sweetly

kotori

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前編

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誰もいない屋上。
気持ちよく晴れた空。
やわらかな春の日差しと、心地のよい風。
給水タンクの裏に座り込んで、煙草に火をつける。

入学式が終わって早一カ月。
新しいクラスにはすぐ慣れたし、仲のいい友達もできた。
始まったばかりの高校生活は、それなりに楽しい。楽しいけれど。

……あー…ヤリてぇ…

煩悩と共に吐き出した煙が、青空に溶けて消えていく。
やっと受験勉強から解放されたのに、空はこんなにさわやかに晴れわたっているのに、俺の心は悶々しまくり。

……出逢いがない…

まぁ、男子校だし当たり前だけど。
親父に強制的に受験させられたこの高校は、都内でも有名な某進学校だ。
まさか自分の頭で合格できるとは思ってなかったし、俺としては第二希望の共学に入る気満々だったのに…なんのまぐれか合格してしまった。
勿論親父は大喜びで担任にはムカつくほど驚かれ、仲がよかった奴らには爆笑された。

……てゆうか何が楽しくてヤローばっかの学校なんかに…

中学ン時とはだいぶノリが違うし、それはそれで新鮮でおもしろいとは思うけど。
でもどうせならかわいい女の子と休み時間におしゃべりしたり、昼休みに一緒に弁当食べたりしたいし?
そんで、仲良くなったら一緒に帰ったり、休みの日に二人で遊んだりしたいし?

……あああスカートが恋しい…

そもそも女の子がいない学校に来る意味なんてねえし彼女ほしいしデートしてえしチューもしてえし、てかヤリてえし。
そんな抑圧された青春と性欲に一人やばい感じに悶えていると、制服の上着のポケットに入れていたケータイがぶるぶる震えた。



LINEは健太からだった。

『生きてっかー?たまには遊ぼーぜ』

健太は中学ん時の同級生だ。
気のいい奴で、学校が別々になった今でもよく連絡をとる。
一緒にアホなことばっかやらかしてはよく怒られてたけど、まぁ今となっては懐かしい思い出だ。

『そういや俺、彼女できたんだって。隣のクラスのミキちゃん!』

……まじかー!!

しかも仲良く二人で撮った画像付き…んだよカワイイじゃん!
てゆうかなんなの…この置いてきぼり感は…取り残された感は…。
あああやっぱいいよなあ共学…てゆうか、カワイイ彼女!ううう羨ましい…。

……まあ、それは置いといて。とりあえず祝ってやろう…

一応親友だしな…。

『よかったな!てゆうかミキちゃんの友達紹介しろ!合コンしよーぜ合コン!!』

てゆうか俺は別にモテないわけじゃない。
中学ン時は彼女いたし、バレンタインチョコだって結構貰ってたし…まぁ今年は絶望的だけど…。
はああ、とまた溜め息。
あぁ、今度は魂出ちゃったかも…。



元カノのユキちゃんと別れた(てゆうかフラれた)のは去年の九月。
一コ年下だった彼女は、なんてゆうかすごく可愛かった。
女の子らしくて、ふわふわした感じ。
健気で純粋で…思わず守ってあげたくなるようなタイプ。
上目使いで先輩って呼ばれる度に、胸がキュンキュンしてたよな…。
なんだかせつない気持ちになっていると、健太からLINEの返信。

『ムリ。合コンなんかしたら、ミキちゃん怒るもん』

……もん、じゃねええお前なんかもう親友じゃねー…てか別れろ!!

元親友を半ば本気で呪っていた、その時だった。



「……あの、」

誰かの声。
慌てて煙草を消してタンクの影から顔を出すと、屋上の中央あたりに二つの影が見えた。

「これ…読んでくださいっ」

……ンだよ、どいつもこいつもよー

いいですねぇ青春ですねぇ!
しかも今どきラブレターって…いやそういうアナログな感じは好きだけど…むしろ貰ってみたいですけど!!

……って、あれ?

「……ごめん」

……てゆうかここ、男子校じゃん

「俺…好きな人、いるから…」

……っておいおいマジか


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