャドーという豚の怪人の他に様々な者も居た
そしてそのすぐ側、彼等の目前にある壇上の玉座に座っている黒き少女
少女は近くに居たジャドーと会話を交わしていた
「それで…魔法少女の様子は?」
「いやぁそれがどうも面倒な事に、ちゃんと手筈通りにボスの情報で心をへし折ってやった筈なんですが…どうも復活した様で
すいやせん【ボス】…」
ボスと呼ばれた少女は想定していたかの様に冷静でいる
「くふふっ、伊達に彼女も魔法少女を名乗っていないっていう事だよ
それに最近怪人が暴走するっていう謎の事態も起こっているみたいだし…まぁ何にせよ全部想定内、気にする事は無いさ」
「はぁ、さいで…」
ジャドーは申し訳無さそうにしながらコッソリと部屋の隅にへと移動し、そのまま遠くで見守る様にして壁に寄りかかった

その後、彼女はズラリと揃った怪人軍団全体を少しばかり見回した後に玉座からゆっくりと立ち怪人達の注目を自分へと集める
そして、静かに口を開いた
「…諸君、遂にこの時が来た」
少女の言葉でザワついていた怪人達が一斉に黙る
「決戦の時はもうすぐ其処だ
目指すはあの魔力が満ちる街の攻略、即ちあの魔法少女と正体不明の人間との決着を決める事…」
天を仰ぐ様に手を掲げ、そして開いた手を握り締め
「あの魔王が忌まわしき魔法少女に倒されて幾年月が経った、だが力を蓄えじっと待つ時間もこれまでの話という事
今や怪人の大軍隊と化した僕達に恐れるものは無し!」
そして高らかに叫ぶその行動によって





「そう、今宵こそ私達…怪人組織【ネダス】の力を見せる時だ!」
魔法少女と怪人との大きな決戦が、遂に幕を開けようとしていた



【第9話「前夜章、予告と怪人軍団」】



ーーーー

「んー…っはぁ、よーやく筋肉痛が治ったわ…」
朝の学校の教室にて、ゆめみは身体に溜まりに溜まった疲れを追い出すかの如く思いっきり背筋を伸ばして欠伸をしている
ようやく修行での疲れも取れたといったところか
いつものメンバーの面々も筋肉痛が取れたのか、疲れたという表情を見せながらも身体の動きは大分楽になった様である
「いやぁ一時はどうなる事かと…」
「ホントホント
熊と追いかけっこするかと思いきや今度は素手で格闘させられて吹っ飛ばされるわ、それも終わったら岩投げてくるわ…」
『散々ッス、何度死ぬかと思った事か』
「つかれた…」
どうやらこの修行にはかさみも参加した模様、若干疲れた様子だ
まぁこの前一時的とはいえかない達をも軽く凌ぐ魔法少女になった手前、一応トレーニングした方が良いとでも思ったんだろう

因みに今話している場所は普通に教室の中なのでアイリスはバッグの中から魔法による通信で会話しているのである
…なら妖精の時点で見つかったらバレるんだから家からやれよか、そもそも普段から外出るなよとかは言わない約束です
『…妖精にだって、寂しい時はあるんでス』
「急にどしたのアイリス!?」
なんて泣き言恨み言を言っている割には平気な様子の四バカ、見た通り文字通りめっちゃくちゃピンピンしながら話してる
熊とのトレーニングにより体力が上がった効果か、流石山のクマさん
「にしてもっ…と、本当に身になったのかしら?疲れてるせいだろうけれどもまだあんまり実感がないわね」
「確かになー、私もこの前怪人と戦ったけれども…アレは手加減してたし
ホントに強くなったんかねぇ?」
しかし当の本人達は自分達が強くなったのかも疑っている様で、無駄だったんじゃないかとまで考える始末
…いや、本当に強くなってるよ?ちゃんと
「まぁまぁ、それはおいおい分かる事ですから…
それよりもそろそろチャイムなりますよ?」
「うぉっとホントだやっべぇ!」
「急げー…」
のぞみの言葉でやっと気づき一瞬時計を見てから鞄を取り出して授業の準備に取り掛かるかないと、自分の席に戻り始めるかさみ
「じゃあ授業前に私トイレ行くわ、準備もう済ましてるし」
「あ、それじゃあ私も行きますー」
それをきっかけにゆめみとのぞみは授業前にと用を足しに、そそくさと女子トイレへと足を運んで教室を出ていく
肝心の授業までの時間はもう五分とない
「えっ大丈夫なの?先生に怒られてもしらないよ?」
『二人は信頼あるから大丈夫ッスかないさんじゃあるまいし』
「アイリス貴様それどういう意味じゃい」
『いや言葉通りッスけれど』
かないは無自覚に煽るアイリスにイラつきながらも慌てて次の授業への準備を進め始めるのだった



そんな時、遂にある大事が始まろうとする
『…うん?
かないさん、ちょっと待つッスよ』
「アイリス後でね、あっやっばいノートが引っかかって」
『ぐぇえっ』
教科書を無理矢理出そうとしたせいか鞄の中に隠れていたアイリスが他の教科書やノート等の紙類に圧し潰される
「あっゴメン…ってヤバいもう先生来る!」
しかしもう時間も時間と焦っていたかないはアイリスの話も聞かずに、先生が来る前にと授業の準備をし続けていた
そんなかないにもアイリスが諦めずに話しかける
『だ、大丈夫ッス…というかかないさん、妙に外が騒がしくないッスか?』
「へっ?」
アイリスの言葉をやっと聞き入れて、その言葉通りに自分の耳をそのまますーっと周囲へと傾け始める
すると、確かに何かがおかしかった
先生が来る直前の時間なのに何故か周りの生徒はザワザワと、まるで事故とかそういう類の事が起こったかの様な反応をしていた
「確かに何か変だなぁ、何かあったのかな?」
これにはかないも不可解に思う、が別に気にする程でもない
『ちょっと見てきて貰っても良いッスか?』
「えっやだ…それで立った結果結局先生に怒られるハメになるんでしょ、私はちゃんと知ってるんだぞ!
どうせ私が立ったら『先生かないちゃん立ってます』ってなるんだ!」
『そんな地味かつ陰湿なイジメじゃないんだから…』
しつこくも粘るアイリスに頑なに答えないかない

「「「「キャーーーーッッ!!!!」」」」
「「!?」」
そんな二人の耳に突如として数々の大きな悲鳴が入ってくる
先程まで騒いでいた教室のクラスメート達の声だった
『かないさん、コレは流石に何かがあって…!』
「うん!悲鳴が聞こえたのなら仕方ない、言い訳立つよね免罪符!廊下まで聞こえる位の声量だったし大丈夫だよね!」
『うっわやってる事は悪くないんだけどこんな状況でもゲッスい』
先生が来ても良い言い訳が出来て大丈夫と分かった途端に姑息なかない
「かない、どうしたの?」
ついでにそんな騒ぎにいつの間にか、自分の席に戻っていた筈のかさみも何事かとかないのところにスタスタと寄ってきた
「あぁかさみちゃん、実はかくかくしかじか」
「おk、把握…」
『オイ誰だ!かさみさんに変な言葉覚えさせたの!』
何て若干ながらコントしながらもかないは叫んでいるクラスメートの方に向かい、そして一体何が起こったのかを聞いてみる事にした
紹介しましょう、今回限りのモブキャラことA子ちゃんです
「ねぇ、どしたのA子ちゃん?」
『うっわぁお何といういかにもモブな名前でしょう』
「アイリス、静かに」
アイリスのボケかツッコミかよく分からない言葉を尻目にかないは、近くに居た女子に話しかけ何が起きたのかを聞いてみる
「か、かない!アレ見てよ!」
「うん?一体何があった…の……」
ふと指をさされた窓、そこに見えたのは…




…校庭のグラウンドに突如出現していた、大量の怪人だった
「……は?」
『どういう、事ッスか…?』
その唐突とも言える状況と光景に二人は目を疑った
それもその筈ここまで怪人が大勢でこの学校、いや町全体に張り巡らされている様に何処からともなく湧き出ているのだ
ここまでの数というと、第二話の軍勢以外には見なかった
「ついさっき急に現れたの、これヤバくないって…」
「た、確かに怪人っぽい…けど」
『そのようでス、でも何か…』
だがそれよりも何より一番おかしいのは…きちんとした群れを成し、何故か一定の間隔でじっと何かを待っている事だった
怪人は全く動く気配も無し、街を見てもそういった様子も無い
こんな街中で人間が見えていない訳でも無し、そもそも人間が居ようが居まいが所構わず無差別に汚染するような奴等だ
なのにどうして何もしてこないのか?
『…全く動かないッスね』
「う、うん」
その異様かつ不気味な雰囲気に二人は引き気味だった
と、すると
「かない大丈夫!?勝手に一人でアレに突っ込んでない!?」
「無事ですかかないさん!自爆特攻してないですか!?」
「おいコラ貴様らそれどういう意味だコラ」
『というか此処教室、アンタら少しは隠して下さいッス』
先程までトイレに行っていた二人が異変を察知してか教室へとも飛び込む様な勢いで教室の中へと入りかないに的外れな事を聞き始める
「よ、良かった…まだやってなかったのね」
煽りというか声のトーンの辺りガチな感じのヤツだが
「まだも何もしねーよ、何でする前提なんだよ」
「えっ?」
「えっ」
まぁこれに関してはかないにも残当という意味で自業自得でもあるが、二人の方にもだとしても仲間をもうちょい信じろという話である
「…ま、まぁそれは兎も角として…つい先程の騒ぎをどうにかしましょう」
「待って今の間は何」
かないのセリフを遮って、というか何も言わせないようにゆめみが喋り出す
「さーて肝心の怪人集団とやらはどうかなーっと…って凄い数ね」
「おいコラ君達コッチ向け、目を逸らすな!」
『あからさま過ぎるッスね』
なんて小芝居も程々にしているが、一体どうしたものか
このままでは学校の授業とかそういうのは勿論の事、下手をしなくて危険過ぎて人ひとり動く事も出来なくなっていることだろうに
「それにしてもこの多さ、どういう事でしょう?怪人に何が…」
「さぁ…っていうか、アイリスは気づかなかったワケ?魔力探知とかさ」
しかし、確かにこの怪人の集団もアイリスならちゃんと探知出来る筈
であれば何故直前の騒ぎを聞きつけるまで反応しなかったのか?
『それがサッパリ分からないんスよ…
さっきまで反応なんて欠片も無かったし、怪人もいつもと同じヤツの筈ッス』
だがしかし、これまたアイリスの回答は分からないというお決まりのもの
「…アンタの魔力探知とかいうの、最近本当に信用出来ないわ」
「アイリス、いつも失敗してる」
『うぐはっ!?』
「ゆ、ゆめみさんせめてオブラート!オブラートに!」
だがそれが本当なら一体どこから湧いて出たのかという事になる、まさか自然発生でこんなにも大規模かつ規律的に出現するというワケじゃあるまいし
「で、でもアイリスさんが分からないのなら…私達も分からないですし」
「まー確かに、一体何が起こって…?」
すると、ふとかないの頭にある出来事が過ぎる
その出来事とは前に戦闘したあの豚の自称怪人ことジャドーの事
「そういえば前に戦ったあのジャドーってやつ、怪人を呼び出してた様な…
それに確か…ボスってやつも居るらしいし」
「「「!!!!」」」
そのかないの言葉で四人はその出来事を事細かに思い出した、その後のかないのネガティブ的なインパクトで完全に忘れていたが実は大分重要そうなセリフを残していた事を
「そ、そう言えば確かに…言ってましたね」
「確かに…何か、結構ヤバそうな事言ってた様な…」
ボスとやらに、呼び出していた怪人…どう考えても今の状況と結び付く
「と、兎に角早くアレを何とかしないと…」

その時だった
「っ何!?」
外に居たドロドローンの大群が突然怪しい光を放って光りだし、まるで大きなモニターの様に空中に映像を映し出した
そこには良く姿が見えない、ぼやけた人の様なものが写っていた
「何だ、これ…」
「アレは…ひ、人?」
人かどうかすらも判断がし辛い程に映像の歪みやボヤけは酷い、いやここまでくると正体を隠すためにやっている様にも見えてしまう
何て考えていると、何処からか拡声器の様な若干くぐもった声が聞こえてくる
『あー、マイクテスマイクテス…聞こえてるかい?』
映像とは違って妙にハッキリと頭に入って来る、少女の様な声だった
『ちゃんと聞こえてるみたいだね、それじゃあ…少しばかり大がかりではあるけど、始めようか』
「何か厨二臭い声が聞こえて来たぞ、痛々しい」
「シッ、自分ではまともなつもりなのよ」
何て言葉の端々にもボケを交えつつ声に耳を傾ける五人
『さて、と言っても何から話したものか…そうだね、まず自己紹介もといボク達の正体から明かさせてもらおうかな』
「正体…?」
声は少しだけ間を開けた後、また話し出す
『ボク達の名は【怪人組織ネダス】、早い話が少しばかり怪人を管理している…そのまんま怪人達の組織だよ
魔法少女諸君はジャドーって怪人を知っているかい?アレもボクの部下さ』
「なっ…か、怪人組織ですって!?」
『ジャドーって確か前にかないさん達が戦った、あの豚みたいな…!?』
どうやらこの声の主はあの怪人を名乗るジャドーの上司…いや多分、アレの言っていたボスというヤツの模様
それに前から疑問になっていたジャドーと怪人との関係、忠実に命令に従っていたアレらは全てアイツの部下だったのだ
「うーむ、やっぱ多分アレがボスかぁ…なんか意外だなぁ」
「私もてっきりあの大きな怪人みたく、893みたいな人かと…」
『いや人ではな…まぁ人っていうか怪人ッスけども』
魔法少女達は神妙な顔をしながら映像の方を眺めている
『それじゃあボク達の紹介も終わったところで…少し、本題に入らせて貰おうか』
「!」
すると、遂に敵自身が何か重要な事を言いだそうとしていた
その空気に五人はおろかコレを見ている街の人全員が目と耳を大きく開かんばかりにと声と映像に注目している
『そもそも、ボクこうやってキミ達この街の住人に話しているのはある宣告というものをしようと思ったからさ
いきなり何も言わずというのも敵ながら流石に可哀想だしね』
「せ、宣告ぅ?」
『…完全にラスボス戦フラグというか嫌な予感しかしないんスけど』
そう言いながら妙に楽しげにくふふと笑うソイツ、魔法少女達は一体何を考えているのかとか何を言い出すのかと内心ビビりまくりである
『まぁ小難しい事を話すのもボクはあんまり得意でも好きでも無いんでね、目的そのものだけを単刀直入に言わせてもらうよ
ボクがこうやってキミ達に話しかけているのはね…』
街全体の人間が息を呑む
そして漸くといったところで、ソイツが言い出した目的とは…





『…この街に戦争を仕掛けるっていう、宣戦布告の為さ』
「「「「!!!?」」」」
まさにアイリスが言った通りとんでもない事だった
「せ…せっせ、戦争ッ!?」
『明日この街に我が怪人の軍隊を襲撃させる、このボクと幹部こそ除くが勿論…部下の兵士である怪人全てをだ』
組織の怪人全て…といってもかない達にはそもそも怪人の組織自体がどれ程のものか分かったものでは無い、だがしかしジャドーの戦闘力等を察するに相当な規模であるのは間違いないのだろう
『まぁ少なくともこの街全体を壊滅させられる位はあるだろうね、勿論だけどコレはハッタリなんかでは無い
この街の怪人達がその証拠だよ』
「何か嫌な予感がすると思ったら…そういう事ね」
「ままま、街全体を壊滅させるって…!?」
その声色の凄みというか雰囲気からもとても嘘を言っている様には見えない
どうやら本当に、怪人を送り込む様だ
『ボクと幹部達は北の拠点でその様子でも眺めさせてもらうよ、精々街をちゃんと守りきっておく事だね…くふふふっ』
「っどこまでもふざけやがって…!」
声の主はまるで見下ろしているみたいな声色で愉快そうに笑っている
そんな様子の声に段々と怒りを隠せずにいるかない、街中の人々も気持ちは同じなのか『ふざけるな』だのと怒声が次々に発されていく
『とまぁそんなワケだ、ボクをガッカリさせないでくれよ?
魔法少女もとい街の住人であるキミ達に話したかった事はそれだけさ』
それを知らないで居るのかはたまた聞いていないフリでもしているのか、そんな街の状況もお構い無しに声の主は楽しげに話し終わる
妙に上機嫌な怪人組織側とそれに相反する様な街中の怒りと不安、正に空気だけでも分かるレベルの一触即発っぷりであった

という感じで突如告げられた宣戦布告の声はやっと終わるかと思われた
のだ、が…
『っと、話したい事は取り敢えずこれで終わりかな…
おっとそうだ!まだ最後に話したい事はもう二つあるんだったよ』
「な、何だよ…まだ何かあるっての!?」
まだ二つ放していない事が二つあるという声の主、正直もう宣戦布告をしたこの時点でお腹一杯な感じなのだが
しかし未だに街の至る所に放置されているドロドローンといいどう考えても物凄く嫌な予感しかしない
そう思っていた矢先にもまた声が放たれる
『まず一つ目、ボク自身の紹介が遅れた
想像の通り…ボクの名前は【永久とわ カルナ】、この怪人組織ネダスのトップであり部下からはと呼ばれているよ』
「永久、カルナ…!」
これで改めて予想していた事がハッキリとした
この声の主もといカルナという人物こそがジャドーの言っていたボスであり、このドロドローン達を操っている黒幕である事が
そしてカルナは続けていった
『ああそう、後もう一つ言いたい事っていうのはね…』
そう言って映像の中のボヤけた姿が心なしかニヤリと笑った時

『折角の宣戦布告って事で、プレゼントを上げるって事だよ』
「っ!?」
一瞬、大きく地面がグラついた
『え、はぁっ!?ちょ、嘘ッスよね!?』
「どうしたのアイリス、一体何…が…!?」
アイリスが何かに気づく
その様子を見たかないはすぐ様街の辺りを見回すとそこには
「「「「ォォオオオオオオ!!!!」」」」
「何!?何ですがコレ!?」
「のぞみ、アレ見て!」
学校の周りに居たドロドローンが一箇所へと瞬く間に集まっていき、一つ…また一つと混ざっていき一つの固体へと融合していく
その光景は、まるでどこかで見た様なものだった
「ちょっま、コレって…一話のアレじゃね!?あの巨人みたいなの!」
『確かにその通りだけど一話とか言わないで欲しいッスね』
かないの言う通りアレは一話に発生した怪人の集合体だった
だが前こそ瀕死だった上にそこまでの数は無かったが、今回に限ってはその数は街を覆う程…ビルみたいな前の大きさとは比較にもならない
やっと出来上がったそれは人間から見れば、まさしくだった
「オォオォォォ…!」
「うわぁ、これはちょっと…」
「すごく…おおきいです」
その巨体たるや、敵ながら見事な程だった
『ボク達を止めるにはコレ位は楽に倒してもらわなければ困るしね、それじゃあ精々頑張る事だよ魔法少女の諸君ら』
「こんのっ…最後にどデカい土産残してきやがってぇあんの野郎!」
敵の口車に乗るのも癪だが、流石にどっかの巨大な壁を超えるレベルの巨人みたいな姿してる奴を野放しにしておくワケにもいかない
そんな人をおちょくった様な行動に魔法少女達は、思わず歯を強く噛んで身体を震わせていたのだった

「…だがしかし、ある意味朗報でもあるわね」
「は?どしたのゆめみちゃん、頭でも沸いた?」
「こりょすぞ」
だがしかし、いくら凶悪な怪人や敵であろうとも
「良く考えてみなさい、私達はまだ修行から帰って早々経ってない…つまりはまだ怪人と戦ってないのよ
つまり、アレは実験台に丁度良いって事よ!」「
「…あぁ、要はただのやせ我慢&カラ元気か」
『やめてさしあげてくださいッスかないさん…』
それならばと、こちらにも正義の味方は居るのだ
「まぁでも、私達なら出来ますよ…きっと、いや絶対に」
『ま、確かにそうッスね』
ただの女子中学生…それもたった三人、だが
【魔法少女マジカルカラーズ】という強力なヒーローが
「よっし…それじゃあ折角の腕試しだし気張ってこうぜ!」
「「「おうっ!!!」」」
『あ、一応読者の皆様に言っておきますが全員小声ッス』
「誰に言ってんのアイリス…?」
そんなこんなで改めて、今回も今回とて
『くふふ、それじゃあ魔法少女が来るまでの間はそこの巨人のキミはその街の中を…たっぷり暴れてくると良いよ』
「オォオオオオオオ…ッッ!!!!」
魔法少女の戦いが始まろうとしていたのだった
「それじゃあちょっと隠れて…行くぞ!」
「「「変身メタモルフォーゼッッ!!!!」」」




「っんの、昼間から…」
「…ドロォ?」
尚、始まるとは全く以て言ってはいないのだが
「るせぇええええええええええええッッ!!!!」
『えっ?』
何処からか放たれた昇竜拳は見事巨人のデッカい顎にクリーンヒット、更にいえば集合体の頭らしき部分は跡形もなく消し飛んだ
コレには流石の敵のボスもドン引き
「ったく平日だってのに何だってこんな街中+デカい声で放送してんだ、選挙カーじゃねぇんだぞ別んトコでやれこのヤロー」
まぁ当然のごとく実行はいつもの常習犯もといただし、文句を言いながらも怪人相手に振り上げた拳を下ろしつつも自由落下していくその様は傍から見ていてかなりシュールである
ニートらしさを醸し出すセリフを吐きながら出たそのジャージ姿は完全に堕落した引きこもりのソレ、多分さっきまで寝てた
「たくっこんなパワーアップもねぇ勝ち確イベントなんぞに貴重な尺取ってたまるかっての、小説コッチの都合も考えやがれ」
(アンタと作者の妙ちきりんな都合は知らねぇよ…)
などとかないは心の中で呟いた、あくまでも心の中でだが
「ド、ドドッ……
ドロォーーーーッッ!!」
「!」
そんな事をしてる間にも倒された怪人がまた動き出す
というもの姿形こそ人型そのものだが元はスライムの様な不定形な生物、それも合体しているというよりも無数の複合体なのである
したがって頭部らしき部位を破壊されても、個々は無傷なのである
「ま、まだ生きてんの!?」
『しっつこいッスねぇ…』
だがしかし、巨人の身体から放たれた触手は何故か明後日の方向へ
因みに地味にだけどこの時ただしくん、普通に物理的に浮いてます
ただしのところには一切届いてなどいなかった
「おーい、一体何処向かってんだー?」
「ってなーんだ全然当たってないじゃん、ヒヤヒヤさせやがって…」
『いや違うッス!アレは…』
「待ってどうしてただしさん空中静止してるのに誰もツッコまないんですか」
そこはただしだから、としか…
と、そんな事は置いておいて
紫色の触手が向かっていたあさっての方向と思われた場所はなんと、危険を承知してか近くで野次馬をしていた数人の人達であった
「「「「ひ、ひぃぃいっ!!!?」」」」
「っ何でこう、無謀な事する奴が出てくんのさぁ!」
いや危険というよりもただただ無謀な野次馬なだけの模様、触手が近づいた途端に悲鳴を上げてパニックになっている
まぁそのまんま自業自得といわんばかりにかない達の変身すら間に合わずに襲われると思われたが
「危ないっ!」
「「「「うわぁああああッッ!!!!

って…アレ?」」」」
向かって来た筈の触手はコッチに向かってくるどころか、まるでトカゲの尻尾切りの様に全て先が綺麗に切り落とされていた
切り口には何故か、焼け焦げた様な後と煙が見える
「ドロ、オォ……ッ!?」
まぁ誰の仕業かと言われれば、目の前の一人しか考えられない
巨人のさっきまで漏れる程に立っていた殺気もその出来事と現象を前にしてほぼ完全に失せ、寧ろ困惑すらしていた
「…で、次は?もう終いか」
「……!!」
ヘッドホンを擦りながら言うただの人間にしか見えないそれに、腰を引かせながらジリジリと後ろに追い詰められる怪人の集合体
そして
「ねぇならコッチからいくぞ、そぉらよっ!」
ただしが二回目に放った拳の拳圧はまるで軌道の先を追う様に巨人の形をしたソレを、刹那かつ台風の如き強烈な一撃で縦一閃に切り裂いた
更にそのパワー留まる事すら知らず、残った怪人の欠片も余す事無く吹き飛ばす
「うわぁ、肉片らしきスライムが無惨に吹き飛んで…」
「汚ぇ花火だ」
勿論周囲への被害は一切無し、ぶっ飛ばされた巨人みたいなアレは一気に空の彼方へと吸い込まれあっという間に星に
「えーっと…あ、うん…まぁ終わった、ね」
「いや街の平和的には良いんだよ、良いんだけど…何か、こう…」
結果的には被害も無くすぐに終わったので良かったが、魔法少女達は勢い良く振り上げた拳の降ろしどころを見失い困惑状態
そこに街のヒーローとか主人公パーティの様な面影は全く無い
「…あぁうん、なんかゴメン」
そして千里眼か何かも持ってるのか、その落ち込んだ様子を見たかの様な表情でただしもコッソリかつボソリと謝罪を口にしたのだった

と、そんなコッチの勝手な事情は別として
「ま、まぁ兎に角…あの巨大な映像っぽいのも無くなったし、ひとまず…」
『…素晴らしいじゃないか、是非とも我が軍に入って欲しい位だよ』
「「「「!!!!」」」」
ドロドローン共が跡形も無くやっつけられたのにも関わらず、さっきと全く変わりない様に声の主ことカルナはまた喋り出した
「ドロドローンは倒した筈なのに、どうして…それにコッチの状況が分かってんの!?」
魔法少女は再び街を見回す、が残党らしきものは見当たらない
『くふふ、さぞボクの声が届いてる事に驚いてるだろうけど…コレはボク自身の魔法だからね、声を伝える位問題は無いよ
…それとそのドロドローン以外にもまだまだ部下は現地に潜伏させていてね、街の様子はほぼ完全にコチラに筒抜けなのさ』
「何ぃッ!?」
あれだけの軍勢を使った巨人を倒されているのにも関わらずこの余裕気なセリフ、他にもまだまだ何かを隠しているのだろうか
何にせよ、当初の宣言通り襲撃は変える気は無い様だ
『いやはや感服させるねぇ、流石に予想外だよ…とはいえ街の襲撃は決定事項なんでね、悪いけど決行させて貰うよ』
「…………」
街の人達もすっかり無言になり、ただ声に耳を傾けるばかり
ふと地面に降り立っていたただしがそれらしいセリフで声の主に聞いてみる
「一応聞くが、お前らの目的は一体何なんだ」
『それは勿論言えないね、どの道対立する君達が気にする事ではないよ』
だが勿論と言えばいいのか、相手は全く言う気も無い
声の主はどうにも明るく気楽そうな声色で友人に話しかけるみたく話しながら、そのまま繋げる様に話し続ける
『ま、これはただのデモンストレーションさ
それじゃあ次見る時を楽しみにしているよ、それじゃあね』
そう言って声はブツリと途絶え、何も聞こえなくなった
「…一体何だったの?」
「イマイチ、敵の目的は分からないわね
わざわざ街全体にまで敵に襲撃する事を宣告するだなんて…」
敵らしき組織も全く分かっていない以上どう動くかも目的も何もかもが分からない、そんな魔法少女達は異様にソレを不気味に感じた
そして同時に、どうすれば良いのかも考え始めた…
「何か、怖いです…」
『全く…何が何だが意味不明ッスよ』
「そりゃあね、かさみちゃんもそう思うでしょ…」
そう言ってかないが自然と振り向く、すると

「う、うぅぅ…っ!」
「ってかさみちゃん!一体どうしたの!?」
かさみがすぐ後ろで、頭を抑えながら倒れていた
『大丈夫ッスかかさみさん!』
「が…うぅあ、ぁっ…」
「皆どいて、かさみを保健室に送るから!」
それを見たゆめみは瞬時に固まっていたクラスメイト達に向かって叫び、すぐに保健室へとかさみを運ぼうと背負い始めた
そんな中、かさみが必死に何かを声に出そうとする
「あ、ぁぁあ…か、か…!
「どうしたのかさみちゃん、何か言いたいの!?」
そこで出た、言葉とは
「うぐ…




か、カ…カル、な…!」
「…は?」
まさしくついさっきまで話していた、敵のボスの名前だった

《Bパートへ続く》
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