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第5章
16.
しおりを挟む「……ごめん」
まだ起きあがれずにいる俺に、しゅんとした顔で謝る海斗。
「……別に、平気」
「けど、」
「だから平気だって。気にしなくていいから」
俺だってしたかったし。
それに普段とは違う、理性をぶっ飛ばして激しく求めてくる海斗も結構好きだったりするし。
「……それより、大丈夫だった?」
彼女のことに触れていいのかどうか、迷ったけど。
でも何も訊かないのもなんだか不自然な気がした。
「……まぁ正直、なんとも言えないってゆうか…」
ベットサイドに座った海斗は、ぽつぽつと話してくれた。
それは想像以上にヘビーな内容で、俺は名前しか知らない彼女のことを本当に気の毒だと思った。
「……結局俺はまた、何もできなかった」
「………」
「情けねぇよな、」
そう言って自嘲気味に笑う海斗の背中を抱きしめる。
「……情けなくねぇよ。だってあんた、逃げなかったじゃん」
「………」
関係ないって突っぱねることだって出来たのに、そうしなかった。
現実から、過去から、目を逸らさなかった。
……そんなあんたの強さと優しさに救われた奴は、きっと俺以外にもいるはずだから
人はそれぞれいろんなものを抱えながら生きていて、だけどなかには自分の力ではどうにもならない事もあって。
うまくいかなかったり後悔する事だってあるだろう。
でもそれでも、前に進もうとするんだろう。
だから疲れた時には、こうして寄り添って。
その苦しい気持ちや悲しい気持ちも、全部受けとめてあげられる。
……俺はあんたの、そういう存在になりたい
甘えるように胸に顔を寄せてきた海斗の髪を撫でながら、俺はそんなことを思った。
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