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第4章

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    食事が運ばれてきた。

「おっ!今日はシチューかぁ!やったのぉ、ばぁさん!」
    ばぁばに目をやるともうすでに食べ始めていた。

「美味しいねぇ!じぃじもはやく食べりぃ!」
    ばぁばはじぃじのも食べてしまうぞと言わんばかりの顔をしている。

「お、おぅ!冷めんうちに食べよう!」
    じぃじも食べ始め、嫌いな人参をばぁばの器に入れている。

「お食事の途中ですが食べながらでもいいので聞いてください!」
    事務長が手を後ろに組み皆の前に立つ。

「次のレクレーションは来週と言いましたがわたしの都合が合わなくなり明日の十三時からに変更します!その予定でよろしくお願いします!ではお食事の続きを!」
    事務長は皆の表情を見ながら話す。

「おっ!やったー!楽しみじゃあー!」
    幾つものテーブルから喜びの声が舞う。

「あ、ちなみに言い忘れていましたが明日のレクレーションにミッションを組み込みたいと思います!バーニアシルの町で一人ひとりに私がお願いしたものを持ってきてほしいのです!バーニアシルには実は町の人に迷惑をかける者が増えてきているんです!なのでただのおつかいもありますが悪い事をした魔物から町を守ってほしいんです!」

「なんか今回ははじめてのおつかいみたいじゃのぉ!」
    じぃじは呟く。

「その私がお願いする物は一人ひとり違うので食事が終わったらここにある箱にメモが入っているのでそこから一枚を抜きとって部屋に戻ってくださいね」
   事務長が手に正方形の箱を持っている。

「さぁ、ばぁさん。はやく食べて紙を取りに行こう」
    じぃじはばぁばの方に目をやるとばぁばはすでに事務長のほうへ歩いていっていた。

「ば、ばぁさん!抜け駆けか!一家のご主人を置いていかんでくれー!まだ人参も残っておるぞー!」
    じぃじは人参だけ器の端に寄せシチューを口にかき込んだ。

    じぃじは食べ終わるとばぁばの元へと駆け寄る。

「ばぁさん!人参残っておるぞ!」

    ばぁばは四つ折りの紙を広げている。
じぃじはばぁばの持っている紙に目をうつすとそこには鹿の毛皮と書いてある。

「し、鹿の毛皮!?ばぁさん!生きた鹿から剥ぎ取るのか?」
    じぃじはあたふたしている。

「そ、そんなわけないでしょう!きっと鹿の毛皮を売っているお店があ、あるのよ!」
    ばぁばも不安そうにあたふたしている。

「じゃあ、ちょっとわしも紙をとってくるわ!」
    じぃじは事務長のもとへ行き箱の穴に手を勢いよくいれると、ぐるぐるかき混ぜながら一枚の紙をつかみ出した。

「か、簡単なのであってくれー!」
    じぃじは震える手を抑えながら四つ折りの紙を開いた。

「ん?ハリネズミらしき背中に棘が生えた魔物が首からぶら下げている赤いペンダントを持ってきてください。彼は町の畑を荒らしたりと悪行をはたらいています。…………ハリネズミ?あ、あの棘だらけのネズミみたいなやつか!よっしゃ!やってやるー!」
    じぃじはばぁばの元へ行き、じぃじの引いた紙を見せる。

「ばぁさん!わしはハリネズミみたいなやつと戦うようじゃ!」
    じぃじはばぁばに紙を開いて見せる。

「ハリネズミ!あれは棘が痛いから絆創膏を持っていき!あとから部屋であげるから!」
    ばぁばはじぃじを心配そうな顔をして見ている。

「じじぃは無敵だ!心配なんぞいらんぞー!」
    じぃじはやる気満々の様子でばぁばにピースサインをしている。

「ばぁさんも気を付けてなぁ!」
じぃじとばぁばは部屋へ戻る。

    部屋に着き、じぃじは寝巻きに着替え、寝る準備を始める。

「じぃさん!もう寝るんか?まだ十八時やけど!」
    ばぁばは目を丸くしている。
「ばぁさん!わしは明日戦にいくんじゃ!よう寝とかんとハリネズミに立ち向かえんぞ!ばぁさんもはやく寝た方がいいぞ!」
    じぃじは意気揚々と瞳を燃やしている。

「そうねぇ、わたしは鹿の毛皮の意味は分からんけど寝ようかね」
    ばぁばも寝巻きに着替えだし寝床に着く。

「じゃあ、おやすみなさい、じぃさん!」
    じぃじに目をやるとすでにイビキをかきながら寝ていた。


    小鳥のさえずりで目が覚める。

    ばぁばが目を覚ますとじぃじはラジオ体操をしていた。じぃじは元気よく腕を振り回している。

「まぁ、じぃさん!わたしじぃさんのラジオ体操してる見たの久しぶりよ!」
    ばぁばはじぃじがラジオ体操をしているのを見て涙ぐんでいる。

「おぉ、ばぁさんおはよう!今日は戦に行くから準備体操をしないとなっ!」

    じぃじはシワシワの細い腕をブンブンと振り回している。

「はぁ、はぁ。あ~疲れた。ちょっとやりすぎたのぅ。もうダメじゃ、戦には行けんかもな」
    じぃじは息を切らし床に転がった。

「じ、じぃさん!し、死ぬんじゃなぁーい」
ばぁばはじぃじに駆け寄る。

「ぐがぁ~………」
    じぃじはいびきをかいて寝ている。

「なぁ~んだ!じぃさん寝てるんや!おやすみなさい」
    ばぁばはじぃじの前で手を合わせた。

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