61 / 106
60.バレンタイン② side光琉
しおりを挟む
「ハッピーバレンタイン! はい、日向これ」
「……俺もある。光琉が作りそうだなって思ったからで、その…ホワイトデーだと忘れるかもしれないから作っただけだから」
段々と小さな声になりながら、顔を真赤にして渡してくるとか…これは抱きしめるでしょ。
ふっ…日向がチョコレート関連のレシピを検索してたのも知ってるし、ベータ女子が盛り上がっているチョコの話に耳を傾けていたことにだって気付いてたんだ。
元々用意するつもりだったくせに。ツンデレな日向も可愛い。
すぅー。
「嗅ぐなよ」
「いい匂い」
「…あっそ」
俺にバレてないと思っているんだろう、日向はスンスンとこっそり鼻を鳴らしている。あー、可愛すぎる。
「ねぇ、日向。放課後カフェデートしよう」
「…普通にカフェに行こうでいいじゃん」
「デート、ね」
「/// なんでもいいけど」
いつもの学内にあるカフェで、いつものメニュー。日向は俺からのチョコを見て、手に取るように喜んでくれている。
「いっつも思うけど本当凄いよな。これ本当に昨日全部作ったのか?」
「その方が長持ちするでしょ」
「うん。でも大変だっただろ?」
「全く」
日向の喜ぶ顔を想像していたら楽しくて仕方なかったよ。
「ありがとな。俺好きなんだよ、光琉のスイーツ」
ダメか。雰囲気の飲まれて、今日なら好きって言ってくれるんじゃないかって思ったんだけどな。
日向が作ってくれたのは…
「パウンドケーキだ」
「おう。りんごとチョコのな」
「食べてもいい?」
「あ、味の保証はしないけど」
これ…え? 無自覚だよな?
シナモンはりんごを煮る際に一緒に煮た? バニラエッセンスは生地と混ぜ合わせる際だろう。
もちろんチョコが入っている分違いはある。でも香りも味も、バニラシナモンでりんごを包みこんでいるような、俺が日向を抱きしめているような、そんなパウンドケーキ。
「光琉…? ーーおかしいな。もう1つは美味しく出来たのにーー」
いつもなら…味見用を兼ね上手く焼けた方を俺に渡すため、2本作るほど頑張ってくれたのかと感謝していただろう。でも正直それどころじゃない。
「バニラとシナモンを入れたのって…?」
「/// と、特に理由なんて無い」
目を逸らす日向。
「教えて」
「やだ」
首を軽く振り、下を向いてしまった。
「お願い、日向」
目を瞑り小さく深呼吸をし、それよりもと味の感想を聞いてくる。
「幸せな味がした」
「///」
耳まで真っ赤にして…これはもしかしたら、もしかするかもしれない。
「あのさ日向…何で俺がりんご好きか分かる?」
「分かるわけないじゃん」
下を向いたまま即答する日向。あれ…?
「考えてみて」
「…………」
やっぱり気が付いているんだよな?
「日向」
「…………」
「何となく予想してるんじゃないのか?」
「…………」
「日向の「ダメッ! ……まだ言わないで」」
りんごが好きだと言うたびに、頭では日向が好きだと思っていた。
日向がいちご好きからバニラ好きに変わった理由は俺。そのことに日向は気付いているし、俺の好みも同じ理由ではないかと、その可能性を考えてくれるようになったのかもしれない。
「日向…抱きしめていいか?」
「なっ、んで聞くんだよ。俺、聞かなくていいって言った」
日向を強く強く抱きしめ、泣きそうになるのを必死に堪えた。
「……俺もある。光琉が作りそうだなって思ったからで、その…ホワイトデーだと忘れるかもしれないから作っただけだから」
段々と小さな声になりながら、顔を真赤にして渡してくるとか…これは抱きしめるでしょ。
ふっ…日向がチョコレート関連のレシピを検索してたのも知ってるし、ベータ女子が盛り上がっているチョコの話に耳を傾けていたことにだって気付いてたんだ。
元々用意するつもりだったくせに。ツンデレな日向も可愛い。
すぅー。
「嗅ぐなよ」
「いい匂い」
「…あっそ」
俺にバレてないと思っているんだろう、日向はスンスンとこっそり鼻を鳴らしている。あー、可愛すぎる。
「ねぇ、日向。放課後カフェデートしよう」
「…普通にカフェに行こうでいいじゃん」
「デート、ね」
「/// なんでもいいけど」
いつもの学内にあるカフェで、いつものメニュー。日向は俺からのチョコを見て、手に取るように喜んでくれている。
「いっつも思うけど本当凄いよな。これ本当に昨日全部作ったのか?」
「その方が長持ちするでしょ」
「うん。でも大変だっただろ?」
「全く」
日向の喜ぶ顔を想像していたら楽しくて仕方なかったよ。
「ありがとな。俺好きなんだよ、光琉のスイーツ」
ダメか。雰囲気の飲まれて、今日なら好きって言ってくれるんじゃないかって思ったんだけどな。
日向が作ってくれたのは…
「パウンドケーキだ」
「おう。りんごとチョコのな」
「食べてもいい?」
「あ、味の保証はしないけど」
これ…え? 無自覚だよな?
シナモンはりんごを煮る際に一緒に煮た? バニラエッセンスは生地と混ぜ合わせる際だろう。
もちろんチョコが入っている分違いはある。でも香りも味も、バニラシナモンでりんごを包みこんでいるような、俺が日向を抱きしめているような、そんなパウンドケーキ。
「光琉…? ーーおかしいな。もう1つは美味しく出来たのにーー」
いつもなら…味見用を兼ね上手く焼けた方を俺に渡すため、2本作るほど頑張ってくれたのかと感謝していただろう。でも正直それどころじゃない。
「バニラとシナモンを入れたのって…?」
「/// と、特に理由なんて無い」
目を逸らす日向。
「教えて」
「やだ」
首を軽く振り、下を向いてしまった。
「お願い、日向」
目を瞑り小さく深呼吸をし、それよりもと味の感想を聞いてくる。
「幸せな味がした」
「///」
耳まで真っ赤にして…これはもしかしたら、もしかするかもしれない。
「あのさ日向…何で俺がりんご好きか分かる?」
「分かるわけないじゃん」
下を向いたまま即答する日向。あれ…?
「考えてみて」
「…………」
やっぱり気が付いているんだよな?
「日向」
「…………」
「何となく予想してるんじゃないのか?」
「…………」
「日向の「ダメッ! ……まだ言わないで」」
りんごが好きだと言うたびに、頭では日向が好きだと思っていた。
日向がいちご好きからバニラ好きに変わった理由は俺。そのことに日向は気付いているし、俺の好みも同じ理由ではないかと、その可能性を考えてくれるようになったのかもしれない。
「日向…抱きしめていいか?」
「なっ、んで聞くんだよ。俺、聞かなくていいって言った」
日向を強く強く抱きしめ、泣きそうになるのを必死に堪えた。
75
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜
みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。
自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。
残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。
この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる――
そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。
亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、
それでも生きてしまうΩの物語。
痛くて、残酷なラブストーリー。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞に応募しましたので、見て頂けると嬉しいです!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる