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しおりを挟む――……好きな子が、できて…
それを聞いた時、目の前が真っ暗になった。
――けど俺、どうすればいいかわかんなくて…
――………
浩介に、彼女ができた。
隣のクラスで、同じ図書委員の女の子。
もう本当にどうすればいいのかわからなくなった。
一緒にいても、話題は彼女のことばかり。
今日一緒にお弁当食べて。
今日一緒に帰って。
俺は笑って、その話を聞いてたけど。
心が壊れそうだった。
楽しそうに話す浩介に本気でムカついた。
今すぐに押し倒して、めちゃくちゃにしてやりたくなった。
力ずくにでも、俺のものにして。
おまえは俺のもんだって、刻みつけてやりたかった。
そしてもう誰にも触れさせないように、閉じ込めてしまいたかった。
でも、そうしたら。
俺はきっと永遠に、浩介を失ってしまう。
浩介はもう俺に、笑いかけてはくれなくなる。
友達にも、単なる幼なじみにさえ、戻れなくなる。
それは、絶対的な恐怖。
勝手に追いつめられた俺は、何もかもに苛ついていた。
もう大学なんてどうでもよかった。
また夜遊びと、女遊びをはじめた。
酒を飲んで騒いで、好きでもない女とヤって、ストレス発散みたいに喧嘩して。
どうしようもない日々に、また逆戻り。
というか、前よりもひどくなった。
でもそうでもしないと、おかしくなりそうだったんだ。
――代わりでもいいから、
遊ぶ金欲しさに皐月が紹介してくれた店でバイトをしていた時、祐希と出会った。
――俺とつきあって
その頃の俺は本当にどうしようもなかった。
他人の気持ちを思いやる余裕なんてなかった。
俺は祐希に対して、散々酷いことをした。
気まぐれに呼びだして、気持ちのないセックスをして。
少しも優しくなんてしてやらなかった。
浮気だって何度もした。
でもそれでも、祐希は俺から離れなかった。
――おまえ、いい加減にしろよ!
俺の様子を見かねた皐月に殴られた。
――あいつはまだガキなんだぞ?!
――……るせぇんだよ!!
もう、何もかもが嫌だった。
なんの為に生きてるのかさえ、よくわからなくなっていた。
――那波っ?!
店から帰る途中、家の近くで偶然浩介に会った。
皐月に殴られてぼろぼろだった俺を見て、真っ青になる。
――血っ、血がっ…!
――……別に、大したことねーから
――なに言って…っ
腕を掴まれて、家に連れていかれた。
――びっ、病院っ…!
――大丈夫だって
それよりいい加減、手ぇ離せよ…。
――だってっ、だって目がっ…どうし…失明、したらっ
大粒の涙が零れる。
――どっ、どうしよ…ななっ、那波っ…
――………
前に会った時よりもちょっとだけ背が伸びて、少し大人っぽくなったけど。
そうやってすぐ泣くとこは、いつまでたっても変わんないな。
――……大丈夫
ぽん、と頭に手をのせる。
――大丈夫だから
――………
すると浩介はふーっと深呼吸をして、救急箱を持ってくると急にてきぱきと怪我の手当てを始めた。
――いってぇっ…!
――我慢しろ!
目を真っ赤にしたまま、傷を消毒して。
それが終わると、俺の顔を覗き込んだ。
――目、見えてんだよな?
――……うん
――明日朝イチで、病院行くぞ
――けどおまえ、学校…
――そんなもんどうでもいいっ
――ハイ…
その後仕事から帰ってきた浩介の両親に驚かれて、それじゃ家に帰りにくいでしょ泊まっていきなさいよお家には連絡しとくから、ということになり。
その日俺は久しぶりに、浩介の家に泊まった。
翌日病院で検査を受けたら、視力に異常はなかった。
そう伝えると浩介は心底ほっとした様子で、へなへなと待合室のソファーに座りこんだ。
――……よかった…
――……ごめん
――……っほんとだよ、バカっ!!
まるで何かのスイッチが入ったかのように、顔を真っ赤にして怒りだす。
――次はないからなっ、今度喧嘩したら絶交だから!!
唖然としたあと、思わず吹きだした。
……絶交って…ガキかよ…
――俺は本気で言ってんだよ!
――……っごめんごめん、わかったから…
わかったから、もう泣くなよ。
浩介の涙を見た時、もういいかもしれないと思った。
俺の気持ちに応えてくれることはなくても、こうやって俺のために泣いてくれる。
形は違っても、俺のことを想ってくれてる。
だったらもうそれでいいんじゃないかって。
一生友達のままでも、単なる幼なじみでも、充分じゃないかって。
その時は確かにそう、思ったんだ。
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