手をつないで(BL)

kotori

文字の大きさ
35 / 51
手をつないで

3

しおりを挟む
 
あの後、二人はやっぱり揉めたらしい。

「学校でもなんだか元気なくて…ずっとぼーっとしてるってゆうか」

隣りを歩くコウタが心配そうな顔をして言う。

「俺が余計なこと言ったからだよな…」
「でも、リクくんだって知らなかったんだし…。だけど巽さん、なんであっちゃんに進学のこと話さなかったんだろ」
「……反対されるのがわかってたからじゃん?」
「だからって先延ばしにされたら、余計傷つくよ」
「だよな…」
「リクくんは最近どう?」
「まぁ、ぼちぼち…。あんま余裕ないけど」
「そっか…。お互い頑張らないとね」

そう言うコウタも国立大志望だ。
予備校や模試で忙しいらしく、最近はこうやって学校帰りにちょっと会うことくらいしかできない。
俺が受ける私立の大学とは難易度のレベルが違うし、恋人としては頑張ってる彼を全力で応援すべきだとは思うんだけど。

「………」
「やっほー」

急に割り込んできた声にぎょっとした。

「おま、どっから出てきてんだよ!」
「えー、偶然見かけたから~」

突然現れた姉貴は笑いながら言う。

「コウタくんだっけ?久しぶりー」
「こっ、こんばんは」
「ねぇねぇ、ウチ寄ってけば?ここから近いし」
「おいコラ」
「でももう遅いし、ご迷惑じゃ…」
「そんなことないってー」
「コウタは忙しいんだよ」
「いいじゃーん、ちょっとだけ!巽たちの話も詳しく聞きたいしー」
「聞いてたのかよ…」

てゆうか、おまえいつからいやがった…。



結局コウタはウチに寄ることになった。

「ふーん、そういうこと~」

巽たちの事をやたらと聞きたがるので仕方なく説明すると、なるほどねぇとしたり顔の姉貴。

「てかおまえなんでいんの」
「だって暇なんだもん」
「あのな…」
「でもまぁ確かに巽も悪いけど、淳くんも淳くんね~」
「え?」
「理由も聞かずにキレちゃうとか、ちょっと依存しすぎじゃん?淳くん、基本甘えっ子気質だよねぇ」

姉貴の意見はあまり認めたくないけど、確かにそれはあるかもしれない。
巽は過保護気味ではあるけど、淳もそれを受け入れてるわけだし。

「で、でも二人はつきあってるし…」
「バランスの問題じゃない?甘えられる方に一方的に負担がいくだけじゃ、うまくいくわけないよ」

いともあっさりと姉貴は言う。

「それに巽にも考えがあるんだろうし」
「………」
「まぁ、こればっかりは本人達で話しあうしかないよねー」

しばらく好き勝手に喋った後、じゃあごゆっくりーと言って姉貴は部屋を出ていった。

「なんなんだあいつ…ごめんなコウタ、」

溜め息混じりに振り向くと、そこには真剣な顔をしたコウタの姿が。

「リクくんは…俺のことで、負担になったりしてない?」
「え?いや俺は別に…」
「本当?なんか不満とかってない?」

不安いっぱいな面持ちで、俺の顔を覗きこむコウタ。

……ちくしょー可愛いじゃねぇか…

「……不満じゃなくて希望なら、あるけど…」
「なに?!」

その必死な様子に、ごくりと息を飲む。

「できればその…もっと甘えて欲しいってゆうか」
「え、」
「そろそろヤりた…次の段階に進んでもいいかな~、とか」

受験やらなんやらで忙しくてあまり会えない、今だからこそ!なーんて…。

「………」
「………」

……あら?

「いや!勿論無理強いはしねぇよ?コウタの心の準備ができてからで」
「………」
「………」

固まったまま動かないコウタと、やっちまった感でいっぱいの俺。

結局この一件で、俺達の関係まで微妙な感じになってしまったのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

クリスマスには✖✖✖のプレゼントを♡

濃子
BL
ぼくの初恋はいつまでたっても終わらないーー。 瀬戸実律(みのり)、大学1年生の冬……。ぼくにはずっと恋をしているひとがいる。そのひとは、生まれたときから家が隣りで、家族ぐるみの付き合いをしてきた4つ年上の成瀬景(けい)君。 景君や家族を失望させたくないから、ぼくの気持ちは隠しておくって決めている……。 でも、ある日、ぼくの気持ちが景君の弟の光(ひかる)にバレてしまって、黙っている代わりに、光がある条件をだしてきたんだーー。 ※※✖✖✖には何が入るのかーー?季節に合うようなしっとりしたお話が書きたかったのですが、どうでしょうか?感想をいただけたら、超うれしいです。 ※挿絵にAI画像を使用していますが、あくまでイメージです。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...