nesessary(BL)

kotori

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「黙ってやるのはよくないよ」
「………」

予想通りの反応。

……やっぱこいつに相談するんじゃなかった…

「だってもし、何かあったら…」
「……何かって、何」

クラブハウスサンドにかぶりつきながら言うと、浩介は真剣な面持ちで答えた。

「……誘拐、とか?」
「……俺は小学生か」

だけど、と何かを言いかけた浩介の言葉を遮る。

「……これ以上、迷惑かけたくない」
「………。気持ちはわかるけど…でも皐月さんは、絶対にそんなふうには思ってないよ。迷惑なんて…」
「……わかってるよ、そんなこと」

わかってるから余計、辛い。

「祐希くん…」

その時、お待たせしましたと不機嫌極まりない声がした。

「……なんなんだよ、一体…」

那波は仏頂面のまま、ステーキがのった鉄板をテーブルに置く。

「だってこいつが飯おごってくれるっていうから」
「浩介…あんまり甘やかすなよ?つけあがるから」
「どんどん頼みなよ、今日は那波のおごりだから」
「はぁぁ?!」
「ねぇ那波、この店バイト募集してない?紹介してよ」
「ぜってえヤダ」
「……ペペロンチーノとドリアとシーフードカレー、追加で」
「……おまえ、フードファイターにでもなる気かよ…」



しばらくして、他の客に呼ばれた那波は席を離れた。

「………」

また、こんなふうに自然に話せる日がくるなんて思ってなかった。
那波と別れたばかりの頃は、すごく辛くて。
つきあってる時も、自分に気持ちが向いてないことくらいわかってたけど。
俺を抱く時、別の誰かの事を考えてた事にも気づいてたけど。

……でも、それでも傍にいたいと思ってた

「おいしそうだね、それ」

じゅうじゅう音をたてているステーキを見て、浩介が呑気に言う。
ちょっと前まで、こいつのことが大嫌いだった。
もちろん那波のこともあったけど、なによりその能天気さが気に障った。
容姿は至って普通、むしろ地味だし。
初めは那波がこいつの何に惹かれたのか、まったく理解できなかった。

でも最近、その理由が少しだけわかった気がする。
素直で真っすぐで、お人好し。
誰にでも、優しくできる。

……彼氏の元カレを本気で心配するあたりは、マジどうかしてるとしか思えないけど…

でもこいつのそういうところが、誰からも愛される。

……だからムカつくんだよ

「どうしたの?」
「……別に」

こうやってたまに一緒にメシを食うのは、単におごってもらえるからで。
話をするのはこいつが色々訊いてくるからで、別に聞いて欲しいわけじゃない。
そう自分に言い聞かせつつ、俺はそのゴムみたいなステーキを完食した。





皐月と初めて会った時、なんだか寂しい感じの人だと思った。
中学生だったその頃の自分にしてみれば、那波より年上というだけでずっと大人で、落ち着いているように見えた。

――あいつに苛められてない?

店で会うたびにそう声をかけてくれて、色々と気に掛けてくれていた。
でも皐月は、誰に対してもそんな感じだった。
そして誰といる時も楽しそうだったし笑ってたけど、やっぱりどこか寂しい感じがした。

それがあの夜、初めてキスをした時は違った。
その頃俺はちょうど那波と別れたばかりで、もうなにもかもどうでもいい気分だった。

でも…あの店の暗がりで見たその眼差しから、目を反らすことがは出来なかった。
荒々しさのなかに潜む、冷たさ。
いつもの穏やかな雰囲気もあたたかな笑顔もそこにはなくて、少し怖かったけど……それ以上に、興奮した。

知りたいと思った。
その眼差しの奥にある、彼の本当の姿を。
貪るような激しいキスのあと、そのままテーブルに押し倒された。
皐月は何も言わなかった。
俺も抵抗しなかった。

ただ、冷たかった身体に生まれつつある新たな熱を感じたんだ。あの時、確かに。


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