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第1章
9.海斗side
しおりを挟む――あんたには関係ない
そう言われたのは、もう何度目だろう。
そしていつからだろう。
その言葉を聞くたびに、かすかな苛立ちを覚えるようになったのは。
俺はいったい、何をしてるのか。
自分でも訳の分からない事を言って、ミケを抱きしめて、キスして。
そして今、更にとんでもない事になっている。
「……っ…!」
ミケはなんの躊躇もなく、俺のペニスをくわえた。
「……やめ…っ…」
止めさせようとしたが、声さえまともに出ない。
あたたかくて柔らかい口の中の感触と、ミケの指先の冷たさに、身体か震えた。
ざらざらした舌が筋と浮き出た血管に沿って滑り、細い指は根元を優しく揉みほぐしていく。
「……ン…ふぅ…っ…」
たっぷり絡められた唾液の音と、時折漏れる吐息が足の間から聞こえた。
逃れようのない快感がいっきに押し寄せてきて、俺はあっという間に追い立てられる。
身体が熱い。
息が苦しい。
「……っミケっ…」
思わずその柔らかな髪を掴むと、ミケは顔を上げた。
舌で、濡れた唇をぺろりと舐める。
「イキそう?」
既に限界寸前だった俺は何も考えられずに、ただ頷く事しかできなかった。
そしてミケが手を離したと同時に、壁に背をついたままずるずると床に座り込む。
「……おまえ…なに、を…」
自分の服を脱ぎだしたミケを、茫然と見つめた。
「何って」
白い肢体を露わにしたミケは、ふわりと笑う。
「セックス?」
息を呑む俺の前で、ズボンを下ろしたミケはまるで猫のようにすり寄ると、膝の上に跨った。
そして俺のペニスから溢れている先走りを指先で掬い、まるで見せつけるかのようにそれを自分の尻の穴へと擦り付ける。
「……んッ…ぅ、」
くちゅくちゅという卑猥な音が、ミケのか細い声が重なった。
「……もう、いっかな…」
「……?!おいっ」
目の前で繰り広げられる痴態に呆気にとられていた俺は、ようやくミケがやろうとしている事に気づいた。
「嫌だっ…やめろ!」
「……今更何言ってんの?」
ミケは呆れた顔をした。
「俺は、そういうつもりじゃ」
「じゃあ、どんなつもりだよ。勃ってんじゃん」
「それはっ…おまえが」
「あんたマジめんどくさい。ちょっと黙ってなよ」
そう言うとミケは、完全に硬くなった俺のペニスに手早くゴムを付け、自分の尻へとあてがった。
――ねえ、こっちを向いて?
聞こえないはずの声が聞こえた。
――ほんとはずっと、こうしたかったんでしょう?
あの日、窓から見えた空はどこまでも青く、澄んでいた。
汗ばんだ肌に触れる細い指先。
むせかえるような、甘い匂い。
忘れていたはずの記憶が蘇る。
途端に猛烈な吐き気を催して、ミケを突き飛ばすとトイレに駆け込んだ。
「……っ…!」
げほげほと咳き込みながら、胃にある物すべてを吐き出す。
……気持ち…わる…
苦しくて、涙がこぼれた。
でもどんなに吐いても、不快感はおさまらない。
そしてその間中、いくつもの残像が瞼の裏に浮かんでは消えていった。
「……大丈夫?」
しばらく便座の前にうずくまっていると、声が聞こえた。
「しばらく休んでいったら?」
顔をあげるといつの間にか着替えたミケが、冷ややかな眼差しで俺を見ていた。
「カギ、テーブルに置いとくからポストに入れといてね」
「……どこ、行くんだよ」
掠れた声しか出ない。
ミケは何も答えず、視界から姿を消した。
続いて、玄関が閉まる音がする。
「………っ!」
立ち上がろうとしても、身体に力が入らない。
「……げほっ…」
息が苦しい。
頭が痛い。
「はあっ……」
もう吐くものは何も残っていないのか、透明な胃液が顎を汚した。
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