42 / 84
2
しおりを挟む仕事を終えて部屋に帰ると、祐希は毛布にくるまって床の上で眠っていた。
「……ったく、」
風邪ひくぞ、と耳元で言うと、んん…という返事。
「……さ、つき…?」
祐希は眠たそうに目を擦りながら起き上がる。
「……おかえりなさい」
「ただいま。てか、なんでそんなとこで寝てんだよ」
上着を脱いでビールの缶を手にソファに座ると、祐希は寝ぼけまなこのまますり寄ってきた。
そして俺の手を両手で包んで頬につけると、つめたい、と呟く。
「………」
身体の傷はいつか癒えても、心の傷が消えることはないだろう。
その痛みを忘れることも、ないだろう。
「……皐月?」
過去は今でも、彼を追い詰めている。
……だけど、
ワガママで意地っ張りなところは相変わらずだけど、素直な一面もみられるようになった。
時折見せるそのあどけない表情や、無邪気な笑顔。
共に過ごす時間のなかで、互いのなかの何かが変わってきてるんだと思う。
「……おい、」
感慨に耽っていると何を勘違いしたのか、祐希は俺の指を舐め始めた。
「……違うの?」
祐希はきょとんとした顔で言う。
そして、確かにうずうずし始めていた俺のモノに触れた。
「……あのな、」
「しても、いい?」
「………」
こういうところは変わらないけど。
でも、積極的なのは嫌いじゃない…むしろ好きだ。
祐希の手は、小さい。
結局好きなようにさせたまま、その柔らかい髪を撫でた。
「……ん…、んぅ…」
俺の足の間に顔を埋めて、口をモゴモゴさせている祐希。
「……っ、」
その毎度ながら絶妙な舌使いに、思わず息が漏れる。
「……おまえさぁ、こんな事…誰に教わったんだよ」
明るい部屋のなかで、くちゅくちゅと生々しい音が響いていた。
「那波?」
その言葉にぴくり、と祐希が反応する。
「……いいじゃん、そんなん…どうでも」
「じゃあ、他の奴?」
それまで忙しなく動いていた手が止まった。
「……そんな意地悪言うなら、もうしない」
ぷいっとそっぽを向く、その子どもじみた仕草が可愛くて。
だからつい、からかいたくなってしまう。
「祐希、」
「………」
小さな肩を抱き寄せて、そっと瞼に口づける。
「……皐月のばか」
「うん、」
俺はちょっと笑って、まだぶすっとしている祐希を抱きあげるとそのままソファに押し倒した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる