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しおりを挟む待ちに待った日曜日。
テストは終わったし、昨日まで降っていた雨も上がってまさにお出かけ日和…だったんだけど。
「……こんな苦いの飲めないしっ」
「……ったく」
皐月はやれやれといった様子で、コーヒースタンドから大量のミルクと砂糖を貰ってきてくれた。
「……それ、もう既にコーヒーでもなんでもないよな」
「甘いほうがおいしいもんっ」
子ども扱いされた事に更に腹を立てつつ、ベンチに座って紙コップに口をつける。
「……てゆうかっ、なんでここなわけ?」
「だっておまえ、俺が行きたいとこでいいって言ったじゃん」
確かに言ったけど、なんでよりにもよって近所の公園?!
……なんか手抜きされた感じがするっ
「普通、遊園地とか水族館とかっ」
「人多いの嫌いだろ」
「じゃあ海とかっ」
「遠いし」
「映画っ」
「部屋で観る方が好きって言ってたじゃん」
「……っ」
言い返せずに詰まっていると、皐月は笑った。
「あとでブランコにでも乗るか?」
「俺はガキじゃないっ」
「好きなんだよ、ここ」
皐月はコーヒーを飲みながら言う。
「この公園、いつもいろんな奴がいるじゃん」
その目線の先には、フリスビーで遊んでいる親子がいた。
ピクニックシートを敷いて仲良くお弁当を食べているカップルや、木陰のベンチで昼寝をしてる男の人。
犬の散歩中らしいおばさんやダンスの練習をしている女の子達もいる。
「なんか、和むっていうか」
聞こえてきた音に振り返ると、少し離れた所に外国人のおじいさんが立っていた。
フルートのチューニングをしているらしい。
やがて聞こえてきた演奏はとても上手いとはいえなかったけど、周囲の人々はそのきれいな音に聴き入っていた。
「………」
演奏を聴きながら、ぼんやりとフリスビーで遊んでいる親子を眺めた。
小さな女の子が放ったそれは空高く飛んでいき、父親が慌ててそれを追いかける。
近くに座っていた母親がおかしそうに笑って、抱いている赤ん坊に何かを話しかけた。
「……祐希」
いつの間にか、演奏はやんでいた。
「……あ、ごめん…ぼーっとして、」
慌てて言うと、皐月はそっと俺の手を握る。
「……いいところだろ?」
「……うん」
「おまえとここに来たいと思った」
再び、フルートの音色が聞こえてくる。
さっきとは違う曲。
それはとても優しくて、穏やかな音色だった。
「……げっ」
ドアを開けるなり、そのセーラー服姿の女の子は思い切り顔をしかめた。
「ちょっと、来るなら来るで連絡くらいしてよ」
ほらやっぱり、と皐月のシャツの裾を引っ張る。
「いいだろ別に。何おまえ、部活だったの?」
ぐいっと腕を引かれて部屋の中に連れこまれる。
「あっ、あの…お邪魔します…」
「どうぞー、狭いですけど。あ、カレー辛いの平気ですか?」
「え?」
「あ、こいつダメ。カンナと同じので」
……カンナ?
「おうハジメ、久しぶりじゃん」
奥の部屋の畳の上で、小学生くらいの男の子が寝転がってゲームをしていた。
「げっ、兄ちゃん?なんでいんの?」
「俺が自分ちに帰ってきたらわりぃのかよ」
皐月に関節技をかけられて、ギブギブ!と畳を叩く男の子。
「ちょっと二人とも、暴れないでよっ」
さっきの女の子が、台所から呆れた顔を覗かせる。
「あ、その辺に適当に座って下さい」
「あ、はい…」
結局あれからずっと公園にいた。
ぼーっとしたり、うとうとしたり、話をしたり。
なんだかとてもゆっくりとした時間だった。
そして陽も傾きかけた頃、皐月が突然メシを食いに行こうと言いだした。
――日曜だから、カレーかな
その言葉の意味がよくわからないまま連れてこられたのは、とある団地の一室。
てっきりどこかのカレー屋に行くんだと思ってたので驚いた。
――ここ…
――俺の実家
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