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kotori

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第3章1

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「あれー?浩介じゃん、久しぶり」

皐月さんは俺を見て、笑顔で言った。

「……なんてね。そろそろ来るかなって思ってた」
「……髪の色、変えたんですね」
「あぁ、うん。変かな」
「似合ってます。すごく」

ありがと、と皐月さん。

「あ、なんか飲む?」
「……ビール、下さい」
「オッケ」

上着を脱いでカウンター席に座ると同時に、ジョッキを置かれた。
まだ時間が早いせいか、店内にお客さんはいなかった。

「あの…よかったんですか、入って」
「ああ、一応五時からなんだけど気にしないで。もう仕込みも終わったから」

カウンター越しでグラスを磨きながら皐月さんは言った。

「一人で、準備するんですか?」
「うん。バイトの子達は、みんな夕方から」
「大変ですね…」
「そうでもないよ。一人の方が、自分のペースで出来るし」

静かな店内。
きゅっきゅっという、布とガラスが擦れる音。

「……皐月さん」
「ん?」
「那波が今どこにいるか、知ってますか?」

那波が姿を消してから、二週間が経っていた。
相変わらず連絡はつかないままだった。
散々悩んで迷って、でもやっぱりじっとしていられずに、ここに来た。

「………。知ってたら、どうする?」
「………」

ビールの白い泡を眺めながら、どうするんだろう、と思った。
居場所がわかったところで、今更俺は何をしようとしてるんだろう。
わかりません、と答えると、皐月さんは笑った。

「素直だね、浩介は」
「………」
「煙草、吸ってもいい?」

頷くと、皐月さんはライターと灰皿を手に取った。

「那波ね、一昨日までうちにいたんだ」
「え、」
「けど、なんか急に出ていって」

どこにと訊くと、さあ?と皐月さんは首を傾げた。

「まぁでも、そんなに遠くには行ってないと思うよ。あいつ、あんまり金持ってないみたいだったし」
「…………」
「心配?」
「……はい」

そっか、と皐月さんは煙を吐きながら言った。

「……ちょっと話、してもいい?」



「実は俺、一緒にバイトする前からあいつとは知り合いだったんだ。あいつが仲が良かった先輩と俺、その頃つきあっててさ。よく一緒に遊んでた」

カウンターから出てきた皐月さんは、俺の隣りに座った。

「その時あいつまだ中坊で、なんてゆうか、思春期じゃん?だからいろいろ相談にのってて」

懐かしそうに言う。

「……知ってた?あいつその頃から、ずっと浩介の事が好きだったんだよ」
「……え、」

俺も初めて聞いた時はびっくりしたよ、と皐月さんは言った。

「俺もまだガキだったし、話を聞いてやることくらいしか出来なかったけど…あいつずっともやもやした気持ち、抱えてたんだろうな。気を紛らわせるみたいに、いろんな子とつきあってた」
「………」
「けど、いつ頃からか前向きになって。絶対同じ高校に行くって、頑張ってたんだ。でも結局ダメで、相当落ち込んでたけど」

――まぁ仕方ねえよな、俺頭悪いし

そう言って、俺の前ではなんでもないふうに笑ってたのに。

「それに浩介、彼女できただろ?あの時も、かなりひどかった」
「……けどあいつ、よかったじゃん頑張れよって……」

笑って…。

「……言うしかなかったんじゃない?」
「………」


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