sweetly

kotori

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前編

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あやうくケータイを落としそうになった。
なんかスゴい場面に遭遇してしまった気がする…。

……なになに、まじであんのこういうの

「……わかりました」
「……ごめんね」

フラれたらしい生徒が、今にも泣きだしそうな顔(想像)で屋上から出て行くのが見えた。



「………」

……まぁ、いろんな奴がいるよな…好きになるのは自由だし…

自分がフラれた時の事を思い出し、なんだかいたたまれない気持ちになる。

……好きな子にフラれるって、辛いよなあ…

まあでも、男を好きになる気持ちはまったく理解できねーけどな!!
少しせつない気分で、二本目の煙草を取り出した時だった。

「……ウザ…」

そんな声と共に、紙を破く音が聞こえた。

……おいおいおい…

見るとさっき告られていた奴が、貰ったばかりのラブレター(らしきもの)をびりびりと細かくちぎっていた。
そしてただの紙くずになったそれを辺りにバラまくと、ポケットから煙草を取り出して火をつける。

……いやいや…それはないだろ―…

さっきフラれた奴に勝手に感情移入していた俺は、思わず立ちあがった。

……あいつ(たぶん)すげえ勇気だして告ったのに…俺にはまったく関係ないけど(てゆうかまったく知らない奴だし)、余計なお世話だろうけども!同じ男としてどうなんだそれは!てゆうか相手も男か!!

「……おい、」
「……あァ?」

振り返った奴を見て、俺は目を疑った。
色素の薄い髪に白い肌。
容赦なく睨みつけてくる切れ長な瞳。

「ンだよ、てめえは」

……あれ?俺、こいつ知ってる…

「聞いてんのかよ、誰だてめえ」

てゆうか、たぶんこの学校でこいつを知らない人間はいないだろう。

……天使、

奴は、そう呼ばれていた。



「……ノゾキか?楽しいか、そんなことして」
「はあ?!違っ…!」

否定しようとしたけど、あまりに驚きすぎて言葉にならない。

「あ、あんた…」

奴は白けた顔で煙草をスパスパ吸っている。

……てゆうかなんか、ウワサと全然違わねえ…?

「ああ、そうだ」

思い出したように奴は言う。

「お前、今見たこと誰かに話したツブすから」

……え?

優雅に煙草を吸い終えた美しい天使は吸い殻を上履きで踏みつけると、何事もなかったかのようスタスタと屋上から出て行く。
俺は呆然としたままその場に立ち尽くしていた。

……なんだったんだ、今の…





藤村 要(かなめ)。
それが天使の名前だった。
二年A組特進クラス。
で、その中でも成績は常にトップ。
全国模試でも上位から外れたことはない。
運動神経も抜群だけど、部活には所属してない。
なぜなら部の間で彼を巡って熾烈な争いが勃発するから。
でも、それより何より彼を目立たせているのは――その美貌だった。



「……いや―…アレは反則だよな」

クラスメイトの中村が、弁当をつつきながら言う。
すると隣に座っていた広田がうんうんと頷いた。

「確かに。アレはいくら男だってわかってても、ちょっとグラッとくるよね」
「………」

俺は手に持っていた食べかけのパンを、机の上にぼとっと落とす。

「……そんなに引くなよ。俺はノーマルだ。女の子が大好きだ」
「だっ、だよなー?」

中村の言葉にちょっと、とゆうかかなり安心した。



一年D組通称バカクラ。
いくらレベルが高い学校でも、当然俺みたいにまぐれで入学できた奴も存在するわけで。
この学校の、デキる奴とデキない奴を完全に分けるという教育方針ってちょっとどうなの?って気もするけど、おかげでこうやって気の合う友達もできたからまあいいとして。

……なんか嫌味な奴だな、藤村要…

「……てか性格悪くね?アイツ…」

昨日のことを思い出して、ついそんなことを口走ってしまった。

「え、なに?おまえ藤村先輩と知り合いなの?!」

中村の声に周囲にいた生徒の視線がいっきに集まる。

……なんなんだ…

「……いや、知り合いってゆうか」

脅されたってゆうか……あ。

――誰かに話したら、ツブすから

あの時の不敵な笑みと真っ黒なオーラ…奴はたぶん、本気だ…。
見るからに非力そうだし(めっちゃ細いし)、体力的には俺の方が確実に上だろうけど、ああいうタイプは後が怖い。

……自分の手は汚さずに、笑いながらトドメ刺してきそう…

「……や、なんとなく?調子乗ってそーじゃん?」

面倒事には巻き込まれたくないのでとっさにそう取り繕うと、いやいやと中村。

「んなことねぇって。先輩、超いい人らしいぜ?」

……は?

「そうそう、すごく優しいんだって」

……昨日貰ったラブレター破いてましたけど?

「頭いいのに、それをハナに掛けたりしないし」
「困ってる人がいたらほっとけない、みたいな」

……ええええ?

その時、近くで話を聞いていたらしいクラスメイトの武田が話に割り込んできた。

「俺さあ、前に一回だけ先輩にアイサツしたことあんだけど、そん時さ…」
「天使の笑顔!」
「それ!!あれまじヤバいって!!」

……ヤバいのはお前らの頭だろーが…

天使(?)の話で異様に盛り上がっている三人を、俺は顔を引きつらせながら見ていた。

……こいつらイイ奴らだけど、大丈夫…?

「……俺、ちょっと上行ってくる…」

ふらふらと立ち上がる。

「ああ、見つかんなよー?」
「……おう」

……なんか俺、とんでもねー学校に入ったかも…


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