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第4章
12.
しおりを挟む「手をはなして!」
振り返ると、そこには険しい表情をした可奈さんが立っていた。
「はなしなさい!」
腕を掴んでいた金髪の男は舌打ちをして、人混みに紛れていく。
「あんた、何やってんの!危ないでしょ?!」
「可奈さん…」
「ったく、やせ我慢するんじゃないわよ」
そう言うと、可奈さんは俺の手をとる。
「送ってくから」
「………」
繋がれたその手は小さくて。
でもとても、あたたかかった。
「三宅っ」
タクシーを拾う為に大通りを歩いていると、ぽつりぽつりと小さな雨が降りだした。
「あんた…この前の、」
駆けよってきた裕太を見て、可奈さんが顔をしかめる。
「おい、海斗はっ?一緒じゃねぇのかよ!」
息を切らしながら裕太が言う。
「……さっき、別れたけど。あんたの電話のあと」
「……っ、それであいつ、どこに行ったんだよ」
小さく首を振ると、裕太は額の汗を拭いながらクソッと呟いた。
「おまえ、海斗からなんか聞いてないか?美咲ちゃんのこと、」
必死な様子で詰めよってくる裕太に、なんだか嫌な予感を覚える。
「……行かなきゃ、って」
ごめんって。
「……っ、なんだよそれ…、あいつ電話出ねえし…っ」
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
「落ち着けるかよ、こんな時にっ」
「だからって騒いでても、どうにもならないでしょ?少しは冷静になりなさい!」
可奈さんの一喝が効いたのか、裕太はようやく口をつぐんだ。
「とにかく、あんたが知ってる事を話して。その美咲ちゃんて子が、どうしたの?」
「………。いなくなったんだよ、」
苛立ちの滲む声。
……いなくなった?
「どうして?」
「……俺も、あんま詳しいことはわかんねぇけど…ただ、」
裕太が話し始める。
雨の勢いは少しずつ、強くなり始めていた。
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