迷子猫(BL)

kotori

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第1章

13.ミケside

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「いっ…たっ!」

部屋に入った途端、無言のままベットに押し倒された。

「なっ…ちょっ…と、待っ」

河西は抗う隙も与えず、ジャケットを脱ぎ捨てると覆い被さってくる。

「…っ、なんなんだよ…ッ」

強引なのはいつもの事だけど、なんだか今日は雰囲気が違う。
そのまま荒々しく服を脱がされ、四つん這いにさせられた。
何かを塗りつけられるヒンヤリとした感触に、目を見開く。

「!!い、やだっ…それ…っ」
「黙れ」
「……っ」

……怖い

静かな眼のその奥にある、欲望と、狂気。



「…っ!!あああっ!」

ぎゅっとを肩を抑えつけられたかと思うと、いきなり捻りこまれた。
気を失いそうなほどの痛みと衝撃で、目の前がちかちかする。

「――!…あっ、いやっ、あぁっ…!」

シーツを握り締めて苦痛に耐えていると、今度は意図的に引き起こされた快感が襲ってきた。

「やっ…やめ、…お願いっ…!」

その声は、誰にも届かない。





それがようやく終わったのは、数回意識を飛ばしたあとだった。

「………」

身体じゅうがひどいことになっていた。
叫びすぎて、喉も痛い。
足元には、彼がよく使うローションや玩具がそのまま転がっている。

……ほんと…、いい趣味…

続けざまに与えられる快楽は、痛みや苦痛を麻痺させていく。
そのうち理性さえも奪われて、自ら足を開き、縋りつき、ひたすら求め続けた。

そして時間をかけて散々犯された後、果てたモノの代わりにバイブをあてがわれた。
口で奉仕してる最中に我慢出来ずにイッてしまうと、あとで更に酷く嬲られる。

その、繰り返し。
まるで拷問。





「……今日は月がきれいだな」

ふと、声が聞こえた。

「……つき?」

ぼんやりと聞き返すと、煙草を吸っていた河西が振り返る。

「……ひどい格好だな」
「……少しは労わってよ」

煙草を消した彼が近づいてきたので思わず身を強ばらせると、低い笑い声がした。

「もうしないよ」
「………」

隣りに座った彼は、そっと俺の肩を抱いた。

「……なんの真似、」
「……さぁな」
「………」

血も涙もない、この男の体温。
心臓の音。

「……理解する意味なんて、ないのにな」

そうぽつりと言うと、彼はすぐに離れた。





日付が変わる頃にタクシーで部屋に帰ると、またしても玄関の前に寺嶋がいた。

……何、やってんだよ…

「……おい」

うずくまっている彼に声をかけたけど、返事はなかった。
どうやら眠っているらしい。

「……マジかよ…」

溜め息を吐いて肩を揺すると、彼は目を覚ました。

「……ミケ、」
「……もう来んなって、言ったじゃん…」

部屋に入るために押しのけようとしたけど、腕に力が入らない。
それどころか、もう立っているのがやっとだった。

「……おい、大丈夫か?」

……なんか、ぐらぐらする…

「おいっ」
「……うるせぇってば…」

差し出された手を払いのけたと同時に、ぐらりと視界が揺れた。
そして貧血の時みたいにだんだん目の前が暗くなっていき、やがて寺嶋の声は聞こえなくなった。





気がつくと、部屋のベットで眠っていた。

「………」

昨日河西と別れた後の事はあまり覚えてないけど、とりあえずちゃんと帰ってきたらしい。
上半身を起こしてみるとまだ少し頭は重たかったが、身体の痛みはだいぶ引いている。
その時、手に柔らかいものがあたった。

「……うわ」

触れたのは、寺嶋の髪だった。
彼は床に座ったまま、頭だけをベットに乗せて眠っていた。

……何してんだ、こいつ…

ふと、サイドテーブルにグラスと皿が置いてあることに気づく。
グラスの水を飲みつつ皿のラップをはがすと、そこには得体のしれない物体があった。

「……何これ」

思わず吹き出して、眠っている寺嶋を眺める。

「………」

……なんか、寝顔ばっか見てる気がする…

カーテンの隙間から、外の光が射し込んでいた。


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