貴族が通う学院に通う平民は、平穏な学院生活を送りたい

秋月 史明

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第3章 剣術競技祭で刃を向けられる者

第16話 水の魔導具

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「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」

 控え場所に戻ったレイシアは二組の皆に囲まれていた。

「あの変態、絶体痛い目に遭わせてやる」
「女の敵に容赦の二文字は不要よ!」

 通称、エロ大将は二組のほぼ全員の反感を勝っていた。

  ……。

(やはり、二組が勝ちましたわ……)

 観客席から第一試合を見ていたエリアナはそんな事を考えていた。

(二組の皆さんが優勝してくれる事を祈っておりますわ)

 これまでのエリアナとは思えない事を考えているのには理由がある。

 彼女はしまったのだ。
 王女を殺してはいけないこと。
 殺せば、国王の意のままになってしまうこと。
 そして、自分が属する聖国研究会がやろうとしている事が間違いである事に。

 ……。

『第二試合終了! 一組の勝利です! 流石は優勝候補、次の試合で二組はどこまで食らいつけるのでしょうか!』

 実況の声が会場内に響く。

「シルフィ……待っていろ。俺が必ず恥をかかせてやる」

 シャルアはそんな事を呟きながら控え場所に戻っていた。

「この調子なら次の試合も楽勝じゃん!」
「シャルアがシルフィ・クリネアルをお漏らしさせるって言ってたぞ」
「ああ、あいつって性癖をクリネアル嬢の前で晒したんだってな」

 笑い声が控え場所に響く。

「性癖がバレたからって公爵家の令嬢にお漏らしさせるって馬鹿だろ」
「女の子お漏らしを見るのが性癖なんだろ?」
「え? 女の子に殴られて興奮してたって聞いたぞ?」
「両方だろ?」
「そっか~~笑えるな」
「あはは。面白くなりそうだ」

 そんな会話が交わされている側で、半径10メトル以内ならどこにでも水を生成できる魔導具と、触れた部位の筋肉に力が入らなくなる薬を塗った剣を、シャルアは用意していた。
 もちろん、指輪型の魔導具も。

 ちなみに、薬の使用は許可されていても、魔導具の使用は反則だ。

 ……。

「魔導具の使用許可が出たぁ!?」

 ハルクの頓狂とんきょうな声が控え場所に響く。

「うん。自分が触れてる水を転移させる魔導具だけよ」
「シャルアのアレか」
「うん。先生達も知ってたみたい」

 シルフィはレイシアの勧めで、シャルアを盗聴していたのだ。

「そろそろ行くぞ」

 控え場所にそんな声が響いた。

「シルフィ……それ、上手く動くの?」
「試してみる?」
「手加減しろよ?」
「うん」

 シルフィはそう口にして魔導具を使った。

「ぐっ……やば、漏れる……魔導具貸してくれ」
「ご、ごめん!」

 ハルクは受け取った魔導具を慌てて使って、自身の膀胱の中身を空にした。
 中身を移した先はシルフィの膀胱の中だ。

 シルフィが膀胱の中身をシャルアの膀胱の中に移そうという作戦だ。
 シャルアを一発で失禁させるために、シルフィは割と尿意に耐えている状態だ。

 そんな事を欠片も知らないシャルアは嫌らしい笑みを浮かべながらフィールドに向かっていた。
 その笑みは、一組の生徒達に……

「キモっ……」

 ……と、言わせる程だった。
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