勇者がレベル1でも仲間が全て最強クラスなら世界を救えるんじゃないか説

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第8説

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……できればこの手は使いたくはなかったが、やはり『アレ』を使うしかないのか……。

あの守衛さんも男であることは間違いない。

しょうがない、交渉術だけで行けるに越したことはなかったが、それも全て白紙に戻ってしまった今、真の『奥の手』、最終手段である『アレ』を使うか……。

冒険に出る前にこうも何度も自宅に戻る勇者は、本当に前代未聞だと自分でも思う。

父よ……申し訳ない!!

だがしかし!!

これも世界を救うためには、絶対に必要なことなのだよ!!(?)

母に見咎められないようにダッシュで父の部屋に駆け込むと、そこから『あるもの』を持ち出した。

すぐに踵を返し、そのままの勢いで手前側の守衛さんの元へ。

「なんだ、また戻ってきたのか。決心はついたのか?」

「いえ、それがまだ……。ところで、これを見て頂けますか」

「ん?なんだそれは」

「あっちの守衛さんにだけは見られないようにしてくださいよ。これは『あなただけ』に『特別に持ってきた』差し入れなんですから」

こうして、『あなただけ』とこれは『特別なはからい』だと告げることで、他にはない『スペシャル感』を演出する。

こういった自分を特別に扱ってもらえる『特別感』というものに、人間というのは弱いものなのだ。

「おおっ、そっ、それはっ……!!『エッチな本』ではないかっ……!!」

ごめん……そして持っててくれてありがとう父上……。(?)

僕は守衛さんの耳元でヒソヒソと囁いた。

「どうでしょう、もしアリュール王国までついてきて頂けるのでしたら、これとは別口で報酬もお支払いします。警備のお仕事の報酬がそれほど良くないということは、僕たち村人レベルにすら漏れ聞こえてきております。勿論、アリュール王国まで到着した後は、すぐに村に戻って頂いて構いません。けして悪い話ではないと思いますが……」

しばらく守衛さんの中で天使と悪魔が戦っているようだったが、最終的には悪魔が勝った(?)ようだった。

もう一人の守衛さんとしばらく話し込むと、やがて代わりの守衛さんが一人やってきて、手前側の守衛さんと入れ替わる形で警備についてくれた。

僕は、最終的にエロ本でついてきてくれることを決心してくれた(?)、『彼』の名前を聞く。

「サルバトルだ。短い間ではあるが、よろしく頼む」

守衛のサルバトルは、晴れて僕の味方となった!!

「決断してくださって本当にありがとうございます。サルバトルさん、あなたが僕の初めての『仲間』です」

僕が手を差し出すと、サルバトルはその大きな手でガッチリと握り返してくれた。

「うむ。……む?おいおい、急にどうしたのだ?」

初めてできた自分の頼もしい『仲間』に、僕は本気で嬉しくて、何故かその場で涙が止まらなくなってしまった。

「ハッハッハ、おかしな青年だ。知恵は人並み以上に回りそうなのに、妙に涙もろいところもある」

「も~、からかわないでくださいよ~。どうして泣けてくるのか、自分でも分からないんですから」

自分が一切戦わない計画を立てたはいいものの、本当はずっと、不安だったのかもしれない。

心強い、信頼できる仲間が来てくれる保証なんてどこにもないし、だからこそ、仲間になってくれたサルバトルの、温かい大きな手に心強さを感じて、自然に涙が溢れてきたのかもしれない。

たとえその動機がエロ本だったとしても(?)、そんなことはどうだっていいんだ、こんな僕の仲間になってくれるだけで、こんなに嬉しくて、こんなにありがたいことはない……。

あと、父の趣味とサルバトルの趣味が合ってて本当に良かった……。(???)

こうして、僕とサルバトルは、生まれ故郷であるアイリス村を後にした。

鞄にはいっぱいの薬草と夢を詰めて、僕の勇者としての冒険は幕を開けたんだ。
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