貴族が通う学院に通う平民は、平穏な学院生活を送りたい

秋月 史明

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第2章 剣術競技祭に迫る陰謀

第9話 勘違い

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 ハルクの周りを囲う一組の生徒達が各々の武器を構えた。
 その全ては実物。人をあやめることの出来るものだった。

 事の発端は昼休みまでさかのぼる。

「二組のハルク・グランシードって奴、そろそろ排除しないか?」

 生徒達が集まる教室で、シャルアが一組の生徒達にそう提案した。

「いっつも王女様をいじめてるやつか?」
「平民の分際でここにいる、邪魔な奴だろ? 俺、あいつのせいで始末書を書く羽目になったぞ」

 他の生徒達がそう言う。

「彼はこの学院の異端だ。それに、王女様を傷つけた罪人だ」

 シャルアがそう口にする。
 話している相手は全員貴族だ。それも、シャルアによって何らかの形で不利益をこうむった者だ。

「平民のあいつがいるせいで、俺達貴族の名誉が傷ついたんだ! これは、罪だ!」

 他の生徒がそう声を上げる。それを信じているかのように。

 当たり前だが、学院に平民が入学したことによって、名誉を含めて損害が生じたとしても、それを罪とする法は無い。
 生徒の先の発言は、単純に貴族の傲慢ごうまんさから来るものだ。

「今日の放課後、王女様が戦えなくなった時点で、ハルク・グランシードを王女を傷付けた国家反逆罪で死刑に処す」
「了解です」
「分かりました」

 生徒達の返事で、その場は解散となった。

 そして今――

 ハルクとレイシアは一組の生徒達に囲まれて、武器を向けられていた。

「彼ら、詰んだね」

 少し離れた所からハルク達を見守っていた二組の生徒がそう口にした。

「あの2人は大丈夫なんだけど……彼ら、大丈夫なのか?」
「レイシアの優しさに期待するしかないよ」

 ハルク達の今の状況は、一組の生徒達がハルクと王女のレイシアに剣を向けていると捉えられる。
 これは、立派に不敬罪だし、国家反逆罪も成立してしまう。

 だが、一組の生徒達はハルクが罪人、自分達は罪人を罰する善人という考えが頭から離れていない。そのせいで、彼らは二組の生徒達の会話を、ハルクを心配したものと捉えた。

「今すぐ武器を捨てなさい!」

 レイシアがそう声を上げる。
 その言葉は、王女としての命令だった。

 一組の生徒達もそれは理解していて、慌てて武器を床に置いた。

「貴方達、さっき何をしたか分かってるの?」
「そこの罪人を処罰しようとしていました」

 あくまでも、ハルクが罪人という主張をする一組の生徒達。
 彼らを可哀想なものを見る目で二組の生徒達は見ていた。

「ハルクくんの罪とは、どのようなものですか?」

 この時、一組の生徒達は確信していた。ハルクがレイシアに頼まれた練習を利用して彼女を痛め付けたと。

「レイシア様を必要以上に傷付けた事です」
「そう見えてたの……。分かりにくい事をしてごめんなさい。さっきのは、私がハルクくんに頼んでやってもらったことだから」

 シャルアがハルクをめようとしている事は分かっていたが、レイシアはえてこう言った。

「勘違いをしてしまい、申し訳ありませんでした」

 1人の生徒がそう口にして、一組の生徒達はその場から離れた。
 そして、ハルクを排除しようという気持ちが大きくなった。

   * * *

 あいにくの雨の中、二組の生徒達は中庭で剣術競技祭に向けた練習をしていた。
 だが、屋外だというのにも関わらず、生徒達は雨に濡れていない。

 その理由は――

「俺がわざわざ魔術で雨を防いでやってるんだから、負けたらただで済むと思うなよ!」

 ……二組の担任講師、ジルト・イリスナが防御魔術を儀式化した術で雨を防いでいるからだ。

「最低でも、一組に勝たなかったら単位落とすぞ!」

 ちなみに、二組の担任講師のジルトは準備と起動に時間を要す儀式魔術と簡単な魔術しか使えない。
 しかしながら、王室親衛隊の魔術師を勤めていた過去がある。それを知る者はかなり限られているが。

 ――そんなんで、二組の生徒達は今日も練習に励んいる。
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