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第5章
6.海斗side
しおりを挟む早朝ということもあってか、大通りは閑散としていた。
ようやく捕まえたタクシーの運転手はずぶ濡れの俺たちを見て眉を潜めたけど、頼みこんだらなんとか乗せてもらえた。
「……海斗、」
「……ん、」
窓の外を眺めながら、ありがとうと美咲は言った。
消えいるような声だったけど、ちゃんと届いた。
そして握りかえされる、小さな手。
「ありがとう」
道が空いていたからか、病院に着くまでそれほど時間はかからなかった。
「………」
二人で、案内された病室の前に立つ。
美咲は今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「大丈夫だから」
そう言う自分も、現実と過去の両方と向き合う事に恐怖を感じていた。
……だけど、もう逃げないって決めたから
意を決してドアをノックしようとした、その時。
「……美咲?」
その声に彼女はびくりと肩を震わせた。
振り返ると、そこにはワイシャツ姿の男が立っていた。
「……お父さん、」
その言葉に、今度は俺が目を見開く。
「おまえ…今まで、どこに」
「………」
美咲は俺の隣りで、怯えるように身を固くしていた。
「あの、すみません…美咲さんは、俺と一緒に」
「……君は、誰だ?」
「……中学の時の、同級生です」
父親の視線が、繋がれたままの手に移る。
「……そういうことか、」
「……え、」
美咲の父親は、深い溜め息を吐いた。
その額には深い皺が刻まれ、疲労の為かやつれた表情をしている。
「……来なさい、」
そう促されて病室に入った瞬間、思わず息を飲んだ。
「………」
部屋の中央にあるベットには、あの女がいた。
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