魔宝石 

覗見ユニシア

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≪眠りの花≫編

✡眠りの花のある洞窟 ✡ 前編

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 気付いたら、洞窟の中にいた。
 水滴が、上から落ちてくる。
 洞窟の上の方に氷柱が付いていた。
 息が白くなる。
 寒さで震えが止まらない。
 わたしは、ハヤセからもらった温かい生地にくるまった。
 全体が、闇に溶け込んでいて、辺りが薄暗かった。

(なんて、寒い場所なのだろう?)
「ミト~。ミト~」

 遠くから、ハヤセの声が聞こえた。

「わたしは、ここよ」

 震える声で、叫ぶと、返事が聞こえた。

『大丈夫?ミト』

 ローイが心配そうに、傍によってくれた。

『乗って。ハヤセ達が待っているわ』
「うん」

 凍えながら。ひっしにローイの背中に乗った。
 ローイの背中は、毛に覆われていてとても暖かかった。
 ローイが歩き始める。

「これ借りるぞ」

 セールが、わたしの首からルビーのペンダントをひったくった。
 そして、シャイワブーズイの首にかけてある袋の中に入れた。

「あれは?」

 洞窟に一輪の花が咲いていた。

『あれが、眠りの花よ』
「あれが」

 茫然と見つけていると、シャイワブーズイが、眠りの花に近づいて行くのが見えた。
 そして、花の周りをまわり始めた。
 セールが、わたしに認識出来ない呪文をつぶやいた。

「ミト。すずきひとみ」

 呪文を唱えた瞬間。眠りの花は消滅した。
 安堵しかけて、ルビーペンダントをセールから返される。
 その時、突然、ハヤセが倒れた。

「ハヤセ!」

 わたしは、ハヤセに近寄った。
 ハヤセがふらつきながら立ち上がる。
 目の色が、怒りと悲しみで満ちていた。

「ハヤセ?」
『ミト!あぶない!』

 ローイの声で、後ろを振り返ったその時、ハヤセに髪の毛を切られた。
 状況が、把握出来ないわたしは、硬直してしまった。
 わたしの切られた髪が、たくさん地面に落ちていた。

「ハヤセ?」
「外したか?今度こそ、首を頂く」
「ハヤセ。ねえ?どうしちゃったの?」

 わたし怖くて、涙が溢れて来た。
 でも、我慢して、お守りを力強く握りしめた。

「ハヤセ。ようやく見つけたぞ、この魔法世界を眠らせる気か」

 ヒューン。
 風を切る音がした。
 わたしは、ハヤセを庇うように、呪文を唱えた。

「風よ。風の盾よ」

 弓矢がハヤセに向かって飛んでくる。
(お願い。耐えて。かぜの盾)

 風の盾に矢が当たった途端に、弾き飛ばされた。

「ハヤセ。大丈夫?」

 ハヤセの目が正気に戻り、目元が優しく微笑んでいた。

「ミト。助けてくれて、ありがとうな」

 笑顔で微笑むハヤセ。
 その表情を見てわたし達は安心した。
 ローイが、弓矢を放った女性を凝視して呟いた。

『ミト様』
「え?」

 皆驚愕の表情を浮かべた。

「そうよ。わたしは、ミト。
 ハヤセが、この世に居る限り、魔法世界は救われないわ」
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