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しおりを挟むそれから俺は、少し冷静になった。
簡単に諦めることは出来ないけど。
でも浩介といる時は、笑っていたい。
今一緒にいられるこの時間を、大切にしたい。
そう思えるようになった。
――……あのさ、那波
――んー?
その日はいつものように、浩介の部屋でごろごろしていた。
――……デートって、どうすればいいのかな
――………は?
雑誌を読んでいた俺は、ぽかんとして浩介を見た。
――……実は今度、一緒に遊園地に行くことになって…
――……よかったじゃん。てか、普通にすれば?
――普通って…
ぶつぶつ呟く浩介。
――……だから、一緒に遊んでメシ食って、チューでもして…
――チュ…?!
その反応にびっくりしたのは俺の方だった。
――……したことないの?
――……っ
……てゆうか。つきあいはじめてもう何ヶ月だよ…?
――……まさかと思うけど…初デート?
――………
――……今まで、何してたの?
――なっ、何って…その、手をつないだりとか…一緒にお弁当、食べたりとか…
唖然とした。
健全すぎて、逆に怖い。
――じゃあ、エッチとかって
――ええええっ!!そんなっ
浩介の顔が、いっきに真っ赤になる。
……まじかよ…
ある意味すげえな、と妙に感心していたその時。
――……彼女とは、ない…
浩介はそう、ぽつりと言った。
………んん?
なんか今の、おかしくね?
――……浩介くん?
――……ちっ、違くて!あの、浮気とかそういうんじゃなくてっ…
――まさかおまえっ、前にも誰かとつきあってっ…
――そういうんでもなくてっ
………は?
――……っ絶対、絶対、誰にも言わない?
――……うん
――……中学ん、時…
――……うん
――……近所の、おねーさんに…
消えいるような声で、浩介は言った。
――……はああああ?!
――っ那波っ、声でかいっ
泣きそうな顔の浩介。
――俺っ、俺だってわけわかんなくてっ、でも誰にも言えなくてっ
ちょっ…ちょっと待て。
――……っそれって、いつ?
――……中一の、夏…
……まじですか…
てゆうか、何気に俺より早いんですけど…。
衝撃のあまり言葉を失っていると、だからっと浩介が言った。
――そういうのはどーでもいいんだよっ、デートっ、デートはどうすればいいんだよ?!
――……どうもこうも…
ダメージがデカすぎる…。
てか近所のおねーさんって誰だ…。
おまえんちの近所なら、俺んちも近所じゃねーか…。
――どうしよう、俺…
不安げな表情を浮かべる浩介。
まだ立ち直れずにいた俺は床に転がったまま、てゆうかじゃあ俺でもよくね?近所だしさ…と意味のわからないことを考えていた。
――なぁ、どうしたらいいかなぁ?
うん…困った顔もかわいい。俺もヤリたい。って違うだろ。
――あのさ…
俺は努めて冷静になろうとした。したけれど。
――彼女ってどんな子?
やっぱり無理だった。
……なに訊いてんの俺!
――どんなって…あ、そっか、那波知らないんじゃん
知るわけないだろ。てゆうか知りたくもないだろ…。
――……あ、そうだ!
浩介の顔がみるみる輝きだす。うん、やっぱかわいい。
――いっしょに行けばいいじゃん!
………は?
――那波の彼女…えっと、ユリちゃん?
――いや、もう別れた
――早っ!
――今はマキちゃん
――早ぁっ!!……っとにかく、その子も一緒に、四人でさ
――……え、ええ
――見本、みせてっ
――……それは…つまり、ダブルデート、的な…?
――うん!!
……じっ、冗談じゃねえ俺を殺す気ですか…
神様ってたぶんいねーな、と思った。
――っいやっ…ほら初めてなら、やっぱそういうのは二人の方が…
きりきりと痛む胸を押さえつつ、なんとか平然を装う。
――お願いっ
そんな子犬みたいにうるうるした目で見るなよ…。
――夏休みの課題、手伝うから!テスト勉強もつきあうから、なんでもするからっ
腕にしがみつかれてそこまで言われたら…てゆうか、なんでもするって…。
あの時、きっぱり断っていたら。
彼女に会わなかったら。
たぶんこんなことにはならなかったと思う。
でもそうしたら、俺は自分の気持ちをあいつに伝えることはなかったのかもしれない。
そう思うと、複雑だけど。
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