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第1章
4.
しおりを挟む「あ、ミケちょうど良かった」
店に入ってきた俺に気づいて、ユカリさんが言った。
「どうにかしてよ、この子」
カウンターにはいつもの如く、ハイピッチで飲んでいる可奈さんがいた。
「ミケじゃん!久しぶりぃー、元気だったぁ?」
「まぁ、ぼちぼち」
隣りに座って、アイスコーヒーを頼む。
「なにあんた、まだお酒ダメなの?仕事の付き合いとか大変じゃない?」
「うん…最近よく思う」
「まあいいじゃない、無理して飲まなくても。てゆうかミケの場合、酔ったら何かと問題あるし」
するとあぁそっか、と可奈。
「……やめてよその話」
「でも可奈も程々にしないとね。もう若くないんだし」
「それは言わないでってば~」
ううう、とカウンターに突っ伏す可奈。
何があったんだとユカリさんを見ると、彼女は肩をすくめた。
「年下のカレとケンカしたらしいの」
……あぁ、そういうこと…
「てゆうか、また?」
「だってさぁ、あいつ酷いんだよ?アンタは結局物分かりがいいフリしてるだけだとか言ってさぁー」
ユカリさんが溜め息を吐きながら言う。
「で、原因はなに?」
「……一緒にいる時に、偶然上司と会って。つい、知り合いって紹介しちゃって…」
「……ああ、ね」
「迷ったよ?一応。でもその時は、取引先の人もいたから」
うーん…それは微妙だ…。
「あんた、上司に海斗くんの事カレシだって紹介できる?」
「……それは無理」
てゆうか絶対無理。
「それはまた話が違ってくると思うけど…。確かに、仕方ないかもね。ある程度は割り切らないと」
水が入ったグラスを可奈さんに差しだしながら、ユカリさんが言う。
「でも、傷ついたんじゃない?あの子、あんたに近づこうって努力してるみたいだったし」
「………」
「あんただって同じ事されたら、傷つくでしょ?」
「……うん」
しゅんとした顔をする可奈さんに、ユカリさんは笑って言った。
「あんたねぇ、十も歳が離れた男に泣かされてんじゃないわよ、みっともない。もっと余裕を持ちなさい」
そういう事をサクッと言える辺りがすごいよな、と改めて思う。
ユカリさんは昔と全然、変わらない。
「……あたしちょっと電話してくる」
可奈はそう言うと、携帯を持って席を離れた。
「それにしても、カレも子どもねぇ…。まぁ、二十歳なら仕方ないか」
「……でも俺も、傷つくかも」
そう呟くと、ユカリさんは笑った。
「今日、海斗くんは?また接待?」
「うん」
「大変ねぇ…。でも、飲むのも仕事のうちだしね」
……やっぱ、そうだよな
もう大人なのだ。
酒が飲めないのは仕方がないにしても、人と関わる事から逃げたら駄目だ。
「……俺も頑張らなきゃ」
溶けかけたアイスコーヒーの氷が、グラスのなかでからんと音をたてた。
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