nesessary(BL)

kotori

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夜になってから、浩介に電話した。

「明日、一応病院に連れていこうと思ってる。……ごめんな、色々迷惑かけて」
『迷惑だなんて、そんな…』
「……それとあいつに、あんまり気にすんなって言っといて」

あの時、那波はずっとアパートの外にいたらしい。
姿を見せなかったのはたぶん、昔の事があったからだろう。
きっと今頃、自分を責めてる。
そういう奴だ。



「……誰?」

電話を切ってベランダから戻ると、祐希が目を覚ましていた。

「浩介」
「………」
「そんな顔すんなよ、世話になったんだから」

心配してたぞと言うと、祐希はぷいと顔を背けた。

「……わかってるよ」



隣に座って濡らしたタオルを頬にあてると、冷たかったのか祐希は少し顔をしかめた。

「………」
「………」

唇に軽くキスをする。

「……皐月、」

もっと、と袖を引っ張られて、今度は深く唇を重ねた。

「……ん、ぅ…」

口のなかを切ってるのか、うっすらと血の味がする。

「……ねぇ、しよ?」

長いキスのあと、腕のなかで祐希が言った。

「……あのな、こんな時くらい大人しく寝てろ」
「……ちょっとだけ」
「ダメ」
「………」

ぶうっとムクれる祐希を抱きしめると、耳元で囁いた。

「……ケガが治ったら、嫌ってほどしてやるから」

その時は数えきれないくらいキスをして、ありったけの気持ちをこめて抱いてやる。
ぽかんとしている祐希を見て、俺は笑いながら言った。

「……覚悟しとけよ?」


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