一億回の転生者

きのっぴー♪

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第一章「『魔法少女☆マジカラ』編」

第10話(Aパート)

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「…で、基地に行くってどうやってさ?」
ふとかないが全員に聞く、どう考えても出発直前に聞く事では無いが
しかし確かに気になる疑問ではある
「そういえば…どうするんでしょう?向こうは海ですし…」
「私達普通飛べないものね」
魔法少女に変身した後の恩恵は大きく分けると二つ、身体能力の劇的な向上と自分が適正とされる属性の魔法の行使である
他にも誤認識や汚染の軽減等の様々な細かい魔法は確かにある
…だがその中に空を自由に飛べるなんて何処ぞの青狸の様な機械じみた魔法は無い、精々身体能力で勢い良く跳んでそのまま地面に落っこちるだけだ
「どうすっかねぇ…」
「…跳ぶ?」
「「「いやいやいやいや待て待て待て待て」」」
まして城も見えない距離で海にジャンプでもしてみろ、どう考えてもドリフみたく全員仲良くそのまま海にドボンがオチだ
「アンタ魔法少女じゃないし目の前の自殺行為は流石に止めるわよ!?」
「そもそもこの高さじゃ着水で死ぬねハッハッハ」
「いや笑い事じゃなんですけど」
というか肝心の今海に面してる場所は崖にも近いところ、飛び降りたら普通に自殺以外の何物でもないよねそりゃあ

ではどうやって敵の根城まで行くというのか
「ふっふっふ…」
「どうしたのアイリス、ぽんぽんぺいん?」
「違うわッス!」
何やらいやらしく笑い出すアイリス、秘策でもあるのだろうか
「実はこんな事もあろうかと!
テレレレッテレェー、『魔法の翼』~」
「うわ腹立つ」
アイリスがダミ声でこれみよがしに取り出したのは、何やら怪しい光に包まれた劇の小道具の様なちっちゃな二つセットの翼だった
「昨日仲間に頼んで3セット貰ってきたんスよ、コレを背中につけて魔力を流すと空を自由に飛べる妖精族の名産品ッス!」
「そんな未来の道具みたいな名産品があってたまるか」
まぁつまるところを言うと魔法版タケ〇プターである
「ていうか3セットなのね、私達四人なのに」
「まぁかさみさん魔力使えないッスしね、誰かが担ぐしかないッス」
かさみは偶然か必然か一応魔法少女にはなれたものの今は魔力自体すら無いような状態、魔法道具は勿論一切使えないだろう
となると飛んだまま誰かが抱きかかえるという…かなり危険な事になる
まぁ大丈夫、多分きっとメイビー
「と、それじゃあかないさん後ろ向いてくださいッス」
「うん?えーと…こう?」
という事でかないはアイリスの言う通りに背中を向ける、多分ではあるが翼を魔法少女達に装着させるつもりなのだろう
(…何か背筋というか、背中から悪寒がするんだけど)
そういえば、装着方法は一体どういう感じなのだろうか…
「それじゃあいくッスよー」
「あ、アイリス?ちょっと待っーーーー」
アイリスは翼を片方持ったままかないの背中に狙いを定めつつ思い切り振りかぶり、そしてそのまま一気に




「ぐさぁーっ!」
「エンッッッッ!!!!」
…根元の方を、ぶっ刺した
かないは刺された瞬間色んなものを捨てかけながら、背中から感じる凄まじい激痛と共にただゆっくりと膝から崩れ落ちる
「…あの、かない?大丈夫?」
これには流石に三人も心配してかないに近づく
「むりゃだしんじゃぅ」
「あ、駄目ですコレ本当にやばいやつです」
まるで年寄りがぎっくり腰かヘルニアにでもなったかの様にその場で、腰に手を当てながら蹲っているかない
そしてそれを何故かスッキリした表情で見るアイリス
「ちょっとアイリスどういう事よ!」
「いやー、この魔法道具はちょっと欠点があってでスね?
物理的に背中に刺さないと魔力供給が上手くいかなくって使えないんでスよねこれが、お陰で妖精族でも人気なくって」
「そりゃそうだろうよ!人気なくて当然だよ!」
ヘラヘラ笑うアイリスにかないがすぐ様立ち上がってツッコむ
だがアイリスは気に求めないどころか、すぐに次の翼を手に持った
「そんじゃあ次、いくッスよ」
「ちょ、ちょっと待った!せめて一旦休憩を…」
尻もちをついたまま待ったをかけるかない
「だが断る」
「いや本当に待って何でさゆめみちゃん!?」
そこへここぞとばかりにゆめみが逃げかけるかないを抑えだす
「アイリスは兎も角何でゆめみちゃんまで!?」
「私達の身代わりとなるのだ…」
「恨むなら自分の運の無さを選んで下さい…」
「もうコッチが悪役!」
と、かないを人柱にしてまで強引にでも逃げようとする二人
だがお気づきだろうか?これは云わば必須の装備アイテム、つまり…
「あっそこは安心して下さいッス、後でお二人にも装着ブッさすんで」
「「」」
固まる二人、そりゃ全員で行くんだからそうだろうよ
「ハイというワケで皆さん固まってー、三人一気にいくッスよー」
「待って、アイリス待ってせめてかないから一思いにやって」
「そうです争いは何も生みませんからはやくその物騒な物を下に」
「あの、コイツらそろそろ殴って良い?」
という感じで目の前で敵勢が迫る中全然違う方向でボルテージが上がったところで、アイリスが翼を数個持って構えながらにじり寄る
そして三人は互いが互いを押し付け合い足の引っ張り合い
「それじゃー、いっちにぃーの…」
「「「アァーちょっと待って待って待ってせめてお覚悟を」」」
という感じで、まぁラスボス戦前でもコイツらは

「そぉいやっさぁーーーーッ!」 
「「「ああぁぁああああああああッッ!!!!」」」
今日も今日とてギャグを地で行くのでした
「ふあぁ……」
「いい加減早く行けポンコツ共」




ーーーーー

てな事で全員『魔法の翼』を装着し、迂回し敵地に向かうという事で
海の上をフワフワと緊張感の欠片も無く浮いている一行
「うーんこの何とも言えない浮遊感」
「そりゃ実際に浮いてるッスからねぇ」
「足が、ぷらぷらする…」
速度自体は速いわけでも無く、かと言ってそこまで遅いわけでも無い
まぁ普通のヒーローならここら辺で急かしたりするのだろうが…
「ところで後どれくらいかかるの?」
ただしさんから聞いた距離だと…十分前後ッスね」
「へぇ、思ったよりも近いんですね」
そんな気配全くない、それどころか寧ろ自分達からまったりとリラックスしつつ向かってるのかとでも思うくらいである
コレも全部ただしへの信頼という…べきなのだろうか?
「まーどうせ街はアレだし、焦らずのんびり行こー」
「おー…」
(もう不安になってきた…)
いや、ただ呑気なだけなのかもしれない
だがこうして海を渡っている目的が目的なだけに、いつまでもずっと呑気にしている訳にもいかない
そうこうしているうちに、城が既に見える程まで近づいていたからである
「っと、皆さんアレ!」
いの一番に、のぞみ気づきが声を上げる
「あ、アレが…」
「話に聞いた…」
「あの女のハウスね!」
「かないさん、折角入ったシリアス壊さないでッス」
三人が近づいていくにつれて敵の本拠地が更に顕になっていく
「しっかし…如何にも敵っぽいというか、まさにその通りの見た目ね」
城には禍々しい暗雲が周囲を取り囲む様に城の姿を隠している
その姿はまさに、敵の根城と言うには正しく相応しいものだった
「ふむふむ…あの霧、禍々しい魔力の反応!コレはきなくせぇッス!」
「何だろう割と普通のセリフなのに三下感が凄い
ま、となれば多分ただしさんが言ってたのはあの場所で決まりっしょ」
まぁそりゃあ決まった方向でかつそこそこ近くて如何にも怪しい建物といったら、まぁあの建物の他に周囲には無いだろう
となると魔法少女達がが向く先は勿論あの建物になる、のだが
「そうと決まれば早速行っくぞぉー!」
「あ、ちょっとかない!勝手に一人で…」
かないが早速敵地へと向かおうと文字通り頭から飛んでいこうとする、すると
「よーしこのまま正面から突げーーーー

ーーーぉおぁぁああああビームァァアアアア?!?」
「うわぁ凄い撃ちまくられてるッスねー」
「だから言ったのに」
「はちのす…」
城から謎の光線を突っ込んでくるかないに向かって迎撃するかの如く激しく乱れ撃ちをかましてくる
そりゃあ敵が来ると分かってて何もしないワケがない
「ハーッ…ハーッ…!」
かないは魔法の翼に魔力を全力で注ぎ何とか光線をギリギリで躱しつつ全速力で何とか回避し仲間の元へと避難しに行った
「おかえりッス」
「お帰りじゃねーよ何アレ、こんな美少女数人程度に仕掛ける平気じゃねーよ!宇宙戦記か何か!?」
「いや勝手に突っ込んでいったのアンタなんだけど」
だが確かにその光の弾の嵐はまさにスターの付く戦争みたい、アニメの劇場版とかで出てくるデカい要塞みたいなもの
中にお目当てのラスボスがいるとなればここをかいくぐってかつ城の中へと一気に突入するしかないのだが…
「…無理くね?」
「まぁ普通に突っ込んで行ったら死にますよね…」
どうみても魔法少女とはいえ四人に投入する兵器じゃない、てか攻城戦用の未来兵器とか言われても全然納得する様なヤツ
突破するのは至難の技だろう
「いっそかないを放り投げて囮に…駄目ね、アレでも一応魔法少女としての戦力は惜しいし無下には出来ないわ」
「ならちょっとした肉壁とか…?」
「何故か味方から恐ろしい計画を立てられてる気がするぞう!?」
こんなところで人手を失うワケにもいかない、どうするべきか
そう考えていた時
「あぁもうアイリス、お前が肉壁になれ!せめて私代わりに身代わりにでもなるんだよぉ!」

「あ、ハイ分かりましたッス」
「そうだ!そうやって大人しく…え?」
何を考えているのか、アイリスが言われるがままに前に出る
「そういうワケでかないさん…はかさみさん抱えてるから
ゆめみさん、私が盾として先行するんで後についてきて下さいッス」
「「「何言ってんのお前!?」」」
そして声に出されたのは、まんま妖精の自殺声明だった
「いやいやいや何考えてんだ!それ死ぬよ、間違いなく死ぬよ!?」
「何スか、かないさんがやれって言ったんじゃないッスか」
「だからって実行するか普通!?遂に熊との死闘で頭ぶっ壊れたのか!」
確かにかないは行けと言ったが流石にマジで実行しようするとは思ってもいなかった模様、そりゃそうだ
そう思ってる間にも、アイリスは勝手に先へ行こうとする
「あぁもううるさい!さっさと行くッスよ、ほら全員!」
「いやぁああアイリスがトチ狂ったァ!」
「アイリスを止めるわよ二人とも!」
「「ガ、ガッテン!」」
アイリスが城に接近し、止めようと魔法少女達が急いで後を追う
しかし城周囲を取り囲む魔法陣の様なものは既に迫ってくるアイリスを認識し、撃ち落とそうと一斉に顔面目掛けて標準を向け始めた
「うぉぉおおおおおお!」
ふと、アイリスの脳裏にある思い出が蘇る
あの森の中での特訓…
結局魔法少女達に巻き込まれた結果追いかけられ、襲われ、吹っ飛ばされ…本当に色々な事のやらされズタボロになった
だがしかしだからこそその古臭かった過酷な修行こそが
(森の熊さんに吹っ飛ばされまいと…必死にかないさん達と同様の魔力操作を身に着け、そして身に着けた私の魔法…ッ!)
「はぁああああッ、『妖精魔法』!」
「っアイリスの手が光って…!?」

一匹の妖精を立派な戦力として、育て上げたのだ
「『フェアリーバリア』----ッ!」
アイリスの手から広がるように包み込んだ光の球体が城から放たれた数々のビームを、いともたやすく弾き防いだ
その名の通り魔力で出来た強力なバリアだった
「な、何ィ!?いつの間に新技をっ!」
「魔力のバリア…それもさっきのかないを見るに大分頑丈なヤツね」
そう、コレがアイリスの新技
戦えないならばせめてものとサポートに割り切ったが故の防御技、単体では戦力にはならないが故にそれは並の防御力でないだろう
「にしても…確かにコレは結構便利ね、攻撃を防げるって言うのは」
「これなら安全にゆっくりいけます…」
四人はバリアの中に避難すべく入り、宙に浮きながら寛いでいる
が、この技には攻撃以外にも弱点が存在する
「あっそれ無理ッス、てか皆さん急いで乗り込むッスよ」
「へっ、なんで?」
「何でって、そりゃあ…」
その弱点は妖精だからこその弱点
「…私の魔力がもたないッスから、多分もって後20秒くらいッスね」
「「「それを早く言えよッ!!」」」
そもそもの発動者の魔力が少ないが故の発動時間の短さだった
…よく見るとアイリスの体、凄いプルプル震えてたし

というそんなこんながありながらも、魔法少女達は何とか城の中へと潜入していったのであった…




ーーーー

てなワケで城の中
「ドロ…ドロォ……」
既に城内では多くのドロドローンが跋扈しており、まるで外敵の侵入を見張っているかの様に通路をそれぞれ見て回っている
まだ城の入口というのに、この数となると奥はどれだけ厄介なのやら
「やっぱり警戒してますよね…それもかなりの数です」
「街に行った奴等といい、一体どれだけいんのよ…」
街を襲いに行った筈の怪人でさえ軍団とさえ思える程の数だった、怪人組織というのは一体どれだけの怪人を抱え込んでるというのか
「どうする?見つからないようにこっそり行く?」
となると見つかると不味いという事、忍ぶしかない
「それしかないですよね…敵の真横からとか、かなり怖いんですが…」
「他に方法も無いしねぇ…」
しかしかさみも居る上に敵の本拠地でそれはと渋るのもいる、せめてもっと何か安全な策さえあれば良いのだが
そんな都合の良いものは流石にあるのかどうか
「アイリス、何かないの?
例えばほらさっきの…魔法道具とか、魔法とか」
そういえば空を飛べる魔法やそれこそ魔法バリアみたいなのがあったのだから打開策もあるのだろうと思う、のだが
「無茶言わないで下さいッスよ…時間が無さすぎてアレ三セット借りるのにもやっとだったんスよ?
それに魔法はそんなポンポン出来るものじゃないでスって」
そりゃあ一日、それも半日位しか無いのにそれは流石に出来なかったらしい、時間があっても出来るか分からないだろうし
「じ、じゃあアレはどうですか?アイリスさんの魔力探知…でしたっけ?」
「あぁそれなら、何とか位置を把握出来るッスよ!」
「おぉ!」
とここでのぞみがアイリスのいつも使っている魔法を思い出す、アレなら敵の居ない通路を誘導出来るかもしれない
「でも、この城の怪人の数じゃあ…やっぱり敵のすぐ傍を歩く事になりそうッスねぇ」
「うーん…」
それでもさっきの通り城の中に居る怪人はかなり警戒している上に数も多い、やはり此処に来た以上危険は避けては通れない
「まぁ、打開策があるのはまだ良いんだけれども…」
「それでも心配です…」
「でもこればっかりは流石に、ッスねぇ…」
「…………」
と、行き先と雰囲気が怪しくなったところで
「まっ大丈夫だよ大丈夫!案外何とかなるって!」
かないが勇気付けようと励まそうとする…のだが、まぁ何ともかないらしく具体性の無くアバウトな気合の入れ方だこと
「いや何とかなるって、アンタねぇ…」
「…脳筋」
「脳筋ッ!?」
これには無表情ながらかさみも辛辣
だが、その一方でその通常運転さに気楽になっていた者も居た
「まっでも確かにその通りッスね、他の方法も無いんでスし深く考えてもしょうがないッス!」
「えぇ、かないさんらしいですが…その通りですね」
一番行きたくなさそうな様子ののぞみもやっと前向きになる、コレを見てゆめみも流石にと諦めたのか抵抗するのも面倒と思ったのか
「全く全員かないに毒されちゃって…
しょうがないわね、それしか方法が無いならそれで行くわよ」
というかただのツンデレである
「ヒューヒュー、ゆめみちゃんのツンデレー!」
「茶化すな!全く敵陣のど真ん中だってのに…」
一応小声ではあるがテンション上げて茶化すかないに、うんざりした様な何処かにこやかなゆめみの表情
「…でも今更ですが本当に大丈夫ですかね?」
「大丈夫だって、上手くやれば万事上手くいくって!」
「何の説明にもなってない…」
と、そんなこんなで隠れながら城を進みつつも…




「「「「ドロドロドロドロォォオオオオ!!!!」」」」
「開始数分でバレたァァああああああ!!!!」
「このおバカ、超おバカ!」
盛大なフラグを建てまくった結果コレである
必死に全力疾走で城内をお構い無しに駆け回る魔法少女の後ろには、これでもかと這い出て追う監視用のドロドローンの大群
つまり、思いっきり見つかったのである
「なして見つかったの!?」
「どう考えてもアンタが『一番手かない行っきまーす!』とか隠れてんのにわざわざ大声で飛び出したからでしょーが!」
つまりどうして追われているかを掻い摘んで説明すると
隠れていくと説明しアイリスが探索しつつ全員が隠れているにも関わらず、敵が居ないと知るや否や自分が先に行くと豪語した挙句大声で通路に出た結果集まってきたという事である
…はい、言い訳一つ無くかないが全面的に悪いです
「どーすんのよコレ、未だに大量に追ってきてるし城の通路なんか碌に把握してないしのぞみは既に過呼吸起こしてるし!」
「コヒュー…コヒューッ…!」
「くそっ、一体誰がこんな事を…」
「お前だよお前!」
過呼吸で倒れそうなのぞみ、それを必死に引っ張るアイリス、そっぽ向くかない、それを怒鳴るゆめみ、黙々と逃げるかさみ
「い…一旦あそこに扉があるので、入ってみましょう…」
「罠とかが不安だけどそれしかないわね…!」
通路の先にはあからさまな大きい扉が一つ、それ以外の道はどれも狭く挟み撃ちにされそうだ
「よっしゃあそれ突撃ィッ!」
「だから罠あるかもってもうお前少しは学べよ!」
かないが再び頭から扉に突撃したのを皮切りに他の四人も次々に入りすぐに扉を閉める
扉を閉めた後でもさっきまで追ってきていた怪人達のおびただしい程の物音がガタガタと聞こえてくる
「はぁ…はぁ、何とか助かりました…」
「まるでホラーゲームみたいね…」
五人は雪崩れ込むや否や息を切らし尻もちをつき、もう限界だと言わんばかりに敵地で悠長に一息つこうとしていた
まぁさっきの状況では無理も無い話
「で…取り敢えず目の前にあった此処に逃げ込んだ訳ッスが

一体此処、何処なんスか?」
それでも、悠長にしている暇は既に無いのが今の状況であえる
辺りを見るとまるで誰も居ないコンサートホールの様な物静かで、妙に薄暗くとてもだだっ広い部屋であった
学校の体育館よりも少し大きい、といえば分かるだろうか
「さぁ…?見た所大勢で何かする様な場所みたいですが」
「薄暗いのが余計に気味悪いわね」
恐る恐る歩き出す一行の足音が部屋中に反響する
「如何にも何か出そうな場所ッスねぇ」
「おばけとか出ないでしょうか…?」
「幽霊…」
逆にそれ以外の音が何一つとして部屋からしないというものそれはそれで怖いもの、何やらそこそこ不気味な雰囲気である
と、ここでかないがまたも迂闊な発言
「もしかしたら出てくるのが幽霊じゃなくて此処の幹部とかだったりして、ほら此処ってめっちゃ広いし決戦場っぽくない?」
明らかなフラグというか何というか
「馬鹿!アンタさっき変なフラグ立てて散々追い掛け回されたのもう忘れたの?暫く黙っときなさい!」
「全くゆめみちゃんは心配性だなぁー、そんな都合の良い事が…」




「「…あるんだなぁ、コレが!」」
そうかないが笑い飛ばそうとした瞬間だった
突如として天井から二つの大きな何かの影が眼の前に落ちる
「ぐっ、これは…!」
「けほけほっ…前が見えないです!」
何処からともなく落下後の衝撃からなる煙と共にゆっくりと現れた影が、徐々に晴れつつ姿を露わにしていく
「ひひひ…ボスの言った通りですわねぇ、アタシ達のお城にノコノコと揃いも揃って潜り込んで…」
「ワタクシ共も随分と舐められたものですなぁ…だがしかしコレは魔法少女共を一気に屠るチャンス!」
コツコツと音を鳴らしながら五人に近づく影
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「アタシの名は『アーゾ姫』、美しき怪人連合の三幹部が一匹!」
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一匹は体に余る程の巨大な白衣を身に纏った博士、そして所々に狂気が光る腐乱な怪人である
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はたしてジャドー一人にすら全員がかりで負けていたこの魔法少女達で、この強力な怪人達に勝てるのか…?
「魔法少女マジカルカラーズ、此処がお前等の墓場だ!」

だがまぁそれはそれとして
勿論の事かないの仲間が最初にする事といえばただ一つ
「「「…だっからフラグ建てるなって言ったろうがぁぁああああ!!」」」
「待ってやめてその穴にそれは入らなアァァアアアアアア!!」
フラグ建てたこの状況の元凶バカの制裁、ただそれ一つである
ただずっと傍観しているだけのかさみを除いた魔法少女三人全員、それものぞみまでもがかないに襲い掛かりアレな事をする
単純な袋叩きからストンピングの嵐に棒叩き、部屋の広さを使ったセルフ引き回しからあるもの道具を使った凄いのまで
少なくとも、当然少年誌に乗せられない程度には絵面はヤバい
「オラ、さっさと反省しろこの野郎!」
「流石にもう擁護しかねますよ!」
「何で潜入つってんのに暴れんスか!」
「ちょやめていつものと違って皆痛いってか容赦がないってゴメンてって誰だ今どさくさに紛れて電気按摩してんのはァ!」
最早目の前の敵幹部は放置、味方の制裁にしか目がいってない
「…アレ、コレもしかしてあいつ等アタシ達眼中に無い?」
「もしかしなくても確実にそうっすね、仲間割れですわ」
二人が達観しているのを余所にヒートアップする四人、その様子をただただ黙ってじっと眺め続けている一人
繰り返し言うが、一応これでも敵の目の前である
「……………」
ギャーギャーと内輪揉めの中取り残された二匹の怪人、かさみの様にずっと傍観している二匹の怪人
こんな状況になって怪人が一体どんな事をするのかとそう問われれば

そりゃあ痺れも切らさない筈もなく
「…いい加減にしろゴルァアアアアッッ!!」
「!?」
遂に怪人側がキレた、マジギレした
「敵前で仲間割れとか開幕から舐めんのも大概にしろよ、完全にアタシら舐めまくってるってるよなぁ!?」
「舐めるだなんてそんなイヤらしい…」
「あぁ!?…いやそっちの舐めるじゃねーよ!」
サラッと吐くかないのボケにまんまと引っかかる
「お前ら何で敵前でボス戦そっちのけで身内と勝手に戦闘してんの!?肝心の戦う相手コッチだからコッチ!」
(ならいっそ漁夫の利を…いやよそうワタクシの勝手な妄想で以下略)
侵入者という敵の殲滅という目的も最早二の次、自分からまともに戦えと懇願さえしそうな女の怪人
敵にさえ呆れられる、こんなヒーローが今までに居ただろうか
「…って、幹部!?皆さん不味いですよ、敵の幹部が!」
やっとという感じで気づくのぞみ
「……あぁそうだ!そういや幹部かアレ!」
それに釣られるゆめみに、次々と敵の方をやっと見出す面々
「張り倒すぞお前らァ!」
自然な煽りで既に超お怒り済みの怪人、コレは逃がしてくれそうにない
「しっかし初っ端から幹部二人とはえげつない…」
「かないさんのせいですけど…まぁ兎も角、一旦作戦を立て直すって策も」
「オイ待てまさかここまで引っ張って逃げるとかマジかお前ら!?頼むから止めてせめて少しでも強キャラ感位出させてからいってよぉ!」
「やだ私が言える事じゃないけど敵が凄く気の毒…」
必死に止める怪人には気の毒だがこれでも割と街の平和には重要な戦い、下手に動くわけにもいかないのだ
心配するゆめみを置いて一行は話し始めた

「…いや、待って下さいッス」
だがその時、アイリスが突然止めた
「どうかしたのアイリス?」
「あの二つの怪人もそうッスが、それよりもその先に…向こうに何か途轍もない魔力を感じるッス
多分、恐らくあの先に…」
「!」
アイリスの魔力探知にあの幹部の怪人をも上回る魔力が引っ掛かったという、あの怪人二匹の先に
ならばそこに居るのは、思いつくのは一つしかない
「…てことは、あそこに」
「はい…多分この城の、ボスが」
そう、この城の主がふんぞり返っているということだ
「ひ、ひっひっひ!そうよ、この先には我が主が居るわ…ですがアタシ達がわざわざ通すと思って!?」
「うわぁ分かりやすく張り切っておられる」
そして異様に張り切る女の怪人ことアーゾ
(…でも多分、あの怪人は)
しかし確かに立ち塞がっているのはあのジャドーと同等の敵、となれば突破するのは至難だろう
「それにどの道引き返そうにもあの怪人達も居る、て事は…やっぱり今此処で戦うしかないようね」
だがあまり戦いで魔力を消耗してもボスに勝てるかも分からなくなる、まして戦う相手はとても強いと分かっている
選択肢は限られている、立ち止まっている暇もない…
「くっ、やるしかない…!」
かないはさりげなく倒れた状態から立ち、少し砂埃を払ってから覚悟を決めて拳とロッドを構えた




「…かない、此処は私達に」
「任せてください!」
「!?」
その時、かないの前に陣取る様に二人が怪人と対面した
「へ?いやゆめみちゃん、それにのぞみちゃん何を…」
「この後にラスボスと戦うんでしょ?なら体力温存くらいしときなさい、なぁにこの程度の敵二人で十分過ぎるわよ」
徐にロッドを構えながら言うゆめみ
「なっ何言ってんのさ、ここは全員で一気に…!」
「私とのぞみには考えがあんのよ、さっさと片付けてきなさい」
かないが何とか私も残ると言うもゆめみが自分たちで倒すと言う、確かにその方がかないは体力温存できるだろうが
果たしてあの幹部に勝てるかどうかだ
「わ、私達なら後で追いつきますから…行ってください!」
だがしかしのぞみも身体を震わせながらも一生懸命に、かないに対して声を出し先に行くように促した
「で、でも…」
「…かないさんとかさみさん、行きましょうッス」
そんなのぞみ声を聴き、アイリスがかないとかさみの手を引っ張る
「……分かった!二人とも気を付けてね!」
「………!」
そしてかないとかさみは振り返る事も無く、アイリスについていく様に二人と怪人を置いて奥の通路へと走りだす
ゆめみとのぞみはそれを見送り怪人に再び目を向けた
「あら、お前ら全員ジャドー一匹に負けて良くそんな強気になれるわね、いつまで持つかしらその余裕?」
「ワタクシ達を舐めてかかった事、後悔するがいいです…!」
立ちはだかるは大きな怪人二匹に対するは魔法少女二人、果たしてこのコンビで勝てるのだろうか

「さて…それじゃ行くわよのぞみ!」
「はい、ゆめみさん!」
二人の強大な戦いが、今始まる

《Bパートへ続く…》
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アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
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婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
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※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
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貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

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