sweetly

kotori

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後編

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そもそも、なんでこんなことになったのかというと。



それは、三カ月前。

――要くん、これ…よかったら、

ある日、あの人に弁当箱を渡された。
正直かなり迷惑だった。
でもあの人の緊張した顔を見ると、受け取らない訳にはいかなかった。

――ありがとうございます

口先だけのお礼だったのに、あの人はすごく嬉しそうな顔をした。



俺はそれを食べる気にはなれなかった。
一口も食べずに中身をコンビニのビニール袋にぶちまけると、ゴミ箱に捨てた。
そして家に帰ると、おいしかったですと笑顔で言った。
するとあの人は、毎日弁当を作るようになった。
俺は毎日、それを捨てた。
罪悪感がなかったわけじゃない。
殆ど意地になっていた。





そしてその日もいつものように、弁当を処分して教室に戻ろうとしていた。

――あの、すいませんっ。ちょっと…いいですか?



人気のない屋上で、俺は渡された手紙をぼんやりと眺めた。
紙切れ一枚ぶんの、薄っぺらい想い。
話したこともないのに、どうして好きになれるんだよ。
俺の事なんて、なんにも知らないくせに。
勝手に気持ち押しつけといて、俺にどうしろっていうんだよ。
毎日俺の為に料理を作る、あの人の顔が浮かぶ。



少し指に力を入れると、それは簡単に破れた。
俺は、かわいそうなくらいオドオドして泣きそうな顔をしていたさっきの奴の事を思い出しながら、それを細かく千切っていった。
そいつの気持ちも俺の感情も、全部まとめて捨ててしまいたかった。
散らばる紙片が、はらはらと風に舞う。



――おい、

突然後ろから聞こえた声。
振り返ると、背の高い男が立っていた。
先客がいたらしい。
思わず舌打ちする。
そいつは俺の顔を見て、驚いていたようだった。

それが、吉河との出会い。



茶色に染めた髪、両耳に幾つもついているピアス、いかにも女ウケしそうな顔立ち。
見た目は不良っていうより、チャラい感じ。
話してみると、更にそんな感じがした。
でも、ウザいけど不思議とそんなに嫌な感じはしなかった。
でもだからといって、別に興味があったわけじゃない。
あいつは勝手によく喋り、よく笑った。
俺が殆ど反応を返さなくても、気にしてないようだった。

そしていつの間にか――昼休みに一緒にいることが、当たり前のようになっていた。


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