貴族が通う学院に通う平民は、平穏な学院生活を送りたい

秋月 史明

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第3章 剣術競技祭で刃を向けられる者

第15話 クラス対抗戦術戦、対四組戦②

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「いたぞ」

 丘の上に到着した二組の索敵係の生徒がそう口にする。

「陣形C、突撃!」

 ちょうどその時……

「一番前の奴から倒すぞ!」

 ……前が尖った三角形型の陣形で突っ込んできた二組を見た四組の生徒達は勝利を確信した。
 作戦通り、1人を多数で叩けると思ったからだ。

 実際は、別動隊とハルク達に周りを囲まれていて、絶体絶命だというのに。

「いくか」
「うん」
「いつでもいけるよ」

 ハルク達は相手に気付かれないようにそんな会話を交わして、ハルクのハンドサイン通り、ゆっくり接近する。
 そして……

「突撃いいぃぃぃぃーーッ!」
「「おおおおおおおお!」」

 ……四組の生徒がそう掛け声をかけた瞬間にハルク達は飛び出した。

 四組の生徒達は雪に足をとられて思うよな速さで進めていない。
 だが、ハルク達は余裕で進んでいた。

 担任講師のジルトの地獄の雪上訓練のお陰だ。

「ぐあっ!?」

 1人、ハルクによって倒された。致死判定になっただけだが。

「て、敵しゅゴヘッ!?」

 隣の生徒が倒れた事に気付くも、また1人、倒れた。

「敵襲だああぁぁぁぁ!」

 異変に気付いた生徒が声を上げた。
 そして、他の生徒達がハルクの方を見た。

 その瞬間、未だに攻撃しないで雪に身を潜めていたレイシアとシルフィが四組の生徒達を斬りつけた。
 ちなみに、索敵は既に二組の別動隊に潰されている。

「1人で急襲って馬鹿じゃねーの?」

 四組の生徒がそう言った。まだ、レイシアとシルフィの存在には気付いていないらしい。
 この時点で二組は残り30人、四組は18人だ。

「……」

 ハルクは無言で敵を斬り伏せていく。

「作戦開始!」
「「おおぉぉぉぉッ!」」

 掛け声と共に四組の生徒達17人がハルクを囲っていく。

「ひゃあっ!?」

 外周の生徒がまた倒された。

 ……。

「完全迷彩にしておいてよかったぜ……」

 四組の本陣から抜け出し、味方の数が減っていくのを見ている者がいた。

 彼のあだなはエロ大将。毎日のように女子生徒にセクハラ行為を働いている問題児だ。
 おまけに、大抵の布を1回で引き裂く力を持っている。もちろん、女子生徒を力で抵抗出来ないようにする事は容易たやすい。

 そんな彼が本陣近くに身を潜めている理由は簡単だ。

「急襲班の金髪の子、めっちゃ可愛いやん……ぐふふ……」

 彼はレイシアに良からぬ事をしようと、手に縄と布を持って迫っていた。

 ちなみに、眠り薬の使用はルール上は問題ない。

 ……。

「くそっ! 外側にもいるだと!?」
「あの金髪の子は放置で問題ない。すぐに落ちる」

 変態副将と呼ばれている生徒がそう口にする。

「分かった」

 他の生徒がそう言ってシルフィに向かい始めた。
 そして……

「きゃあっ!?」

 ……突然、後ろから掴まれたレイシアが悲鳴を上げた。だが、その悲鳴はハルクに襲われて悲鳴を上げている複数の女子生徒の悲鳴にかき消された。
 そして、レイシアは口に布をあてられて、甘い香りを感じた後、意識を失った。

 この時点で、四組は残り12人。

「レイシア!」
「行かせると思うか?」

 ハルクがレイシアに駆け寄ろうとするが、5人に囲まれていて身動きが取れない。

 その間にエロ大将がレイシアを木の影まで移動させた。
 そして、無防備になった彼女の手を縄で縛った。。

「ぐふふ……最高ッ」

 そんな声を漏らしながらレイシアを自身の股間にあるモノで貫こうと、自身の下半身をあらわにした。

 同じ頃、四組本陣は二組に囲まれていて絶体絶命のピンチに陥った。
 そして、あっという間に全滅した。

 囲う練習はしていても、囲われた時の対策はしていなかったのだ。

 ちょうど四組本陣が全滅した時、エロ大将はレイシアの下半身を露にしようとしていた。
 ちなみに、レイシアが今身に付けているのは、他の女子生徒のようにミニスカートではなく、雪山用の迷彩服だ。
 お陰でエロ大将はレイシアの下半身を露にするのに手こずっていた。

 この時点で四組の残りは1人だけ。
 そして、ハルクは既に真横から拳を突き出していた。

「ふふゴアッ!?」

 レイシアのズボンのベルトを外して嫌らしい笑みを浮かべ、ハルクの拳に突き飛ばされたエロ大将は下半身を露にしたまま地を――いや、雪を舐めた。

 そして、シルフィの怒りの斬撃を身に受けた。

「ぐあっ!?」

 急所は外されているため、致死判定にはならず、痛みがエロ大将を襲う。

「た、頼む……許してくれぇぇ……」

 彼が必死に許しを乞う間に、レイシアが目を覚ました。
 布をあてられた時にすぐに息を止めたお陰で、眠り薬の効き目が薄かったのだ。

 そして、ハルクから何が起きたかを説明されると、剣を握ってエロ大将の方にゆっくりと歩いていく。

「やべぇな……レイシアが怒ってる」
「優しいレイシアを怒らせるって……」
「地獄が始まるな……」
「ああ……」

 二組の生徒がそんな会話を交わす間にレイシアはエロ大将の足元に来ていた。

「私をなんだと思ってるのよ……」
「ひぃっ……も、申し訳ありませんでした!」

 レイシアの纏う空気に恐怖を覚えた彼はそう口にした。

「言いたいことはそれだけ?」
「その、俺は嵌められただけで……」
「分かりやすい嘘ね。何を言っても許さないから」

 レイシアはそれだけ言って剣を振り下ろした。エロ大将のすねに。

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙……」

 エロ大将が痛みに脛をおさえながら呻く。

「最低……」

 レイシアはそう呟きながらエロ大将の肩口に剣を突き刺した。

 刃を落とした剣でも刺さりはするのだ。
 エロ大将の肩口から血が吹き出した。

 この瞬間、エロ大将は死亡判定を受け、フィールドから退場した。

『試合終了! 二組の勝利です! 四組の卑猥な攻撃を誰が予想したでしょうか。しかし、それを瞬く間に叩く二組の強さ! 次の決勝戦では素晴らしい戦いを見せてくれるでしょう!』

 フィールドが元のの更地に戻り、勝利した二組の生徒達は控え場所に戻っていた。
 だが、勝利したのにも関わらず、その空気は重苦しかった。
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