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第2章
1.
しおりを挟む「てゆうかさー、林って何かとミケちゃんにあたるよねぇ」
松田さんが刺身を食べながら言うと、そうそうと諸岡さんが頷いた。
「ちょっとしたイジメだよ、あれ」
「や、でも…別に何かされてるってわけじゃないし」
俺は"半熟卵のふわふわオムライス"の鶏肉を取り除きながら言う。
「なに言ってんの?されてるじゃん思いっきり。今日言われてたデータの入力ミスだって、別にミケちゃんの所為じゃなかったのに」
「でもそれは、俺が最後にちゃんと確認しなかったから…」
メニューに偽りなく、卵はふわふわで甘い。
「……もうっ、ミケちゃんってなんでそんなにいい子なの?」
そう言って、松田さんはビールを飲み干した。
「そりゃ直接本人には言えないだろうけど…こういう所では、言っちゃっていいんだよ?」
「………」
つい笑ってしまった。
「え、なに?」
「……いい子、なんて初めて言われたから」
「え、ミケちゃん本当は悪い子なの?」
「うーん、どうでしょう?」
「でも、悪い子は居酒屋でオムライスとオレンジジュースなんて頼まないと思うけど」
確かにねえ、と諸岡さんが笑う。
「でも、おいしいですよ」
「子どもの頃から好きだったの?お母さんによく作ってもらってたとか」
「……そういう訳じゃないですけど」
母親の手料理なんて、殆ど食べた記憶はない。
「でさぁ、話は戻るけど。林、ひがんでるんじゃない?」
「……ひがむ?」
「ミケちゃんさ、室長に気に入られてるじゃん」
思わず吹き出しそうになる。
「……え、」
「そういやそうかも。ミケちゃん最近、室長とよく話してるもんね」
「たまにご飯食べに行ったりしてるんでしょ?」
恐るべし女子の情報網。
「林さぁ、室長のポスト狙ってるってウワサだもんね」
いやでも、と俺は慌てて言った。
「別に変なことしてるわけじゃ…」
「変なこと?」
しまった、と口をつぐむ。
「えっと、まだ新人だし…仕事が出来ないから気を遣ってもらってるっていうか」
「でももう二年目だよね?室長はミケちゃんが努力してるの、認めてるんだよ」
「で、林はそれが気に入らないと」
「………」
なんでこう、面倒な事になるんだ…。
これまで人付き合いを疎かにしてきたツケだろうか。
「大丈夫だよミケちゃん、うちらはいつでも味方だからね!」
「そうそう!なんかあったらいつでも言いなよ?少しは助けられるかもしれないし」
「……ありがとうございます」
ちょっと笑って、お礼を言う。
今の会社で働きだして、確かに面倒な事は増えたけど。
こういう人達に出会えた事は、素直に良かったと思う。
……職場や仕事の事は、海斗にもあんまり話せないし…
身近にそんな話ができる相手がいるっていうのは、やっぱり心強い。
華原さんが言う仲間の意味が、少しだけわかったような気がした。
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