上 下
3 / 43
本編

第1話 俺様のプロローグ(3)

しおりを挟む
こたつ布団を押しのけて、急いでもぐり込んだ。ほっと一安心。

「なんだこりゃ? 突然あらわれやがった」

あの臭い人の声かな? どっか行ってくれないかな~

外からガンガンと大きな音がするけど、ここなら大丈夫のはず。こたつに潜り込んで良いのは俺様だけだ。パパやシローが潜るとママに怒られるからな。
あの人だって入ってこれないはずなのだ。たぶん。

「ちっ、くそ、なんかの結界かよ?! びくともしやがらん」

うん、入ってこれないみたいだぞ。ちょっと安心。毛づくろいをして落ち着こう。
まずは背中をペロペロと。胸元もペロペロ。さて、しばらく様子をみるかなと。

そうえいば、さっき出てきたのは何だったんだろう。画面みたいなやつ・・・・・あ、また出てきた!
これは、「文字」ってやつだな。いままで知らなかったけど、今は解るぞ? どうして????

名前、みーちゃん、俺様の名前だな。

HP? MP? なにそれ? 美味しいの?

こたつは・・・こたつだな。俺様のお気に入りの一つだ。
パパの足が入ってくると凄く臭くなるのから、その時は お気に入りじゃなくなるけどな。

無限収納って何なのさ? 食べられるの?

------
収納リスト
1) 猫用ドライフード(チキンと野菜味) 1.6kg x 数量エラー表示できません
2) 猫用ドライフード(マグロと野菜味) 1.6Kg x 数量エラー表示できません
3) 猫用ドライフード(カツオと野菜味) 1.6kg x 数量エラー表示できません
4) 猫缶(マグロ味) x 数量エラー表示できません
5) 猫缶(チキン味) x 数量エラー表示できません
6) 猫おやつ(シーフードミックス) 20本入り x 数量エラー表示できません
7) 猫おやつ(とりささみ) 20本入り x 数量エラー表示できません

おおお! 無限収納って美味しそうだ!!! 猫缶って、あの硬いのに入ってるやつだよね? ちょーだい!!!

来た! 猫缶だ!

よーしいただくぞぉ。さっそくかじりついて・・・れれ?
この硬いのを開けないと食べられないじゃないか!!!

爪でカリカリ引っ掻いてみる。パチンって引っかかるけど、上手くいかないなあ。やっぱり人に開けてもらわないと無理。
でもここに人は・・・・・あ、居るぞ。あの臭いやつ。

猫缶を鼻先で押しながら、こたつ布団をくぐる。ちょっと疲れる。猫缶を出して自分も外に出た。

やっぱり居た臭い人。
「なんだおまえ、魔物かと思ったらヌコか? しかしこの妙な結界は・・・・」

よくわからない事を言っているけど、ちょっと頼んで見よう。
「にゃーーっ」
「おまえなんで、こんなとこに居るんだ? 飼い主とハグレたのかよ?
  ん? そりゃなんだ? 妙なアイテムだな?」

うーん、こいつわかってないな。
しょうがないもうちょっと頑張ろう。鼻先で猫缶を押しながら臭い人に近づく
「ミャ~~~」
「ん? くれるのか?」

おいおい、勝手に取るんじゃないぞ、俺様のごはん!
猫缶を拾おうとした臭い人の手を素早く猫パンチ! ちゃんと手加減はしてやったからな、感謝しろ。
「イテえ! なにしやがる! くれるんじゃないのか? なんだ?」

うーん、こいつ頭わるいなー・・・
猫缶を前足で引っ掻いて引っ掻いて、臭い人をちょっと見上げる。こんな感じなら解るか?
「えーと、つまり、この中に何か入っているのか? 出せばいいのか?」
うむ、やっと理解したな臭い人め。

臭い人は、足元から小さい包丁ナイフ(といってもママがいつも使っているくらいの大きさ)を取り出すと、猫缶にさくっと突き刺した。うわああ、危ないだろ。俺様の鼻先かすめてるだろ。

お? 匂いがしてきたぞ? くんくんくん、あーこれは俺様の好きな味じゃない。隠そう。前足をかいて猫缶に土をかける。まず右足、次に左足。ちょっと匂いを嗅いで確認。おっけー、仕上げに後ろ足で土をぺっぺっぺっぺ
「うあっぅてめえ何しやがる、きたねえじゃねえか」
あんたも臭いんだから文句いうなよな。

臭い人は、土をかぶった猫缶を拾い上げると、中身を包丁の先でちょっとつついて。ほら、あんたも嗅ぐでしょ? 臭いでしょ?
「なんかこれ、うまそうな匂いしてるな。俺にくれるのか?
  それにしちゃ、土かけてやがるし、訳わからんやつだなオマエ。
  えーとな・・・鑑定・・・」
臭い人から、ふわんと何か気配が飛び出した。
「毒は無さそうだな。ちょっともらうぜ? ふむ・・肉だな」

むしゃむしゃ食べだしたぞこの人。
ちょっと俺様のごはんはどうなるのさ。あ、もう一つ出そう、さっきのと違うやつを・・・2つめにあるマグロ味ってのを出そう。ちょっと使い方が解ってきたぞ。

ころん!っと出てきた猫缶。どっから出てくるのかは俺様どおでもいい。
「ミャ~~~」
さあ、これを開けるのだ臭い人! こら気づけ!
「お? もう一つあるのか? 俺はいいからオマエ食わないのか?
  開けてやるから食え」

だから俺様のごはんだよ!!!

臭い人は、また包丁を猫缶にぷすっと刺してパカっとフタを引き剥がした。
「ほらよ」
何度も言うけど、俺様のごはん!!

お~これこれ、ママが時々くれた美味しいやつだ! はぐはぐはぐ
「なんだ、腹減ってたのか? おまえ・・・・・ヌコにしちゃ妙なやつだな?」
うん、美味しい。なんか言ってるけど、俺様関係ないもーん

「でもよ、白ヌコは幸運を呼ぶって婆ちゃんが言ってたぞ・・・俺の婆ちゃんはな、村で・・・・・・」
なんか語りだしたぞ。めんどくさい。ほっとこう。ごはん美味しい。
「~という訳でな。オレはハンターを目指したってことさ」
食後のグルーミングをする頃には、なんかちょっとした物語が終わったらしい。

まあ、それはそれとして。
「にゃーお」
鳴いてみた。

俺様が何か意味のあること言ってると思うだろ?
特に無いんだよ意味なんて。だって猫は喋れない。何でも良いんだよ。
適当にニャーって鳴いとけば、人は勝手に話を進めて行くんだよ。
「そうか、オマエ一人なのか。おれと一緒にくるか?」
な? 勝手に話が進むだろ?
しおりを挟む

処理中です...