sweetly

kotori

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後編

10

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……吐き気がする

バカじゃねえの?
なんで、自分を捨てた男の心配なんかしてんだよ。

「要くん?!」

……なんなんだよ



気づいたら家を飛び出していた。

「うわッ、」

玄関先に、なぜか吉河がいた。

「え、先輩?!どうし…」

あいつは驚いた顔をして俺を見た。

「……うるせぇよ、」

なんなんだよ、マジで。

「……先輩?」

触れようとした手を振り払う。

「……ウゼえんだよ、てめえはっ!」

いちいち干渉してきて、関係ねぇくせに。

……お前だって一緒だよ

そのうち、俺の前からいなくなる。

「……もう俺に話しかけんな。ここにも二度と来んな」

俺はそう言い捨てると駆けだした。
もう何もかも、面倒だった。





すっかり暗くなった空の下、騒々しい街の中をぼんやりしたまま歩いた。

……早く、卒業したい

そしたらあんな家、とっとと出て行くのに。
家族なんかいらない。
てゆうか、そんなもの初めからいない。



――要くん

あの人は、いつもどこか遠慮がちに俺の名前を呼んだ。

――要くん、それ、おいしい?

答えはいつも同じだって、わかってるはずなのに。
弁当を食ってないことだって、きっと気づいてる。
それでも、彼女は毎朝早起きして作っていた。
ほんとは料理が苦手なくせに、本を買ってきたり新聞についてるレシピを切り抜いたりして。



――俺、ナミエさんはいい人だと思うよ

吉河は言った。

――先輩のこと、大切に思ってくれてるよ

……そんなこと、わかってんだよ

でも…でも結局、また…。



「……藤村ちゃーん?」

背後から、耳障りな声が聞こえた。

「………」
「なーに、今日は一人なんだー?」

振り向くと、見覚えのある赤い髪。
彼はにやにやと笑いながら近づいてくる。

「どうしたのー?暗い顔しちゃってー」

……イライラする

無視して行こうとすると、腕を掴まれた。

「……はなせ」

……触るな

「冷てぇなあ…ちょっとつきあえよ」

ぐい、とそのまま引っ張られた。

……なんか、もう

……どうでもいい…


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