迷子猫(BL)

kotori

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第5章

5.可奈side

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――留守番電話サービスに接続します…

聞こえてきた無機質な音声に舌打ちした。
もう一度掛けなおしてみたけど、今度は圏外。

「あー、もう…」

大きな溜め息を吐く。
職場のフロアの片隅にある喫煙ルームは無人だった。

「おい、会議始まるぞ」

同僚の松下に声を掛けられ、仕方なく立ち上がって煙草を灰皿に押しこむ。

「なんかあったのか?」
「……別に、なんでもない」



松下は同期で、数少ない独身組の飲み仲間だ。

「今日も長くなりそうだなー」
「………」
「……ところでおまえさ、沢田と何かあったの?」

廊下を並んで歩いていると、おもむろに切りだされた。
そういえば前に酔った勢いで、隆宏のこと話したんだっけ…。

「別れたけど」
「へぇ…って、えぇ?!」

松下は驚いた顔をする。

「いつ?!」
「あー…、忘れた」
「えええ…」

とその時、手のなかの携帯が震えた。
着信はユカ姉からだった。

「ごめん、先に行ってて」
「ちょっ、おい」
「すぐ戻るから」



松下をその場に置き去りにして向かったのはロッカー室。

「もしもし、ユカ姉?」
『ごめん可奈、今仕事中よね?』
「少しなら平気。それよりあの子達、大丈夫だった?」
『それが、全然連絡がとれなくて…』
「……そっか、」

小さく溜め息を吐く。

……ったく、何やってんのよ…

『でね、さっきまで裕太くんって子が店に来てて』
「……は?なんで?」
『それがよくわからないんだけど…話してる途中で、その子の携帯に電話がかかってきて』
「誰から?」
『それが…』

ユカ姉の言葉に、あたしは目を見開いた。


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