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モンキー流空手の来襲
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「警備員さん、助けてください。ウチの生徒がヤバそうです!」
私はホテルの入り口に居るガードマンに声を掛けます。
なにしろ彼は自動小銃を持っていますから心強い。少なくとも私の空手よりは・・・。
が、しかし。
「すみません。私はここを離れられないんですよ」
・・・この緊急事態に何を!・・・と思いましたが、彼にしたらこの出入り口を守るのが使命です。
今でもこの付近には油断ならない目つきの輩がウロついていますので、無理も無いことではあります。
「じゃあ、お願いします。僕が向こうに行くからそちらから銃が見えるようにしてこっちを向いてください」
せめて暴漢を威嚇する役には立ってもらおうと思いました。
「了解しました。もし危なそうだったこちらから銃を構えて大声で威嚇します」
「頼みます」
私はチラリとホテルのロビーを覗きます。
せめてニコラが出てきてくれれば心強いのですが・・・・居ません。
彼を待っているほど悠長な事態ではなさそうです。
・・・・なんで私ばっかりこんな目に・・・・
仕方なく私はボウイたちが絡まれている現場に向かって走ります。
ボウイたちを取り囲む5人の男のうちのひとりがシンハラ語でなにか怒鳴っていました。
それに対してボウイも何か言い返しています。
特に今のところ暴力を振るわれているわけではないようです。
「ボウイ!」
私が声を掛けながら走っていくと、男たちが一斉にこちらを向きました。
私は「あれを見ろ」と言わんばかりに警備員のほうを指差します。
銃を持って仁王立ちする警備員を見て男たちはやや狼狽しています。
「ボウイ!大丈夫か?」
「あ、センパイ・・・・いや、別に襲われているわけじゃないんです。この人がバトウ先生です」
「・・・・え?」
ボウイが指し示した男は40代前半くらいでしょうか?
黒い顔に口ひげをたくわえ、私より身長は低いですががっちりとした体格をしています。
モンキー流という怪しげな流儀の空手の先生にしては、鍛えられた身体のようです。
・・・・ひょっとして中川先生よりマトモな先生なんじゃ?
そのバトウ先生が私をギロリと睨む。
「あんたがここの道場の先生かね?」
厳しい口調で尋ねます。
「いえ、自分は日本から道場開きを手伝いに来たものです。トミーといいます。押忍」
相手は仮にも一流一派の総帥ですから私としては一応礼を持って応対せねばならない。
「ふむ・・・まあよかろう。私は小さいながらもモンキー流という道場を構えているバトウというものだ。彼らはウチの門弟たちだ。ボウイから名前くらいは聞いているだろう?」
「押忍。聞いております」
「ボウイが最近出来た空手道場に鞍替えしたらしいというのは聞いていた。しかしウチの道場生を引き抜いているのはどういうことだ?あんたがやらせているのかね?こういうことをやってもらうと、いかに小なりといえど私は私の道場を守らねばならん。あんたの道場の責任者に会わせてもらおう」
・・・・はあ。。。責任者といえば・・・デワだ。うん。会わせるしかないか。そのとき。
「トミ~ッ!」
いまごろニコラだ・・・・遅いっつうの。
しかしなにしろ身長2mの白人が走ってきますから、これは迫力ある。
バトウ先生、びっくり顔です。
「どうした、トミー。大丈夫か・・・・んんーん?あんたは確かモンキー流のええと・・バトウ先生?」
「・・・ああ、そうだ。あんたは**会の・・・たしかニコラ先生だな?」
どうやら彼らは顔見知りのようです。
「ニコラ・・・・知っているのか?」
「ああ、だってオレの先生は日本ではカッサバ先生の兄弟弟子だし、この先生はカッサバ先生の流れだもん」
・・・ああなるほど。やはりカッサバ先生というのはこの国では結構なキーマンだな。。
「ニコラ先生。あんた何でこんなところに?」
「ああ・・・まあ色々あってさ。オレのところとトミーのところは友好道場になったんだよ」
バトウ先生は明らかに、まいったな・・・・という顔です。
そりゃそうでしょう。まさかこんなバケモノがバックについている道場とは思わず来たんでしょうから。
私はもう虎の威を借る狐もいいところ。
「それでバトウ先生よ。何しに来たんだい?」
バトウ先生は事のあらましをニコラに説明する。
「ああ~なるほどね。トミー、お前結構なトラブルメーカーだな。そりゃバトウ先生も怒るわ」
「いやー・・・別に引き抜いたわけじゃないんだけどなあ」
「まあいい。それでバトウ先生、どうしたいわけ?トミーと勝負するかい?」
ニコラは何かワクワクしたように言います。
おいおいニコラ・・・頼むよ・・・・そんなしょっちゅう道場破りの相手が出来るかっての。。。
「いや、私は話に来ただけだ。それにここが**会の友好道場というのなら、私もあまり波風立てたくないし」
「んー残念。まあしかしバトウ先生、懸命な判断だな。このトミーって奴は強くはないが面倒くさいから」
「・・・・・?」
バトウ先生は意味が分からずキョトンとしている。
「トミー・・・仕方ないなあ。飲みに行くのはお預けになっちまった。どこで話すよ?」
「道場の責任者はデワだから、デワを呼ばなきゃ。またホテルのレストランだな」
「よし。バトウ先生、それでいいな。トミー、デワ先生に言ってオレに飲ませろよ」
「ビンテージ・アラックはもう無理だぞ」
「しかたねえ。おい、あんたら全員ついてこい」
バトウ先生の門弟たちとボウイたち3人組に言います。
ゾロゾロとホテルの入り口に向かうと、まだこちらを向いて仁王立ちしていたガードマンが
「トミーさーん!もういいですか」
「ああ、ゴメン。もういいよ、ありがとう」
私はホテルの入り口に居るガードマンに声を掛けます。
なにしろ彼は自動小銃を持っていますから心強い。少なくとも私の空手よりは・・・。
が、しかし。
「すみません。私はここを離れられないんですよ」
・・・この緊急事態に何を!・・・と思いましたが、彼にしたらこの出入り口を守るのが使命です。
今でもこの付近には油断ならない目つきの輩がウロついていますので、無理も無いことではあります。
「じゃあ、お願いします。僕が向こうに行くからそちらから銃が見えるようにしてこっちを向いてください」
せめて暴漢を威嚇する役には立ってもらおうと思いました。
「了解しました。もし危なそうだったこちらから銃を構えて大声で威嚇します」
「頼みます」
私はチラリとホテルのロビーを覗きます。
せめてニコラが出てきてくれれば心強いのですが・・・・居ません。
彼を待っているほど悠長な事態ではなさそうです。
・・・・なんで私ばっかりこんな目に・・・・
仕方なく私はボウイたちが絡まれている現場に向かって走ります。
ボウイたちを取り囲む5人の男のうちのひとりがシンハラ語でなにか怒鳴っていました。
それに対してボウイも何か言い返しています。
特に今のところ暴力を振るわれているわけではないようです。
「ボウイ!」
私が声を掛けながら走っていくと、男たちが一斉にこちらを向きました。
私は「あれを見ろ」と言わんばかりに警備員のほうを指差します。
銃を持って仁王立ちする警備員を見て男たちはやや狼狽しています。
「ボウイ!大丈夫か?」
「あ、センパイ・・・・いや、別に襲われているわけじゃないんです。この人がバトウ先生です」
「・・・・え?」
ボウイが指し示した男は40代前半くらいでしょうか?
黒い顔に口ひげをたくわえ、私より身長は低いですががっちりとした体格をしています。
モンキー流という怪しげな流儀の空手の先生にしては、鍛えられた身体のようです。
・・・・ひょっとして中川先生よりマトモな先生なんじゃ?
そのバトウ先生が私をギロリと睨む。
「あんたがここの道場の先生かね?」
厳しい口調で尋ねます。
「いえ、自分は日本から道場開きを手伝いに来たものです。トミーといいます。押忍」
相手は仮にも一流一派の総帥ですから私としては一応礼を持って応対せねばならない。
「ふむ・・・まあよかろう。私は小さいながらもモンキー流という道場を構えているバトウというものだ。彼らはウチの門弟たちだ。ボウイから名前くらいは聞いているだろう?」
「押忍。聞いております」
「ボウイが最近出来た空手道場に鞍替えしたらしいというのは聞いていた。しかしウチの道場生を引き抜いているのはどういうことだ?あんたがやらせているのかね?こういうことをやってもらうと、いかに小なりといえど私は私の道場を守らねばならん。あんたの道場の責任者に会わせてもらおう」
・・・・はあ。。。責任者といえば・・・デワだ。うん。会わせるしかないか。そのとき。
「トミ~ッ!」
いまごろニコラだ・・・・遅いっつうの。
しかしなにしろ身長2mの白人が走ってきますから、これは迫力ある。
バトウ先生、びっくり顔です。
「どうした、トミー。大丈夫か・・・・んんーん?あんたは確かモンキー流のええと・・バトウ先生?」
「・・・ああ、そうだ。あんたは**会の・・・たしかニコラ先生だな?」
どうやら彼らは顔見知りのようです。
「ニコラ・・・・知っているのか?」
「ああ、だってオレの先生は日本ではカッサバ先生の兄弟弟子だし、この先生はカッサバ先生の流れだもん」
・・・ああなるほど。やはりカッサバ先生というのはこの国では結構なキーマンだな。。
「ニコラ先生。あんた何でこんなところに?」
「ああ・・・まあ色々あってさ。オレのところとトミーのところは友好道場になったんだよ」
バトウ先生は明らかに、まいったな・・・・という顔です。
そりゃそうでしょう。まさかこんなバケモノがバックについている道場とは思わず来たんでしょうから。
私はもう虎の威を借る狐もいいところ。
「それでバトウ先生よ。何しに来たんだい?」
バトウ先生は事のあらましをニコラに説明する。
「ああ~なるほどね。トミー、お前結構なトラブルメーカーだな。そりゃバトウ先生も怒るわ」
「いやー・・・別に引き抜いたわけじゃないんだけどなあ」
「まあいい。それでバトウ先生、どうしたいわけ?トミーと勝負するかい?」
ニコラは何かワクワクしたように言います。
おいおいニコラ・・・頼むよ・・・・そんなしょっちゅう道場破りの相手が出来るかっての。。。
「いや、私は話に来ただけだ。それにここが**会の友好道場というのなら、私もあまり波風立てたくないし」
「んー残念。まあしかしバトウ先生、懸命な判断だな。このトミーって奴は強くはないが面倒くさいから」
「・・・・・?」
バトウ先生は意味が分からずキョトンとしている。
「トミー・・・仕方ないなあ。飲みに行くのはお預けになっちまった。どこで話すよ?」
「道場の責任者はデワだから、デワを呼ばなきゃ。またホテルのレストランだな」
「よし。バトウ先生、それでいいな。トミー、デワ先生に言ってオレに飲ませろよ」
「ビンテージ・アラックはもう無理だぞ」
「しかたねえ。おい、あんたら全員ついてこい」
バトウ先生の門弟たちとボウイたち3人組に言います。
ゾロゾロとホテルの入り口に向かうと、まだこちらを向いて仁王立ちしていたガードマンが
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