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信長編
魔法の兆し
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暖かくそして、柔らかく包み込まれているような、いつまでもこうしていたいような、そんな感覚にいつまでも浸ることはできなかった。
瞼を閉じていても感じる太陽の光、うるさいと思う程の物音、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
「ここは?」
6畳程の部屋、ベッドと机と椅子があるだけの簡素な部屋、その部屋のベッドに寝ていた。
木製の扉がギィと音を立てて開いた。
「起きてたのか、調子はどうだ?」
そう言って入って来たのは、先程まで食事をしていた肉屋の店主だった。
どうやら、トカゲもどきとの一騎打ちに勝った後に気絶してしまっていたようで、そこを肉屋の店主が店の2階の部屋で休ませてくれていたらしい。
「迷惑をかけたな店主、礼を言う助かった」
すると店主は、おもむろに首を横に振った。
「いいや、助かったのはこっちのほうだ。あいつら、いつも店に来てはタダで食わせろと刃を向けてくるのさ。あんたが追い払ってくれたから恐らくはもう来ないだろうな。あと、これはあんたのかい?」
そう言うと、店主は、懐から刃物を取り出した。
30センチ程の流線型の刀身、無くしたと思っていた剣鉈けんなただった。
「拾ってくれていたのか。すまないな。そろそろ行くとしよう、迷惑をかけたな」
剣鉈を懐に入れ、部屋を後にしようと入口まで歩くと、なぜか店主は逆方向に歩いていく。
「ほれ、忘れ物だ」
何かがこちらに投げられる。
咄嗟にそれをキャッチする。
全長1メートル程の流線型の刀身をしたマチェーテだった。
「これは俺のではないぞ」
「アイツらからの贈り物だ、貰っていきな」
ありがたく貰い受け、腰に帯刀する。
肉屋を出ると、小一時間前までの人だかりは跡形もなく消え去り、またいつも通りの風景に戻っていた。
特に行く宛てもなく、かと行って暇だった。
「……ギルドにでも行くか」
石畳の貼られた通りを人混みを避けながらギルドへと向かう。
ほんの一日ぶりに来たのに、何故だろうか、とても懐かしい気がする。
入口の木製の扉を開け、中に入ると、中は冒険者達で賑わっていた。
クエストを受注する者、パーティー募集をする者、ただただ駄弁る者、皆各々やりたいようにやっている。
何かクエストの一つでもこなして最近減ってきた貯金を増やそうと思い、クエストボードに行こうとすると、後ろから声をかけられる。
「ノブナガさんじゃないですか、どうしたんですか? その傷」
振り向くとお馴染みの女がいた。
初めて気付いたのだが、女の左胸にはワッペンがしてあり、名前が書いており、どうやら、シエルと言うらしい。
「あぁ、トカゲもどきと一騎打ちをした時に負った傷だ」
するとシエルは数秒首を傾げると、思い出したかのように手を叩いた。
「あぁ、リザードマンのことですね」
どうやらあのトカゲもどきはリザードマンと言うらしい。
「で、今回はどのクエストを受注されますか?」
シエルに聞かれ今一度クエストボードを見てみると、あるものが見つかった。
「そうだな……この、食人樹の駆除とあるが、食人樹とは何だ?」
「えーとですね、木の幹の中に住み着いた寄生虫が、樹木全体に神経の根を張り、枝や根、蔓等を自由に動かし人を喰らう植物ですね。特徴として、食人樹は生きるのに大量のエネルギーを使いますから、枯れた木々の中にポツリと生えている事ですね」
シエルの説明を聞いているには簡単そうだが、クエストの概要が書かれた紙には、難易度、危険度共にかなり高かった。
「おい、このクエストはそんなに危険なのか?」
するとシエルは、少し真剣な表情になり、低いトーンで言った。
「このクエストを見ると皆さんそう言われます。そう言って何人の犠牲者が出たかは言わずもがなです。この食人樹は、寄生虫さえ殺せればそれでいいのですが、寄生虫に攻撃するには硬い幹を破壊しなければなりません。しかしあの幹には現在作成可能などんな剣をもっても傷さえ入らない……」
そこまで言うとシエルは俯いた。
武器で傷さえ付けられないならどう太刀打ちすれば良いのか。
真剣に思考を巡らせていると、隣に立っているシエルは小刻みに肩を震わせ口を手で押えている。
「おい、何を笑っている。不敬であるぞ」
するとシエルは、我慢できなくなったのか、押さえていた手をどけ笑い出した。
「すいません、この寄生虫をどう倒せば良いのか、そう考えてましたよね。実はあるんですよ、簡単に倒せる方法が。知りたくないですか?」
満面の笑みで彼女はこちらに問いかける。
「勿体ぶらず教えたらどうだ」
「そうですね、《魔法》を使えば楽に倒せますよ。特に炎系の」
魔法、日本にいた頃には聞いたことも無いその単語は、意味は分からないが妙に好奇心を刺激した。
「魔法? それは何だ教えろ」
「魔法をご存知で無いのですか? では説明しますね――」
シエル曰く、魔法というのは火、水、地、風、雷の5つを基本とした火は火を、水は水を、風は風を、雷は雷を自分の魔力上限によって自由に操れるというものらしい。
「では、場所を変えましょう。そこで実践してみましょう」
そう言われ、シエルと2人で街の門をぬけ、草原に出る。
目の前には大木が日光を受け孤独にそびえ立っていた。
「ここら辺がいいですかね。じゃあ、始めましょうか」
まずは、体の中の魔力の流れを感じることから始まった。
血液とはまた違う、体中を流れるもの、それを感じ、掌に意識を集中させる。
「ッ――!」
瞼を閉じていても感じる太陽の光、うるさいと思う程の物音、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
「ここは?」
6畳程の部屋、ベッドと机と椅子があるだけの簡素な部屋、その部屋のベッドに寝ていた。
木製の扉がギィと音を立てて開いた。
「起きてたのか、調子はどうだ?」
そう言って入って来たのは、先程まで食事をしていた肉屋の店主だった。
どうやら、トカゲもどきとの一騎打ちに勝った後に気絶してしまっていたようで、そこを肉屋の店主が店の2階の部屋で休ませてくれていたらしい。
「迷惑をかけたな店主、礼を言う助かった」
すると店主は、おもむろに首を横に振った。
「いいや、助かったのはこっちのほうだ。あいつら、いつも店に来てはタダで食わせろと刃を向けてくるのさ。あんたが追い払ってくれたから恐らくはもう来ないだろうな。あと、これはあんたのかい?」
そう言うと、店主は、懐から刃物を取り出した。
30センチ程の流線型の刀身、無くしたと思っていた剣鉈けんなただった。
「拾ってくれていたのか。すまないな。そろそろ行くとしよう、迷惑をかけたな」
剣鉈を懐に入れ、部屋を後にしようと入口まで歩くと、なぜか店主は逆方向に歩いていく。
「ほれ、忘れ物だ」
何かがこちらに投げられる。
咄嗟にそれをキャッチする。
全長1メートル程の流線型の刀身をしたマチェーテだった。
「これは俺のではないぞ」
「アイツらからの贈り物だ、貰っていきな」
ありがたく貰い受け、腰に帯刀する。
肉屋を出ると、小一時間前までの人だかりは跡形もなく消え去り、またいつも通りの風景に戻っていた。
特に行く宛てもなく、かと行って暇だった。
「……ギルドにでも行くか」
石畳の貼られた通りを人混みを避けながらギルドへと向かう。
ほんの一日ぶりに来たのに、何故だろうか、とても懐かしい気がする。
入口の木製の扉を開け、中に入ると、中は冒険者達で賑わっていた。
クエストを受注する者、パーティー募集をする者、ただただ駄弁る者、皆各々やりたいようにやっている。
何かクエストの一つでもこなして最近減ってきた貯金を増やそうと思い、クエストボードに行こうとすると、後ろから声をかけられる。
「ノブナガさんじゃないですか、どうしたんですか? その傷」
振り向くとお馴染みの女がいた。
初めて気付いたのだが、女の左胸にはワッペンがしてあり、名前が書いており、どうやら、シエルと言うらしい。
「あぁ、トカゲもどきと一騎打ちをした時に負った傷だ」
するとシエルは数秒首を傾げると、思い出したかのように手を叩いた。
「あぁ、リザードマンのことですね」
どうやらあのトカゲもどきはリザードマンと言うらしい。
「で、今回はどのクエストを受注されますか?」
シエルに聞かれ今一度クエストボードを見てみると、あるものが見つかった。
「そうだな……この、食人樹の駆除とあるが、食人樹とは何だ?」
「えーとですね、木の幹の中に住み着いた寄生虫が、樹木全体に神経の根を張り、枝や根、蔓等を自由に動かし人を喰らう植物ですね。特徴として、食人樹は生きるのに大量のエネルギーを使いますから、枯れた木々の中にポツリと生えている事ですね」
シエルの説明を聞いているには簡単そうだが、クエストの概要が書かれた紙には、難易度、危険度共にかなり高かった。
「おい、このクエストはそんなに危険なのか?」
するとシエルは、少し真剣な表情になり、低いトーンで言った。
「このクエストを見ると皆さんそう言われます。そう言って何人の犠牲者が出たかは言わずもがなです。この食人樹は、寄生虫さえ殺せればそれでいいのですが、寄生虫に攻撃するには硬い幹を破壊しなければなりません。しかしあの幹には現在作成可能などんな剣をもっても傷さえ入らない……」
そこまで言うとシエルは俯いた。
武器で傷さえ付けられないならどう太刀打ちすれば良いのか。
真剣に思考を巡らせていると、隣に立っているシエルは小刻みに肩を震わせ口を手で押えている。
「おい、何を笑っている。不敬であるぞ」
するとシエルは、我慢できなくなったのか、押さえていた手をどけ笑い出した。
「すいません、この寄生虫をどう倒せば良いのか、そう考えてましたよね。実はあるんですよ、簡単に倒せる方法が。知りたくないですか?」
満面の笑みで彼女はこちらに問いかける。
「勿体ぶらず教えたらどうだ」
「そうですね、《魔法》を使えば楽に倒せますよ。特に炎系の」
魔法、日本にいた頃には聞いたことも無いその単語は、意味は分からないが妙に好奇心を刺激した。
「魔法? それは何だ教えろ」
「魔法をご存知で無いのですか? では説明しますね――」
シエル曰く、魔法というのは火、水、地、風、雷の5つを基本とした火は火を、水は水を、風は風を、雷は雷を自分の魔力上限によって自由に操れるというものらしい。
「では、場所を変えましょう。そこで実践してみましょう」
そう言われ、シエルと2人で街の門をぬけ、草原に出る。
目の前には大木が日光を受け孤独にそびえ立っていた。
「ここら辺がいいですかね。じゃあ、始めましょうか」
まずは、体の中の魔力の流れを感じることから始まった。
血液とはまた違う、体中を流れるもの、それを感じ、掌に意識を集中させる。
「ッ――!」
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