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「優しい」私は「頼まれたら断れない」
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「最近のチッカはお姫さまだね。みんなに手を振られて、かしずかれちゃってさ」
瑞希にそう言われて苦笑する。
かしずかれて、はさすがに言いすぎだけれど、それまでどことなく遠巻きにされていた私たちの周りに、どんどんと人が増えていったのは事実だ。
「全部、遥のおかげだけどね」
遥は、あれから休み時間には頻繁に私たちの教室に顔を出すようになった。
おそるおそる声をかけてくるクラスメイトたちに、遥は魔法のような笑顔と言葉を振りまいて、あっという間に魅了してしまう。そして、最後に必ず残していく「千佳をよろしくね」という言葉が、私をこのクラスの重要人物に押し上げていった。
かつてこの教室の中心だった吉田さんたちがこちらを見ていた。目が合うと、思いっきり逸らされてしまう。
「ほら、全然反省してないでしょ」
瑞希が、ふん、と鼻を鳴らした。
吉田さんがみんなの前で遥にやり込められたあの日から、コロニーの崩壊は始まった。
私の上履きを捨てたのが吉田さんたちの仕業だというのが、じわじわと学年中に知れ渡り、みんなが距離を置き始めた。
さらに、あの日瑞希がチクった塚本先生によって職員室に呼び出され、問い詰められたあげく、私に謝罪しなければならなくなる、という事態になってしまった。
いま、あの三人は教室の隅から私たちをにらみつけるだけの存在でしかない。それは、女王蜂にとってひどく屈辱的な事実だ。
「いい気味だよね。調子にのって人のことバカにするから痛い目にあうんだよ」
瑞希は、なんだかすごく嬉しそうだけれど、私は瑛輔くんの言葉が頭から離れなかった。
――追い詰めすぎに要注意ってこと。女王様は我慢と屈辱がお嫌いだからね。
なんだか、いやな予感がする。
「千佳、なにぼーっとしてんの? 腹減って死にそう、とか?」
相変わらず、巨大な弁当箱をぶら下げた遥が私の隣に座った。制服じゃなく、ジャージ姿の遥からは、少しだけ汗のにおいがする。
「そ、そんなんじゃないし!」
「あたしはもうお腹ぺこぺこー。遥くん、遅いんだもん」
「ごめんごめん。体育だったからさ。これでも走ってきたんだぜ」
「あ、サッカーやってたのって遥くんのクラス? 窓から見てたよ」
「うん。俺は、まあ見学みたいなもんだけど」
「どうして? 遥、サッカーするの、大好きだったのに」
遥が驚いたように私を見る。その振り向きの鋭さに、体がわずかに強張った。
「それは――」
「あーっ! ちょっと最悪なんだけど!」
スマホを手にした瑞希が突然叫んだ。
「なによ」
「部長からなんだけど、今日部室使えないんだって!」
見せられた画面には『本日は図書委員の作業があるため、部室は使用できません』の文章と、泣いている犬のスタンプ。
「信じらんない。困るじゃん」
でも、桐原先輩に聞いた話によると、本来は図書委員のために用意されたあの部屋を、文芸部が部室として借りているらしいから、優先権は向こうにある。
「じゃあ、今日は勉強会もお休みだね」
「だめだめ! 水曜日以外は教えてくれるって契約でしょ、チッカ」
「契約ってなに?」
「な、なんでもない!」
慌ててごまかしながら、机の下で瑞希の足を蹴飛ばしてやる。
「いった! もうチッカは乱暴だなぁ」
瑞希が唇をとがらせながら、メロンパンの袋を開けた。ふわっと甘いにおいが漂ってきて、そのメロンパンが、この世で一番おいしそうに見えた。
「ねえ、瑞希。メロンパン一口ちょうだい。これと交換で」
私は、ママお得意のキャロットラペを指さした。
私たち三人の間で、すっかり定番になったおかず交換。
味も見た目も完璧なのになぜか物足りないママのお弁当が、瑞希の茶色いお弁当、遥の和食メインのお弁当と混じり合って、私だけの特別なお弁当に変わる。
今じゃちょっとしたゲーム感覚。昼休みが近付くと、今日の遥のお弁当のおかずはなにかな、なんて考えるようになってしまった。
どれどれ、と私の弁当箱をのぞきこんだ瑞希は、キャロットラペの隣のスパニッシュオムレツをつまみ上げた。
「あっ」
「あたし、人参きらいなんで」
「野菜もちゃんと食べなさい」
「オカンか!」
瑞希は笑いながら、メロンパンを半分ちぎって私に差し出した。
「いいよ、こんなに」
「いーの。あたしダイエット中だし、チッカったら、よだれ垂らして見てるんだもん」
「垂らしてない!」
「まあまあ、ほらどーぞ」
私はしばらく瑞希をにらみつけていたけれど、鼻先をくすぐる甘い香りの誘惑に負けて、メロンパンを一口かじった。
クッキー生地にかかった砂糖が、歯の間でじゃりっと鳴った。おいしい。
小さいころからずっと、菓子パンは禁止されていた。ママは、私の口に入るものを厳しく制限したから。
初めてメロンパンを食べたのは、チーの家でおやつに出されたとき。あまりにもおいしくて固まってしまった私を見て、チーとおばさんは大笑いしてたっけ。
思い出の味に、くすり、と笑いがこぼれた。
「ね、千佳」
遥が私の肩を突いて、甘えるように顔をのぞき込んでくる。
「見てたら食いたくなっちゃった。俺にもちょうだい」
遥は、あーんと口を開いた。不意に見えたその濡れた赤に、鼓動が跳ねた。
「お、おかずは交換でしょ」
「だって全部食っちゃったもん」
遥の大きな弁当箱は、まるで舐めたようにきれいに空っぽだった。
「でも、千佳ならくれるでしょ? 優しいし、昔から頼まれたら断れない性質だもんな」
そう……だったかな。
『チーは優しい』
それは、分かってる。でも……。
『頼まれたら断れない』
私は、チーになにかお願いをしたことがあったかな。
私のしたいことはチーのしたいこと。チーが欲しいものは私の欲しいもの。いつだってイコールで繋がれていた私たちは、どちらかの願い受け入れたり、断ったりする機会さえなかった気がする。
遥は、チーになにをお願いしたんだろう。チーは、その願いを「いいよ」って受け入れたんだ。ちりっと胸が痛んだ。
「だめ?」
遥が眉根を寄せる。叱られた犬みたい。
「――いいよ」
メロンパンをちぎって遥の口に押し込んだ。唇に指先が触れる。痺れるように熱が走る。
「ん、サンキュー」
ふわりと笑う遥は、メロンパンよりずっと甘い。
「あ、俺、今日ちょっと遅くなる。数学の特別授業あるから」
「そっか、遥くんって石倉《いしくら》先生のクラスだっけ」
数学の授業は、テストの結果によって毎回クラスが変わる。理解度の近い生徒たちをまとめたほうが授業の効率がいい、という建前ではあるが、生徒たちの競争熱をあおっているようにしか思えない。
今回遥がいるのは、石倉先生のクラス。
飄々とした人で、授業も面白いらしいのだが、生徒には忌み嫌われている。その理由が、週に一回行われる、放課後の特別授業――通称「石倉ゼミ」を行うからだ。
遥いわく「石倉ゼミ」とは、先生がえりすぐった問題を集めた大量のプリントが配られ、一時間ただひたすらにそれを解くという、修行のようなものらしい。解き切れなかったものは持ち帰り、次週までに提出しなければならない。
「あの先生、マジで数学好きなんだな。なんつーか、選ぶ問題が変態的」
「ああ、ちょっと分かるかも」
私はまだ「石倉ゼミ」を受けたことはないけれど、遥から見せてもらったプリントには、受験勉強のためというよりも、数学的興味を刺激するような問題が多かった。
げんなりしていた遥を前に、ちょっと楽しそうだな、なんて思ったのは秘密だ。
「じゃあ、あたしとチッカは教室で勉強しながら、遥くんのお帰りをお待ちしておりますので」
「オッケー。じゃあさっさと終わらせて帰ってくるから」
なぜかいつも私の意見が反映されない話し合いで、私たちの行動は決まる。いつの間にか、それに不満を覚えなくなっていた。いつだって「仕方ないなぁ」って思ってしまう。
『チーは優しい』
『チーは頼まれたら断れない』
私の中にいるチーが、そうさせるのかな。
遥が口にする「千佳」という名前は私のものだけど、私のことじゃない。私の中にいるチーのこと。それなのにチーがどんどん遠くなっていく。
――いかないで。ねえ、チー。私をおいていなくならないで。
ぼんやりと前髪を撫でつけていると「間違いないって!」という声が聞こえてきた。
その発生源は吉田さんたちで、顔を寄せ合い、ひそひそとなにか話しながら、スマホと私たちを交互に見ている。いい話じゃないのは想像がつくけれど、なんとなく気分が悪い。
目が合うと、吉田さんはもう目を逸らさなかった。その代わりに、口の端を上げて笑った。
あれは、悪い笑いかた。
「……千佳、大丈夫?」
私の視線の先に気付いた遥が、そっと囁いた。
「俺、別に『石倉ゼミ』サボってもいいけど」
「ううん、平気。吉田さんたちも最近は大人しいし」
「そうそう。それにチッカにはあたしがついてるから。遥くんの代わりに守ってあげる」
「じゃあ瑞希ちゃんに任せた。あ、なんならまた、上履き貸しておこうか?」
「いい!」
熱くなった頬をごまかすように、一気に口に放り込んだメロンパンが喉に詰まって目を白黒させる私を見て、遥と瑞希は大笑いした。
これは、いい笑いかた。
瑞希にそう言われて苦笑する。
かしずかれて、はさすがに言いすぎだけれど、それまでどことなく遠巻きにされていた私たちの周りに、どんどんと人が増えていったのは事実だ。
「全部、遥のおかげだけどね」
遥は、あれから休み時間には頻繁に私たちの教室に顔を出すようになった。
おそるおそる声をかけてくるクラスメイトたちに、遥は魔法のような笑顔と言葉を振りまいて、あっという間に魅了してしまう。そして、最後に必ず残していく「千佳をよろしくね」という言葉が、私をこのクラスの重要人物に押し上げていった。
かつてこの教室の中心だった吉田さんたちがこちらを見ていた。目が合うと、思いっきり逸らされてしまう。
「ほら、全然反省してないでしょ」
瑞希が、ふん、と鼻を鳴らした。
吉田さんがみんなの前で遥にやり込められたあの日から、コロニーの崩壊は始まった。
私の上履きを捨てたのが吉田さんたちの仕業だというのが、じわじわと学年中に知れ渡り、みんなが距離を置き始めた。
さらに、あの日瑞希がチクった塚本先生によって職員室に呼び出され、問い詰められたあげく、私に謝罪しなければならなくなる、という事態になってしまった。
いま、あの三人は教室の隅から私たちをにらみつけるだけの存在でしかない。それは、女王蜂にとってひどく屈辱的な事実だ。
「いい気味だよね。調子にのって人のことバカにするから痛い目にあうんだよ」
瑞希は、なんだかすごく嬉しそうだけれど、私は瑛輔くんの言葉が頭から離れなかった。
――追い詰めすぎに要注意ってこと。女王様は我慢と屈辱がお嫌いだからね。
なんだか、いやな予感がする。
「千佳、なにぼーっとしてんの? 腹減って死にそう、とか?」
相変わらず、巨大な弁当箱をぶら下げた遥が私の隣に座った。制服じゃなく、ジャージ姿の遥からは、少しだけ汗のにおいがする。
「そ、そんなんじゃないし!」
「あたしはもうお腹ぺこぺこー。遥くん、遅いんだもん」
「ごめんごめん。体育だったからさ。これでも走ってきたんだぜ」
「あ、サッカーやってたのって遥くんのクラス? 窓から見てたよ」
「うん。俺は、まあ見学みたいなもんだけど」
「どうして? 遥、サッカーするの、大好きだったのに」
遥が驚いたように私を見る。その振り向きの鋭さに、体がわずかに強張った。
「それは――」
「あーっ! ちょっと最悪なんだけど!」
スマホを手にした瑞希が突然叫んだ。
「なによ」
「部長からなんだけど、今日部室使えないんだって!」
見せられた画面には『本日は図書委員の作業があるため、部室は使用できません』の文章と、泣いている犬のスタンプ。
「信じらんない。困るじゃん」
でも、桐原先輩に聞いた話によると、本来は図書委員のために用意されたあの部屋を、文芸部が部室として借りているらしいから、優先権は向こうにある。
「じゃあ、今日は勉強会もお休みだね」
「だめだめ! 水曜日以外は教えてくれるって契約でしょ、チッカ」
「契約ってなに?」
「な、なんでもない!」
慌ててごまかしながら、机の下で瑞希の足を蹴飛ばしてやる。
「いった! もうチッカは乱暴だなぁ」
瑞希が唇をとがらせながら、メロンパンの袋を開けた。ふわっと甘いにおいが漂ってきて、そのメロンパンが、この世で一番おいしそうに見えた。
「ねえ、瑞希。メロンパン一口ちょうだい。これと交換で」
私は、ママお得意のキャロットラペを指さした。
私たち三人の間で、すっかり定番になったおかず交換。
味も見た目も完璧なのになぜか物足りないママのお弁当が、瑞希の茶色いお弁当、遥の和食メインのお弁当と混じり合って、私だけの特別なお弁当に変わる。
今じゃちょっとしたゲーム感覚。昼休みが近付くと、今日の遥のお弁当のおかずはなにかな、なんて考えるようになってしまった。
どれどれ、と私の弁当箱をのぞきこんだ瑞希は、キャロットラペの隣のスパニッシュオムレツをつまみ上げた。
「あっ」
「あたし、人参きらいなんで」
「野菜もちゃんと食べなさい」
「オカンか!」
瑞希は笑いながら、メロンパンを半分ちぎって私に差し出した。
「いいよ、こんなに」
「いーの。あたしダイエット中だし、チッカったら、よだれ垂らして見てるんだもん」
「垂らしてない!」
「まあまあ、ほらどーぞ」
私はしばらく瑞希をにらみつけていたけれど、鼻先をくすぐる甘い香りの誘惑に負けて、メロンパンを一口かじった。
クッキー生地にかかった砂糖が、歯の間でじゃりっと鳴った。おいしい。
小さいころからずっと、菓子パンは禁止されていた。ママは、私の口に入るものを厳しく制限したから。
初めてメロンパンを食べたのは、チーの家でおやつに出されたとき。あまりにもおいしくて固まってしまった私を見て、チーとおばさんは大笑いしてたっけ。
思い出の味に、くすり、と笑いがこぼれた。
「ね、千佳」
遥が私の肩を突いて、甘えるように顔をのぞき込んでくる。
「見てたら食いたくなっちゃった。俺にもちょうだい」
遥は、あーんと口を開いた。不意に見えたその濡れた赤に、鼓動が跳ねた。
「お、おかずは交換でしょ」
「だって全部食っちゃったもん」
遥の大きな弁当箱は、まるで舐めたようにきれいに空っぽだった。
「でも、千佳ならくれるでしょ? 優しいし、昔から頼まれたら断れない性質だもんな」
そう……だったかな。
『チーは優しい』
それは、分かってる。でも……。
『頼まれたら断れない』
私は、チーになにかお願いをしたことがあったかな。
私のしたいことはチーのしたいこと。チーが欲しいものは私の欲しいもの。いつだってイコールで繋がれていた私たちは、どちらかの願い受け入れたり、断ったりする機会さえなかった気がする。
遥は、チーになにをお願いしたんだろう。チーは、その願いを「いいよ」って受け入れたんだ。ちりっと胸が痛んだ。
「だめ?」
遥が眉根を寄せる。叱られた犬みたい。
「――いいよ」
メロンパンをちぎって遥の口に押し込んだ。唇に指先が触れる。痺れるように熱が走る。
「ん、サンキュー」
ふわりと笑う遥は、メロンパンよりずっと甘い。
「あ、俺、今日ちょっと遅くなる。数学の特別授業あるから」
「そっか、遥くんって石倉《いしくら》先生のクラスだっけ」
数学の授業は、テストの結果によって毎回クラスが変わる。理解度の近い生徒たちをまとめたほうが授業の効率がいい、という建前ではあるが、生徒たちの競争熱をあおっているようにしか思えない。
今回遥がいるのは、石倉先生のクラス。
飄々とした人で、授業も面白いらしいのだが、生徒には忌み嫌われている。その理由が、週に一回行われる、放課後の特別授業――通称「石倉ゼミ」を行うからだ。
遥いわく「石倉ゼミ」とは、先生がえりすぐった問題を集めた大量のプリントが配られ、一時間ただひたすらにそれを解くという、修行のようなものらしい。解き切れなかったものは持ち帰り、次週までに提出しなければならない。
「あの先生、マジで数学好きなんだな。なんつーか、選ぶ問題が変態的」
「ああ、ちょっと分かるかも」
私はまだ「石倉ゼミ」を受けたことはないけれど、遥から見せてもらったプリントには、受験勉強のためというよりも、数学的興味を刺激するような問題が多かった。
げんなりしていた遥を前に、ちょっと楽しそうだな、なんて思ったのは秘密だ。
「じゃあ、あたしとチッカは教室で勉強しながら、遥くんのお帰りをお待ちしておりますので」
「オッケー。じゃあさっさと終わらせて帰ってくるから」
なぜかいつも私の意見が反映されない話し合いで、私たちの行動は決まる。いつの間にか、それに不満を覚えなくなっていた。いつだって「仕方ないなぁ」って思ってしまう。
『チーは優しい』
『チーは頼まれたら断れない』
私の中にいるチーが、そうさせるのかな。
遥が口にする「千佳」という名前は私のものだけど、私のことじゃない。私の中にいるチーのこと。それなのにチーがどんどん遠くなっていく。
――いかないで。ねえ、チー。私をおいていなくならないで。
ぼんやりと前髪を撫でつけていると「間違いないって!」という声が聞こえてきた。
その発生源は吉田さんたちで、顔を寄せ合い、ひそひそとなにか話しながら、スマホと私たちを交互に見ている。いい話じゃないのは想像がつくけれど、なんとなく気分が悪い。
目が合うと、吉田さんはもう目を逸らさなかった。その代わりに、口の端を上げて笑った。
あれは、悪い笑いかた。
「……千佳、大丈夫?」
私の視線の先に気付いた遥が、そっと囁いた。
「俺、別に『石倉ゼミ』サボってもいいけど」
「ううん、平気。吉田さんたちも最近は大人しいし」
「そうそう。それにチッカにはあたしがついてるから。遥くんの代わりに守ってあげる」
「じゃあ瑞希ちゃんに任せた。あ、なんならまた、上履き貸しておこうか?」
「いい!」
熱くなった頬をごまかすように、一気に口に放り込んだメロンパンが喉に詰まって目を白黒させる私を見て、遥と瑞希は大笑いした。
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