空手バックパッカー放浪記

冨井春義

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歓楽街の夜

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稽古を終えてシャワーを浴びて・・・この道場はホテルにあるのでホテルのジム、シャワーは使い放題という特典がある。
そういう意味ではコロンボでも有数の設備の道場といえるかもしれません。
またデワがタイから取り寄せた備品も結構揃っているし、参考資料も豊富にある。
これでちゃんとした先生が居ればいい道場なんだが・・・・肝心の部分がインチキなのだ。

「なあトミー。時間あるか?飲みに行こうぜ」

「うん。いつも夜はヒマだよ。このへんであまり出歩くなって言われてるしさ」

「バカだなあ・・・それでいつもホテルにこもってるのかよ。このへんは確かにヤバイところもあるけどさ、それはここらが歓楽街だからだぜ」

「え、そうなの?」

「そうなのって・・・・お前、窓から外見ないのかよ」

「いや・・・そういえば夜になると向かいの崩れかけのビルの前、綺麗なパンジャビ着た女の子たちがウロウロ歩いてるけど」

「あれは娼婦だよ。道端に立って客引きしてるんじゃねえか。気付くだろうが普通」

・・・私は当時本当に世間知らずなところがあって、全然気付いていませんでした。

「地味な歓楽街だなあ・・・・真っ暗でネオンのひとつも無い」

「電力がそれほど豊富じゃないんだからしかたねえだろ。まあオレもそんなに懐が豊じゃないからさ、こういうところがちょうどいいんだ。スリランカでは素人の女じゃまともに話しもできねえから、オンナの居る酒場にでもいこうや」

私もオンナは嫌いじゃないので興味はある。

「よーし。じゃあ、行こうか」

「おーし。なら早く着替えて行こうぜ!」

ホテルの玄関まで行くとニコラが

「悪い、オレちょっと便所に行ってくるわ。スリランカに来てからこっち、ずっと腹がゆるいんだよ」

私もスリランカでは腹を壊すんじゃないかと恐れていましたが、このときにはまだなんともありませんでした。

「そうか。じゃ、表で待ってるよ」

「ああ、そうしてくれ」

自動小銃を持ったホテルの警備員に挨拶して外に出ます。
なるほど昼間のにぎやかさとは違う風景です。
暗い道路に街灯がまばらに立ち並び、その灯りに照らされたオンナたちは一様に若くて美しく見える。

また道路の暗がりには目つきの悪そうないかにもヤバそうなガキどもがたむろしています。
この道路で明るいのはスナック類やコーラなどを販売する小さな売店です。
これがこのあたりのコンビニみたいなものでしょう。

夜になってもコロンボは暑いですが、頭の上にあの凶暴な太陽が無いぶん、かなりマシです。

「オース、センパイ!おやすみなさい」生徒たちです。

「オース!気をつけて帰れよ」

「センパイ、明日は?」・・・これはボウイです。

「うん。またデモンストレーションやりに行くよ。お前はもっと仕事して稼がなきゃいけないからデワと行ってくる」

「そうですか・・・すみません。またヒマなときには手伝いますよ。じゃあ」

そう言ってボウイが友人ふたりと歩き出します。
しばらくボウイたちが歩いて行くのを見守っていると・・・・・!

突然暗がりから4,5人の人影が飛び出してきました。。
ボウイたちは怯えたようにあとずさりします。
それを男たちが回りこみ取り囲む。

うわ・・・なんだありゃ!!・・・強盗か? 
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