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しおりを挟む午後になって、観覧車に乗ることになった。
浩介たちとは別々に乗ることになったので、そろそろ限界を感じていた俺は心の底からほっとした。
仲が良い二人の様子を間近で見ているのは、やっぱり辛すぎた。
そして長い列に並んで順番を待っていた時、急に雨が降ってきた。
――ツイてないね
ハンカチを出しながら、マキが言う。
雨宿りの場所を探している途中で、浩介たちとははぐれていた。
――なんだか、やみそうにないし
――……傘、買ってくるわ
俺は彼女をその場に残して、売店に向かった。
やっと帰る理由ができた。
早く帰りたかった。
そしていつものように、浩介の部屋でどうでもいいような話がしたかった。
「…………」
もう、潮時なのかもしれない。
どんよりした色の空を見上げながら思った。
ところが、近くにあった売店に入ろうとして偶然それを見てしまった。
たぶんあの時、俺のなかで何かが壊れた。
その後の事はよく覚えてない。
いや、ほんとは覚えてる。
忘れられるわけがない。
マキと別れて、さりげなく彼女に近づいて。
浩介の事で話があると言ったら、彼女は何の疑いも持たずに素直についてきた。
そして物事は、俺の思惑どおりに進んだ。
よかったじゃん、こんな軽い女に引っかかんなくてさ。
みるみる青ざめていく彼女を平然と眺めながら思った。
もしかしたら、笑ってたかもしれない。
ひどい、と彼女は言った。
その表情は、あの時の浩介とそっくりだった。
――何やってんだよ!
また皐月に殴られた。
――おまえ、自分が何したかわかってんのか?!
――………
わかってた。
わかってたけど、とめられなかった。
全部、俺の思いどおりになったはずなのに。
ショックを受けている浩介に、かける言葉が見つからなかった。
慰めてやることなんて、できるはずがなかった。
その時になって俺は、ようやく自分が取り返しのつかない事をしたことに気がついた。
そしてそのまま、月日は流れて。
俺と浩介は、同じ大学に進学した。
俺たちの関係は相変わらずで、でもそれさえももう限界だった。
一緒にいるだけで苦しかった。
想いを抑えるのも辛かったけど、何よりあの時の事がずっと頭から離れなくて、俺は自分勝手な罪悪感に苛まれ続けた。
結局ほとんど大学には行かなくなって、元の荒んだ生活に戻っていった。
――ケジメ、つけろよ
皐月は言った。
――確かに俺はあの時、諦めなくてもいいんじゃないかって言ったけど
――その子のことが本当に大切で、もう傷つけたくないなら、
――離れたほうがいい
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