【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜

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55.誕生日デート③ side光琉

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「光琉、手!」
「ん? 日向から繋いできたんでしょ」

 って俺が手を出したから反射的に手を取ってしまったんだろうけど。今日は絶対離さないから。

「どこから回る?」
「ん~、今日は光琉の誕生日祝いで来てるし、光琉が行きたいところにしよう」
「あっ! 日向、こっち」

 キャラクターカチューシャが売ってあるワゴンに連れていき、日向の頭に付ける。

「かっ」
「か?」

 可愛すぎる。でもそれを伝えるのは購入後写真を撮ってから。じゃないと付けないって言いそうだし。

 パシャ。パシャ。パシャ。

「撮り過ぎ。もういいだろ」
「後一枚だけ! 一緒に撮ろう」
「一緒なら、まぁ」

 この方が撮りやすいからと日向を後ろから抱きしめるように写真を撮る。真っ赤な顔が可愛すぎる。写真を撮るから前を向いてくれているけど、そうじゃなかったらきっとプイッて横を向いてそうだな。

「あっ」
「ん?」
「あそこのシアター、ショーの内容が新しくなったって姉ちゃんが言ってた」
「行ってみよう」
「いいのか?」

 そんな嬉しそうにされたら何度でも並びたくなるよ。

 よほど気に入ったのか、ショーの後もここが良かったとか、曲を口ずさんだりしていた。その後、ジェットコースターに乗ったり、ミニゲームに挑戦したりして少し遅めの昼食。

「……ここ? 高いとこだ」
「パークチケット、このレストランの招待券も付いててさ」
「へぇ。そんなチケットあるんだな」

 嘘だ。本当はチケットもレストランも自分で事前予約した。でも俺がバイト代で購入したって言ったら日向気にするだろ? 日向のために稼いでるんだから気にしなくていいのに。

 番になったら…いや、正式に付き合うことになったらもっと堂々と日向に使おう。

 今から楽しみだな。

「ーー注文ってもう決まってるのか?ーー」

 コソコソと話しかけ、少し緊張した面持ちでいる姿も可愛いしかない。

「ここはコース料理のみの提供なんだ」
「コース…テーブルマナーとか俺無理…」
「気にしなくて大丈夫だよ」

 高級レストランって言っても、頭にパーク内では、が付くしな。

「それに、テーブルマナーっていろいろルールがあるけど、本来は他者への敬意と礼儀を表すもの。だから、多少間違えたとしてもその心があればいいんだよ」
「一緒に食事する人に不快感を与えなければ良いってこと?」
「そうそう。そうだ、俺はお箸を頼むけど日向はどうする?」
「俺もお願い」

 西洋料理でお箸を使う事はマナー違反じゃない。日本はもちろん海外でもお箸を用意している高級店は少なくないし…もちろん、お箸を使う上でのマナーは守らないといけないけど。

「日向はお箸の使い方が綺麗だし、どんな店でも困らないね」

 これから星付きレストランに連れて行くこともあるし、パーティーや会食に付き合ってもらうこともあるしな。

「普通じゃないか?」
「いや、間違った使い方してる人って結構いるよ」
「ふ~ん。俺、結構厳しくしつけられたからな」

 と自慢気な日向。

 食事が終わり、店を出てからお礼を言われた。多分お箸を頼んだ事だろう。

「美味しかったね」

 そう言って日向の手を取る。

 ゆったりとしたアトラクションに乗って、キャラクターと写真を撮って、デザートを食べて。あまりお腹が空いてないと言う日向に合わせて夕食は軽いものを購入し、パレードを楽しんだ。


「光琉、こっちとこっちなら、どっちが良い?」

 お土産を見るためショップに入り、文房具をいくつか手に取っては戻している日向。2つまでに絞り込めたようで、右手にはキャラクターがデザインされているシャーペン、左手には今日見たショーの限定デザインのシャーペンを持っている。どちらも6本入りだ。

「みんなでお揃い? ならこっちかな」

 俺が選んだのはキャラクターがデザインされている方。ショーの限定デザインのものは、みんなじゃなく2人だけのお揃いがいいから。

 買ってくると日向がレジに向かった隙に、俺も目をつけていたコップを持ってレジへと急ごう。


 観覧車に乗れなかったのは残念だけど、帰りの車で疲れて寝てしまった日向を勝手に膝枕で寝かせ、幸せを噛みしめる。

「ごめん。俺、また寝ちゃった」
「ううん。気にすること無いよ」

 いつも気を張り続けている日向が、俺の隣では安心して眠れるのかと思うと嬉しいし。



 家に帰り、買ったばかりのコップにアップルティーを淹れ、日向の手作りケーキを切り分ける。残りは…これって冷蔵保存すべきか? 

 よし。半分は常温で、残りは切り分けて冷凍保存しよう。

 待ちにまった日向からのメッセージカード。ありきたりな内容から始まり、期待した『好き』という言葉はなかったけど、最後に嬉しいことが書かれていた。


『光琉のフェロモン、心地よくて嫌いじゃない。でも玄関先で付けられるのは恥ずかしいから、今後は車の中にしてくれよな』


 運命だから嫌いになるはず無いって分かってるのに、実際に言われるとこんなに嬉しいものなんだな。

 それに…付けることには賛成なんだと思うとニヤけてしまう。


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