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信長編
トラブル! 不良・リザードマン
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これまでの人の食生活から一時たりとも肉が消えた事はあっただろうか? ぃぃや無い、一度たりとも。それは、この世界も例外ではないようで、豚や牛、鳥や猪は当然として、この世界での肉の種類は日本を遥かに凌駕する量だった。
目の前では、掌てのひらほどの大きさの肉が、鉄板の上でジュージューと音を立て焼かれている。
ナイフを手に取り、ゆっくりと肉に刃を入れる。
ナイフと肉の合間から止めどなく肉汁が溢れる。
切り取った一切れの肉にフォークを刺し、ゆっくりと口へ運ぶ。
「この肉は脂がしつこくなく柔らかくて美味いな。おい店主、この肉はなんという肉だ?」
カウンターの向かいで忙しそうに肉を焼く店主は、こちらの声に気づく。
「えーっと、ルスキニアビーフのロースですね」
日本にいた頃は、肉ひとつをとってもここまで柔らかく、美味しくはならなかったし、この美味しさで銀貨七枚と、割と安価で食べることが出来る。
「全く……異世界ここの飯は美味すぎる。困ったものよ」
目の前の肉に舌鼓を打っていると、背後にある店の入口が、何者かによって蹴り壊された。
背後では店の客がざわめいている。
そんな事は気にも留めず、目の前の肉を一口一口咀嚼していると、背後で声が聞こえた。
「おいガキ、そこはオレ達の席だ、どきな」
どこかの子供が絡まれているな、そんな事を頭の隅で考えつつも、頭の中は目の前の肉で一杯だった。
すると、急に視界が九十度回転し、左肩を衝撃が襲う。
何が起きたか分からず、周りの状況を確認する。
足元には先程まで座っていた木製の丸椅子、現在尻が着いているのは店の床、どうやら何者かによって椅子を蹴られ倒れたようだ。
目線を上げると、そこには、2メートル程の人型のトカゲのような顔をした生物が五匹いた。
深緑の表皮に、魚を思わせるおびただしい数の鱗、腰に携えた武器。
一番先頭に立っていたトカゲもどきが眼を鋭く光らせて言った。
「聞こえなかったのかよガキ、ココはオレらの席だ。どきな」
周りの客を見てもガキと言えそうな奴は一人もいない、ましてや自分の事だとは思わない。
何だ? この世界では47歳でもガキなのか?
「貴様、誰に向かって言っているのだ?」
すると、トカゲもどきの連中は腹を抱えて声高々に笑いながら言った。
「オイオイ冗談キツイぜ、どっからどう見てもガキだろ? それなのに、誰に向かって言ってるのかって?」
そこまで言われて初めて自分の体の異変に気付いた。
異世界ここに来てから視線が低くなったような気がする。
立ち上がり、カウンターに置いてあるコップに自分顔を映してみる。
そこには、髭も、シワもない若かりし頃の自分の姿があった。
どうやら、異世界ここに来る途中で若返ってしまったようだ。
だが、そんな事はさして問題では無かった。
今はとにかく目の前の肉を平らげることが何よりも大切だった。
カウンターを見ると、カウンターの椅子は自分が座っていたのを含めて五つしか無かった。
「俺が食い終わるまで待て、それからでも良かろう?」
すると、一番前にいたトカゲもどきは、溜め息をついた。
「あのなぁ、オレにだってメンツってもんがあんだよ。こんなガキ一匹もどかせねーよーじゃあ、俺のメンツに傷が付いちまうだろうがよっ!!」
そう言って、トカゲもどきは、腰に下げていたマチェーテに手を回す。
周りの客がざわめきだす。
トカゲもどきは、何の躊躇も無く、こちらに斬り掛かる。
こちらも腰に手を回し、腰に下げていた、農場の主から貰った剣鉈けんなたを逆手持ちで抜刀し、剣鉈の刀身で、自身に振り下ろされたマチェーテを受ける。
刀身と刀身の衝突により、店内に金属音が高々に響き渡る。
周囲の客は閉じた目を開けると、驚きの表情を浮かべた。それは連中も同じだった。
「何っ!?」
どうやら、こちらの反撃など警戒していなかったようで、意表を突かれたマチェーテは易々と弾かれ、トカゲもどきは後ろへ数歩よろめいた。
ガキと下に見ていた奴にあっさりと攻撃が弾かれたトカゲもどきは、怒り心頭に発したようで、目を見開き言った。
「このガキがッ!!」
トカゲもどきは、トーンを落とした声で、外を指さし言った。
「表出ろや」
トカゲもどきについて行くと、店の外には早くも人だかりが出来ており、自身とトカゲもどきを円形に囲んでいた。
「もう逃げられねーぜ」
「フンッ、それは貴様も同じことよ」
「どこまでも舐めたガキだ、死んでも知らんねーからなっ!」
トカゲもどきはマチェーテを下段に、腰を落として構えた。
目の前では、掌てのひらほどの大きさの肉が、鉄板の上でジュージューと音を立て焼かれている。
ナイフを手に取り、ゆっくりと肉に刃を入れる。
ナイフと肉の合間から止めどなく肉汁が溢れる。
切り取った一切れの肉にフォークを刺し、ゆっくりと口へ運ぶ。
「この肉は脂がしつこくなく柔らかくて美味いな。おい店主、この肉はなんという肉だ?」
カウンターの向かいで忙しそうに肉を焼く店主は、こちらの声に気づく。
「えーっと、ルスキニアビーフのロースですね」
日本にいた頃は、肉ひとつをとってもここまで柔らかく、美味しくはならなかったし、この美味しさで銀貨七枚と、割と安価で食べることが出来る。
「全く……異世界ここの飯は美味すぎる。困ったものよ」
目の前の肉に舌鼓を打っていると、背後にある店の入口が、何者かによって蹴り壊された。
背後では店の客がざわめいている。
そんな事は気にも留めず、目の前の肉を一口一口咀嚼していると、背後で声が聞こえた。
「おいガキ、そこはオレ達の席だ、どきな」
どこかの子供が絡まれているな、そんな事を頭の隅で考えつつも、頭の中は目の前の肉で一杯だった。
すると、急に視界が九十度回転し、左肩を衝撃が襲う。
何が起きたか分からず、周りの状況を確認する。
足元には先程まで座っていた木製の丸椅子、現在尻が着いているのは店の床、どうやら何者かによって椅子を蹴られ倒れたようだ。
目線を上げると、そこには、2メートル程の人型のトカゲのような顔をした生物が五匹いた。
深緑の表皮に、魚を思わせるおびただしい数の鱗、腰に携えた武器。
一番先頭に立っていたトカゲもどきが眼を鋭く光らせて言った。
「聞こえなかったのかよガキ、ココはオレらの席だ。どきな」
周りの客を見てもガキと言えそうな奴は一人もいない、ましてや自分の事だとは思わない。
何だ? この世界では47歳でもガキなのか?
「貴様、誰に向かって言っているのだ?」
すると、トカゲもどきの連中は腹を抱えて声高々に笑いながら言った。
「オイオイ冗談キツイぜ、どっからどう見てもガキだろ? それなのに、誰に向かって言ってるのかって?」
そこまで言われて初めて自分の体の異変に気付いた。
異世界ここに来てから視線が低くなったような気がする。
立ち上がり、カウンターに置いてあるコップに自分顔を映してみる。
そこには、髭も、シワもない若かりし頃の自分の姿があった。
どうやら、異世界ここに来る途中で若返ってしまったようだ。
だが、そんな事はさして問題では無かった。
今はとにかく目の前の肉を平らげることが何よりも大切だった。
カウンターを見ると、カウンターの椅子は自分が座っていたのを含めて五つしか無かった。
「俺が食い終わるまで待て、それからでも良かろう?」
すると、一番前にいたトカゲもどきは、溜め息をついた。
「あのなぁ、オレにだってメンツってもんがあんだよ。こんなガキ一匹もどかせねーよーじゃあ、俺のメンツに傷が付いちまうだろうがよっ!!」
そう言って、トカゲもどきは、腰に下げていたマチェーテに手を回す。
周りの客がざわめきだす。
トカゲもどきは、何の躊躇も無く、こちらに斬り掛かる。
こちらも腰に手を回し、腰に下げていた、農場の主から貰った剣鉈けんなたを逆手持ちで抜刀し、剣鉈の刀身で、自身に振り下ろされたマチェーテを受ける。
刀身と刀身の衝突により、店内に金属音が高々に響き渡る。
周囲の客は閉じた目を開けると、驚きの表情を浮かべた。それは連中も同じだった。
「何っ!?」
どうやら、こちらの反撃など警戒していなかったようで、意表を突かれたマチェーテは易々と弾かれ、トカゲもどきは後ろへ数歩よろめいた。
ガキと下に見ていた奴にあっさりと攻撃が弾かれたトカゲもどきは、怒り心頭に発したようで、目を見開き言った。
「このガキがッ!!」
トカゲもどきは、トーンを落とした声で、外を指さし言った。
「表出ろや」
トカゲもどきについて行くと、店の外には早くも人だかりが出来ており、自身とトカゲもどきを円形に囲んでいた。
「もう逃げられねーぜ」
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