じぃじとばぁばの異世界旅行

ちいさき

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第7章

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三人は街から施設の食堂に戻っていた。

  「みなさん、お疲れ様でした!どうでしたか?」
    みんな目を覚ました。
    しかし周りを見回すと怪我をしている人がたくさんいる。

   「みんな怪我をしている。あっちの世界で受けた傷はここの世界でも引き継がれるのか」
     
    「みなさん怪我は大丈夫ですか?重症な方から医務室で処置してもらってください!お疲れ様です!」

      じぃじは何か考え事をしていた。なぜみんな怪我をしてまであっちの世界にいきたいんだろう。

     「なぁ、なんであんたは怪我してまでこの世界に行きたいんじゃ?」
      じぃじは隣にいる腕にかすり傷を負ったおばあさんに尋ねる。
  「あの事務長は私の家族を救ってくれたんです。まだこの施設ができたばっかりのときなんですがね、私の夫が介護が必要になってわたしも年だから一人で介護するのは大変で、なかなか受け入れてくれる施設もなくてしかもお金もなかったんです。そんな中、事務長が声を掛けてくれたんです」
    
    おばあさんは涙ぐみながら話を続ける。
  「わたしは人助けがしたいです。困っている人がいたら助けたい。まだできたばっかりで信用などまだありませんが無償で預からせてくれませんか?と事務長が言ったんです。神様に見えました、それから夫は病気でこの施設で亡くなって、今度は私が体が言う事聞かなくなりこの施設に入りました。事務長はあのバーニアシルの世界をすごく大切に守っています。わたしは恩返しとして事務長の大切な物を命をかけてでも守ってあげたいんです」

   おばあさんは優しい顔で事務長のほうに目をやりながら話す。

   「そうか、そんな事があったんじゃ、じゃあこの施設には事務長に恩を返したいっていう人がいっぱいおるんかもなぁ」
     じぃじはおばあさんを同情の目でみる。

    「わしらも毎日平凡に暮らしてそのまま楽しいこともなくただ死ぬだけだと思っていたがバーニアシルという楽しい世界に連れて行ってもらってまた人生を楽しんでいる、感謝せんとな」
      じぃじとばぁばは見つめ合って頷いている。
    
   
    「じゃあ怪我の治療が終わった人から食事にしてください」
  皆は治療にいく人、食事に移る人それぞれに動き出した。
  じぃじとばぁばはたいして怪我もしてなかったのでいつも通りの席につき食事を始めた。
     
 「今日はハンバーグが!うまそうじゃな、ばぁさん!」
   じぃじはばぁばに目線を移すとやはりすでに食べ始めているばぁば。
  「まったくばぁさんの食い意地はすごいなぁ」
  「ごちそうさまでした。じぃさん、食べんのか?わたしが食べようか?」
   ばぁばはじぃじのご飯を狙っていた。
 「わしも食べるぞ、ばぁさん足りんならおかわりしてきたらいい」
   ばぁばは頷き、おかわりしにいった。

   食事が終わり皆は食堂を後にし、各自部屋へ戻る。 

   「今日も疲れたなぁばぁさん、また日にちも三日経ってるようじゃし、そろそろ寝ようとするか」
    「そうですね、じぃさん今日はお疲れ様」
     じぃじとばぁばの短い三日がまた過ぎる。

    そして翌日。
    じぃじとばぁばは目を覚ます。
    じぃじは両腕を上に伸ばし、背伸びをする。

    コン、コン
    ドアをノックする音だ。

「はい、どうぞ」
   じぃじはドアに目を向け返事をする。

  ドアが開き、顔を覗かせたのは事務長だ。
  「おはようございます!どうですか?だいぶここには慣れましたか?」
   事務長は爽やかな顔で尋ねる。
  「はい、お陰様で!こっちの世界もあっちの世界も楽しいですよ!」
  「そうですか!それはよかった、でもあっちの世界は前みたいに怪我をすることもありますから気をつけてくださいね。楽しい事ばかりじゃないので……」

   事務長は顔色ひとつ変えず話す。
   じぃじは何か事務長の言葉に違和感を感じた。
   「それで、わしらになんか用ですか?」
   「あ、そうです!今日お孫さんが夕方頃に会いにくるって連絡がありましたよ」
   「おー、ミキがくるんか!話したいこといっぱいあるからのぉ」
   じぃじは口角を上げ嬉しそうにしている。
   「よかったですねぇ!今日はレクレーションとかないんでゆっくり楽しんでくださいね」
   「ありがとうございます!事務長さんもたまには羽伸ばしたほうがいいですよ」
   「はい!あ、それと今日のミッション渡しておきますね!ちなみに一日一つ必ずやって頂くことにしましたのでよろしくお願いしますね、もし一つもクリアできなかった場合は罰がありますので」
   事務長はじぃじとばぁばの二人分のメモをじぃじに手渡す。
   「あ、ありがとうございます!罰ってなんじゃ?」
   「では、何かあったら事務所にいますので」
   事務長はじぃじの言葉を無視し、浅く頭を下げ部屋を後にする。

   「ばぁさん!今日ミキが来るってや!」
   ばぁばは眠たい目を擦りながら上体を起こす。
   「朝からうるさいのぉ!せっかく世界旅行しよる夢見よったのに」
   ばぁばは欠伸しながらじぃじを見る。
   「おぉ、悪いのぉ!ミキが来るそうじゃ!あとこればぁさんの今日のミッションじゃ」
   じぃじはばぁばに先ほど事務長から渡されたメモをばぁばに渡す。
   「ミキがくるんやぁ!久々やねぇ!」
   「学校が終わってくるんじゃろう!さて、わしのミッションはなんかのぉ!」
   じぃじはメモをゆっくりと開く。

   「えーと、わしのミッションは、鉄棒で逆上がり一回、昼食が全部嫌いなものそしてすべて完食、お孫さんが来たら追い返す」
   じぃじは驚愕している。
   「ミキが来たら追い返す?なんじゃそれ。変なお題じゃな!でもそれはやらんやったらいいだけじゃしな、しかもお題が三つしかない!五つじゃなかったかのぉ?」
   「わたしのは、階段でうさぎ跳び一回、読書感想文を書く、お孫さんが来たら追い返す」
   「ばぁさんのにも追い返せって書いてあるんか!何を考えておるんじゃろう」
   じぃじとばぁばは事務長に疑問を抱き始めた。

   「さて、わしは昼食が嫌いなものにするか!わしは嫌いなものがいっぱいあるから何が出てくるかは恐怖じゃが」
   じぃじは顔をしかめ、肩を震わせている。
   「じゃあ、わたしはうさぎ跳びにしようかね!生まれてこの方そんな事はしたことないけど」
   ばぁばは不安げな表情をしている。
   
   「ばぁさん、一緒に事務長に今日のするミッションを話にいこうか」
   「そうだね!いきましょうか」
   じぃじとばぁばはエレベーターに乗り込み事務所のある一階へ向かう。

   「事務長さん!今日のミッション決まりましたよ!」
   事務所の奥のデスクから事務長が出てくる。
   「お、さっそく決まりましたか!何にしますか?」
   「わしは、昼食が嫌いなもの、‎ばぁさんはうさぎ跳び一回をしますぞ!」
   じぃじは胸の前でガッツポーズをする。
   「そうですか!わかりました!頑張ってくださいね」
   じぃじとばぁばは事務長に浅く礼をし、エレベーターで部屋へ戻る。
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