12 / 84
12
しおりを挟む夜になってから、浩介に電話した。
「明日、一応病院に連れていこうと思ってる。……ごめんな、色々迷惑かけて」
『迷惑だなんて、そんな…』
「……それとあいつに、あんまり気にすんなって言っといて」
あの時、那波はずっとアパートの外にいたらしい。
姿を見せなかったのはたぶん、昔の事があったからだろう。
きっと今頃、自分を責めてる。
そういう奴だ。
「……誰?」
電話を切ってベランダから戻ると、祐希が目を覚ましていた。
「浩介」
「………」
「そんな顔すんなよ、世話になったんだから」
心配してたぞと言うと、祐希はぷいと顔を背けた。
「……わかってるよ」
隣に座って濡らしたタオルを頬にあてると、冷たかったのか祐希は少し顔をしかめた。
「………」
「………」
唇に軽くキスをする。
「……皐月、」
もっと、と袖を引っ張られて、今度は深く唇を重ねた。
「……ん、ぅ…」
口のなかを切ってるのか、うっすらと血の味がする。
「……ねぇ、しよ?」
長いキスのあと、腕のなかで祐希が言った。
「……あのな、こんな時くらい大人しく寝てろ」
「……ちょっとだけ」
「ダメ」
「………」
ぶうっとムクれる祐希を抱きしめると、耳元で囁いた。
「……ケガが治ったら、嫌ってほどしてやるから」
その時は数えきれないくらいキスをして、ありったけの気持ちをこめて抱いてやる。
ぽかんとしている祐希を見て、俺は笑いながら言った。
「……覚悟しとけよ?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる