手をつないで(BL)

kotori

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体育祭編

1

 
とある、初夏の日。
中庭の木陰で、俺ともっきー(元木くん)はアイスを食べていた。

「体育祭とかまじダルいっすよね~」

何か競技が始まったのか、グラウンドの方から陽気な音楽と歓声が聞こえてくる。

「……いいじゃん、もっきー運動得意だし」
「俺、球技のが好きなんっすよ。サッカーとかバスケとか」



ここ数ヶ月で、俺ともっきーは結構仲良くなった。
初めはやっぱり戸惑ったけど、一緒にいるうちにそんなに気にならなくなった。

もっきーはいい奴だ。
話してると楽しいし、おもしろいし、よくお菓子をくれるし。
スキンシップがやたらと激しいのは、ちょっとどうかと思うけど。

「そういえば先輩は、何の競技にでるんですか?」
「……騎馬戦」
「男らしいっすね」
「……ははは」

単に、小さいから上に乗ってくれって頼まれただけなんだけど。

「俺、応援しますから!」
「いいって、そんな」

……てか、あんまやる気ないし…



「………。先輩、なんか最近元気ないっすね」

ぼーっと空を眺めていると、もっきーが言った。

「……そう?」
「アイス溶けてますよ?」
「………」

気づいたら、手がべたべたになっていた。



子どもの頃から、夏が苦手だった。
無遠慮に照りつける太陽は、俺の体力と気力と食欲を奪う。

……毎年のことだし、慣れてるけど…

それにしても、こんな季節に体育祭をすると決めたバカはどこのどいつだ…頭おかしいだろ、絶対…。

「体調悪いんですか?顔色あんまりよくないし」

もっきーが心配そうに、俺の顔を覗き込む。

「あぁ、うん……平気」
「あんまり無理しないでくださいね」

……もっきー、おまえはほんといい奴だな…

「……あのさ、」
「なんですか?」
「ちょっと、くっつきすぎ…」
「あっ、すいません。つい」

もっきーは慌てて、俺の腰にまわしていた手を放す。

「………」

それにしても、暑い…。




 
……何、考えてんのかな

俺はガリガリくんを食べながら、隣りに座っている先輩の横顔を盗み見た。
先輩はさっきからアイスを持ったまま、ぼんやりとしている。
透き通るように白い肌。
少し濡れた半開きの唇が、なんだかエロくてどきどきする。



半年前、友だちとひやかしに来たこの学校の文化祭で先輩を見かけた。
本当に一目惚れだった。
メイド姿で笑ってる先輩は、見惚れてしまうほどかわいくて。

気になって仕方がなくて、用事があるって友達に嘘ついて携帯の番号を聞きにいった。
でも、その時にはもう先輩はいなくなってて。
だけどどうしてもまた会いたくて、決まっていたスポーツ推薦をけってこの学校に進学した。

……それでその望みは、叶ったわけだけど…

先輩には、恋人がいた。



「……あ、先輩。呼ばれてますよ?」
「ううぅ…」
「大丈夫ですか?」
「……うん…」

じゃあな、と言ってふらふらと歩いていく先輩の華奢な後ろ姿はなんとも頼りなくて、思わず抱きしめたくなる。

――……そんなに好きなんですか、その人のこと…

――……うん

あの時先輩は申し訳なさそうに俯いて、ごめん、と言った。
でも、そんな事があってからも先輩は俺に優しくしてくれた。
学校では毎日話すし、たまには一緒に帰ったりもするし。
LINEだってちゃんと返してくれる。
その関係は、あくまで先輩と後輩だけど。

……好きだし、やっぱ…

先輩が笑いかけてくれるたびに、そう思う。



「あれ?元木、何してんの?」

通りかかったクラスメイトの穂積(ホヅミ)に声をかけられた。

「……別にー」

アイスの棒をくわえたまま答えると、ノビをする。

「やる気ねぇな、相変わらず」
「そうでもねぇよ?さてとー、先輩の応援いかなきゃ」
「……おまえさぁ、一応学年対抗なんだからさぁ」
「はぁ?知らねーよ、そんなん」

呆れ顔の穂積を尻目に、俺は笑いながら立ちあがった。


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