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15.ヒロインの独り言
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「ウィル様こっち。次はこっちに行きましょう」
「ふっ。分かったよ」
この学校、想像以上に広かったの。
貴族が通うだけあって教室にある机も、食堂にある机も不自由なく使えるよう大きいし、廊下だって広い。サロンもガセボもたくさんあるし、こうやって探検しなければ、卒業まで存在すら知らないままの場所もあるんじゃないかってくらい。
だから入学式の日から少しずつ、時間を見つけてはウィル様と回っている。
そして今日の最終目的地は温室。
「ふふっ」
実はそのうちの1つを予約していて、今日はそこでウィル様とまったり過ごす予定。
「ディア、嬉しそうだね」
「はい! だって入学してからずっとウィル様お忙しそうでしたし」
ローズのせいでね!
「寂しい思いをさせてごめんね?」
「違うんです! ウィル様の体が心配で…」
「心配してくれたんだね。ありがとう。でもディア? 俺はディアとの時間が減って寂しかったけど、ディアは違った?」
「っ! ずるいです!」
分かっていて聞いてくるんだからっ。
「ディア?」
「寂しかったですっ!」
「うん」
すっごく嬉しそうな顔をして抱きしめてくる。
「だ、だめですっ」
「なんで?」
「周りに人がいます……」
せめて温室にたどり着いてからにしてほしい。
ウィル様の侍従であるノエルが、また始まったとでもいいそうな顔をしている…ことは全く気にならないけれど、他の生徒もいると恥ずかしいし気になっちゃうの。
ノエルは私達と同じ年の子爵令息。彼がウィル様の侍従になった経緯は……ってちょっと!
「ウィル様っ///」
「ディアが自分の世界に入りそうだったから」
「それは………否定できなさそうです」
「でしょう?」
だからって頬にキスしなくてもいいと思うの。
「真っ赤になって怒るディアも可愛いね」
「~~~///」
ウィル様はとってもいい顔をされていますねっ!
「温室に…」
「行こうか」
「はい」
バックハグをして向かおうとするウィル様。歩きにくい…
「………」
「離さないよ?」
まだ何も言ってないのに。
「手を…繋いで歩きたいです…」
「ふっ。姫の仰せのままに」
「もうっ!」
幼い頃再現しまくったプリンセスなドレス。他に見ないそのドレスは、物語のお姫様をイメージしたんだと伝えたことがあった。
「姫はやめてください」
「ディアが言い出したんでしょ」
「それはそうですけどっ……他の方に聞かれてしまいます」
「なら二人きりの時だけにするね」
そういう意味じゃない!
はぁ…『王子様と結婚したらお姫様になるの』なんて体年齢に精神年齢が引っ張られ、私も子供らしくて可愛いこと言ったなぁ…。
*
「あれは…」
ヒロイン?
「例の男爵令嬢だね」
「そうですよね」
私達が予約している温室に、ローズがいた。
……ついうっかり声に出してしまわないよう、心の中でもフラワーさんって言うようにしておこう。
「衛兵は中を確認しなかったのでしょうか?」
「そんなはずないんだけどねぇ」
おぉ…ウィル様お怒り? ま、そりゃそうだよね。基本自由に出入りできる温室も、貸切予約が入れば入口に衛兵が立つし、使用前に人が入っていないか確認するよう決められている。
しかも今回予約したのは王族。
だからまさか中に人がいるとは思わなかった。
「出るように言ってきます」
「ノエル待って」
思い出したの。出会いイベントの場所に温室パターンもあったなって。
「ディア?」
「何か新しい情報が得られるかも知れません。少し様子を見ましょう」
ウィル様の了承を得て、フラワーさんには見えないけれど、こちらからは見える場所にコソコソと移動する。
「おかしいっ」
っ!!
叫ぶように怒っているフラワーさんに驚き、ついウィル様の腕を掴んでしまった。
「ーー大丈夫?ーー」
「ーーはいーー」
小声でそう話しながら、私を抱きしめてくださる。今はこのままウィル様に抱きしめてもらっておこう。
「なんで誰とも出会いが成功しないのよっ!!」
やっぱり出会いイベントだったのね。
「痛い思いをして転けたのに衛兵が先に来ちゃうし」
恐らくあの場にいた誰かが呼んだのだと思うけど。
「訓練場に行ったのに朝練してないし」
定番で言うなら騎士の息子ってところよね? きっとゲームでは朝練をしているのだろう。
「図書館にもいないし」
こっちは親が文官なのでしょう。
「市場にも来なかった。一日粘ったのに」
おぉ…それはお疲れ様です。
「今日も出会えなかったら次はどうしよう」
今日は……ウィル様じゃないよね? もしかしてノエル?
「ーーウィル様…ここを出たいですーー」
「ーー分かったーー」
ゲームでもウィル様は温室を予約していたのだろうか? それとも別の人? 温室違い? 分からない……。
ここは現実だと、決してゲームの世界じゃないと何度自分に言い聞かせても、不安が消えてくれないよ。
「ふっ。分かったよ」
この学校、想像以上に広かったの。
貴族が通うだけあって教室にある机も、食堂にある机も不自由なく使えるよう大きいし、廊下だって広い。サロンもガセボもたくさんあるし、こうやって探検しなければ、卒業まで存在すら知らないままの場所もあるんじゃないかってくらい。
だから入学式の日から少しずつ、時間を見つけてはウィル様と回っている。
そして今日の最終目的地は温室。
「ふふっ」
実はそのうちの1つを予約していて、今日はそこでウィル様とまったり過ごす予定。
「ディア、嬉しそうだね」
「はい! だって入学してからずっとウィル様お忙しそうでしたし」
ローズのせいでね!
「寂しい思いをさせてごめんね?」
「違うんです! ウィル様の体が心配で…」
「心配してくれたんだね。ありがとう。でもディア? 俺はディアとの時間が減って寂しかったけど、ディアは違った?」
「っ! ずるいです!」
分かっていて聞いてくるんだからっ。
「ディア?」
「寂しかったですっ!」
「うん」
すっごく嬉しそうな顔をして抱きしめてくる。
「だ、だめですっ」
「なんで?」
「周りに人がいます……」
せめて温室にたどり着いてからにしてほしい。
ウィル様の侍従であるノエルが、また始まったとでもいいそうな顔をしている…ことは全く気にならないけれど、他の生徒もいると恥ずかしいし気になっちゃうの。
ノエルは私達と同じ年の子爵令息。彼がウィル様の侍従になった経緯は……ってちょっと!
「ウィル様っ///」
「ディアが自分の世界に入りそうだったから」
「それは………否定できなさそうです」
「でしょう?」
だからって頬にキスしなくてもいいと思うの。
「真っ赤になって怒るディアも可愛いね」
「~~~///」
ウィル様はとってもいい顔をされていますねっ!
「温室に…」
「行こうか」
「はい」
バックハグをして向かおうとするウィル様。歩きにくい…
「………」
「離さないよ?」
まだ何も言ってないのに。
「手を…繋いで歩きたいです…」
「ふっ。姫の仰せのままに」
「もうっ!」
幼い頃再現しまくったプリンセスなドレス。他に見ないそのドレスは、物語のお姫様をイメージしたんだと伝えたことがあった。
「姫はやめてください」
「ディアが言い出したんでしょ」
「それはそうですけどっ……他の方に聞かれてしまいます」
「なら二人きりの時だけにするね」
そういう意味じゃない!
はぁ…『王子様と結婚したらお姫様になるの』なんて体年齢に精神年齢が引っ張られ、私も子供らしくて可愛いこと言ったなぁ…。
*
「あれは…」
ヒロイン?
「例の男爵令嬢だね」
「そうですよね」
私達が予約している温室に、ローズがいた。
……ついうっかり声に出してしまわないよう、心の中でもフラワーさんって言うようにしておこう。
「衛兵は中を確認しなかったのでしょうか?」
「そんなはずないんだけどねぇ」
おぉ…ウィル様お怒り? ま、そりゃそうだよね。基本自由に出入りできる温室も、貸切予約が入れば入口に衛兵が立つし、使用前に人が入っていないか確認するよう決められている。
しかも今回予約したのは王族。
だからまさか中に人がいるとは思わなかった。
「出るように言ってきます」
「ノエル待って」
思い出したの。出会いイベントの場所に温室パターンもあったなって。
「ディア?」
「何か新しい情報が得られるかも知れません。少し様子を見ましょう」
ウィル様の了承を得て、フラワーさんには見えないけれど、こちらからは見える場所にコソコソと移動する。
「おかしいっ」
っ!!
叫ぶように怒っているフラワーさんに驚き、ついウィル様の腕を掴んでしまった。
「ーー大丈夫?ーー」
「ーーはいーー」
小声でそう話しながら、私を抱きしめてくださる。今はこのままウィル様に抱きしめてもらっておこう。
「なんで誰とも出会いが成功しないのよっ!!」
やっぱり出会いイベントだったのね。
「痛い思いをして転けたのに衛兵が先に来ちゃうし」
恐らくあの場にいた誰かが呼んだのだと思うけど。
「訓練場に行ったのに朝練してないし」
定番で言うなら騎士の息子ってところよね? きっとゲームでは朝練をしているのだろう。
「図書館にもいないし」
こっちは親が文官なのでしょう。
「市場にも来なかった。一日粘ったのに」
おぉ…それはお疲れ様です。
「今日も出会えなかったら次はどうしよう」
今日は……ウィル様じゃないよね? もしかしてノエル?
「ーーウィル様…ここを出たいですーー」
「ーー分かったーー」
ゲームでもウィル様は温室を予約していたのだろうか? それとも別の人? 温室違い? 分からない……。
ここは現実だと、決してゲームの世界じゃないと何度自分に言い聞かせても、不安が消えてくれないよ。
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