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手をつないで
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しおりを挟む最近、先輩の元気がない。
いつもぼーっとしてるし、一緒にいても心ここに在らずという感じだ。
それでどうしたのかと訊ねても、貼りつけたような笑顔でなんでもないの一点張り。
……けど、なんでもないようには見えねぇし
ある日の放課後、いい加減痺れを切らした俺は思いきって訊いてみた。
「……彼氏さんとケンカでもしたんですか?」
「……え、」
その反応を見て確信した。
先輩はほんと、わかりやすい。
「……別に、大したことじゃないから」
「………。先輩、久しぶりに蕎麦食いに行きませんか?俺この前偶然、良さげなとこ見つけて」
「え、」
「俺奢りますから!元気でねぇ時はおいしいもん食べるのが一番っすよ!」
「……おいしい」
蕎麦を食った先輩は目を丸くして言った。
「でしょ?!ここ、前に穂積と来たんすけど先輩も絶対好きだと思って!」
本当はネットで調べて、下見の為に穂積を無理矢理付き合わせたんだけど。
「穂積くんて、同じクラスの?」
「あ、そうっす」
「仲いいんだな」
「いやどうっすかねぇ…あいつ何かと口うるさいっつーか。たまに母親みたいなこと言うし」
課題はちゃんとやれとか授業サボんなとかなんとか。
すると先輩は笑いながら言う。
「いい友達じゃん」
「や、たまに本気でイラッとしますけどね」
その後近くのゲーセンでちょっと遊んで、先輩を家まで送った。
「今日はありがとな。楽しかった」
「……いえ、」
じゃあまたな、と言って背を向ける先輩。
その後ろ姿が、なんだかすごく淋しげで。
「……先輩っ、」
思わず肩を掴むと、そのまま抱き寄せていた。
小柄な先輩は、俺の腕の中にすっぽり収まる。
「……もっきー、」
はなせ、と先輩は言った。
「嫌です」
「……え?」
「俺の前で、無理して笑ったりしないでください」
「……っ、」
先輩を抱く腕に、ぎゅっと力をこめる。
「……俺なら、先輩をこんなふうに泣かせたりしない」
こんなふうに傷つけたりしない。
誰よりも大切にする。
「もっきー…」
その時だった。
「……何してんだよ」
冷ややかな声が辺りに響いた。
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