じぃじとばぁばの異世界旅行

ちいさき

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第5章

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「じぃさんやあー!朝ごはんよー!」
   じぃじはばぁばの声で目を覚ます。

「おはよー!ばぁさん、さてご飯にいこうか!」
   じぃじは何事も無かったかのように床から起き上がる。

   じぃじとばぁばは食堂へと向かう。
   食堂にはすでに皆席についており、じぃじとばぁばはそそくさと席につく。

 「皆さんおはようございます!昨日お話した通り午後十三時からレクレーションを始めますので多目的ホールに集合してくだささいね!ではお召し上がりください!」

    じぃじとばぁばは朝食を始めた。
「今日のレクレーションは一味違うからな!がんばろうな、ばぁさん!」
   じぃじはばぁばに視線を移すとばぁばはすでにもう完食していた。
   じぃじはばぁばのこの驚異的な食事の速さにいつも驚かされている。

「あ~、美味しかった!じぃさん頑張ろうね!」
   ばぁばは満足した顔でお腹をさすっている。

   しばらくしてじぃじも食べ終わりじぃじとばぁばは部屋に戻る。
「あ、じぃさん!絆創膏渡しておこうね!」
     ばぁばは手提げの鞄から絆創膏の束を手渡す。
「あらがとうな!ばぁさん、しかしこんなにようけは使わんぞ!」
   じぃじはばぁばからもらった両手がふさがるほどの絆創膏に呆気に取られていた。
   「まぁまぁ、なんかあったら大変やから!」
     ばぁばはじぃじが心配だという哀しそうな表情をしている。

「まぁ、わしに限って怪我なんぞありえないからのぉ!心配せんでもええぞぉ!」

    じぃじとばぁばは昼までテレビを見たりベッドに寝転んだりして時間を潰した。

「十三時になる十分前です。多目的ホールにお集まりください!」
    施設内放送が鳴った。
     
「よし、ばぁさん!戦闘の時間じゃ、行くぞっ!」
     じぃじは勢いよく部屋を飛び出しばぁばを置いて先にエレベーターに乗り込んだ。
「じぃさん!置いていかんでくれー!」
    ばぁば必死に追いかけたが全く追いつかず先にエレベーターは上へと上がってしまった。

    じぃじは一足先に食堂についた。
    ばぁばは一足遅れてきた。

   「みなさん!お集まりでしょうか?準備はいいですか?ではいつもの様にアイマスクを着用して肩を組んで輪になってください」

    じぃじとばぁばは皆が肩を組んでいる輪に入り、アイマスクを着用する。
    見えるはずのないアイマスクの中から、光が差すように見える。

その瞬間、体が軽くなり宙に浮いたような感覚に襲われる。


太陽の光に照らせれ目が覚める。
じぃじとばぁばは容姿が美男美女になり、草原に倒れていた。

「ばぁさん!起きろ、行くぞ!」
    じぃじがばぁばの体を揺さぶる。
「おはよう、じぃじ!もう朝か?」
     ばぁばは目擦っている。
   「バーニアシルじゃ!戦いにいくぞ!」
「あー、そうじゃったねぇ!」
「ばぁさん一人じゃあ、危険だから一緒に行動しよう!」
    じぃじは若くなったつやつやのばぁばの手を引き町へと歩き出した。

   町が見えてきた。
   そこは前来た時のように動物達の声で賑わっていた。

    「まずは、ばぁさんの鹿の毛皮から探そうか!」
    「ありがとぉ!」

      店が建ち並ぶ中にじぃじとばぁばは入っていく。一軒一軒と、なんの店かを確認しながら歩いていく。
    中には前回来た時になかった店が増えている。

     店の前を通り過ぎて行くごとに動物達に営業をかけられている。この町にお客さんが滅多に来ないのであろう、みんな必死に呼び込みをしている。
 

   「うちの店に寄ってくれー」
   「うちの店も楽しいものいっぱいあるよー!」
    店を通り過ぎる度に聞こえてくる。

     そこで、前にりんごをもらった猿の店に立ち寄る。

   「おーい!お猿さーん、わしじゃよぉー!」
    じぃじは店の外から猿に話しかける。

   「おー!あんたか、今日はりんごはやらんぞ!」
     猿は腕でバツ印を作っている。

   「わしだってそんな毎日無一文じゃないわ!あ、そんなことじゃなくて今日は聞きたいことがあるんだ!この町に鹿の毛皮を売っているお店はあるか?」

    「あー、確かもう少し歩いて左手に靴屋があつてその隣に毛皮屋さんがあるぞ!」
    猿は指を指しながらじぃじに教えた。

    「おー、そうか!よかったなぁ、ばぁさん!毛皮は剥がさんでいいみたいだ!ありがとな、お猿」
     じぃじは猿に片手を上げお礼を言って店を後にした。
     「教えてやったんだからなんか買っていけよー!」
     猿はじぃじ達に叫んでいたがじぃじとばぁばは無視をし、歩き出した。


    しばらく歩くと店先に靴屋を見つけた。
隣には様々な毛皮を売っているお店が隣にあった。

  「こんにちわー!だれかおらんかー?」
      じぃじは店先から店の奥に向かって叫ぶ。

  「なんだよー!うるせぇなぁ、いま昼寝したただろぉー。」

     中から出てきたのは黒くて大きな体をした二本足で立つ熊のような男だ。
     その熊は欠伸をしながらけだるそうにじぃじとばぁばを見ている。

   「何の用だ?」
   「あ、あのここに……鹿の毛皮は売ってますかね?」
   ばぁばは熊に恐る恐る聞く。
   熊は目を瞑り考えているようだ。
 「あ、ちょっと待っててくれ」

     熊は店の奥に入っていった。
    しばらくしてじぃじとばぁばの元に毛皮を持った熊が戻ってきた。
「これが鹿の毛皮だ!俺が先月、森で狩ってきたんだ!すごいだろぉ!」

 「さ、さすが森の熊さんですね!ハハハ……おいくらですかね?」
     じぃじはおっかなびっくりしながら尋ねる。

 「チケット一枚だ!持っているか?」
     ばぁばは昨日お掃除ミッションで手に入れたチケットを森の熊さんに手渡す。

  「これでいいかしら?」
  「おう!じゃあ、毎度あり!事務長の頼まれ事か?」
  「そうなんです!ありがとうございます!」
      じぃじとばぁばはチケットと交換鹿の毛皮を受け取る。

  「あ、熊さん!ついでに聞きたいことがあるんじゃが、この町に首に赤い宝石をつけたハリネズミがおるのを知っているか?」
     じぃじは熊に尋ねると熊は顔をしかめた。

  「知っているが…………、あいつの所に行くなら少し用心したほうがいいぞ!」
  「な、なんか危ないやつなんか?」
        じぃじは熊に顔をしかめながら不安そうに尋ねる。

  「ハリネズミはすごく動きが速く気性が荒い。中々捕まえられん。しかも針にはものすごい力があるんだ!あの針がもし刺さってしまうと…………ものすごく痛い。」
   熊は身震いをしている、一度刺さったことがあるのだろう。

    「い、痛いのか?わしは痛いのはだめじゃ!注射でさえダメなのに!」
     じぃじは体を震わせ頭を抱えてしゃがみこんでいる。
    「じぃさん!あんたなら大丈夫よ、だって小さい頃、空手習ってたんでしょ?しかもいまは体だって若いんだし大丈夫よ!ね?」
    「ば、ばぁばー!」
    じぃじはばぁばに抱きついて涙目になっている。

    「お二人さん!ハリネズミはこの町を抜けた森の中にいるよく潜んでいる。あ、あとあいつには弱点があるんだ!仰向けに転がしてあいつの腹を狙うんだ、あいつは背中は針だらけだがお腹はフサフサの毛で覆われている唯一の場所だ。そこにあいつの背中の針を抜いてお腹に一刺しするんだ!」
    熊は顔をしかめながら話す。
    「あいつはたまにこの町の店先の物を勝手に持っていったり畑を荒らしたりと迷惑な奴なんだ!」

    「そりゃあいかんなぁ!じゃあわしが勇者になるしかないんだな!」
     じぃじは真剣な顔をしている。

    「頼んだぞ!俺達の分までこらしめてくれ!若者!」
     「わ、若者?お、そうか、いまは若いんだったな!よし、行くぞばぁさん!」

       じぃじとばぁばは武器など何も持たず森へ向かって歩き出した。

     「ちょ、ちょっと待って!」

      じぃじとばぁばが振り返ると靴屋の店主であろう馬の頭の被り物を被った少女が話しかけてきた。
     「さっきの話し聞いてたんだけど、このヒールを持って行って!何も持たないで行くよりいいでしょ!」

      少女は赤い女性物のヒールのついた靴を渡した。

    「ありがとな!じゃあ言って参ります!」
    じぃじとばぁばは敬礼をする。
   それに合わせて熊と少女も敬礼をする。

   じぃじとばぁばは振り返ること無く森に向かって歩き出した。
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