魔女達に愛を

リーゼスリエ

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アスフォルデの環⑦対決

太陽の魔女の痛み

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カテリーナの号令のもと、南の村を包む空気が張り詰めていた。

リセルとクロエが前に出て、ミイナとルナが健司の背後に立つ。

その中で、太陽の魔女・ソレイユは静かに、しかし内側から燃え上がるように前へ進み出た。

その金色の髪は、太陽のように揺らぎ、瞳には赤い炎が宿っていた。

「……健司って言ったか」

ソレイユは声を低くした。

「あなたの言葉、正直……腹が立つのよ」

「え?」

健司は思わず反応した。

「何も知らない人間が、簡単に“信じる”とか、“未来”とか……どれだけ、私たちが、過去に囚われているか……!」

彼女の体から、まばゆい光が溢れ始めた。

それは陽の魔力そのもの――熱と光、焦がす炎。

「ソレイユ……」

エルネアが止めようとしたが、ソレイユは振り返らなかった。

「いいえ、これだけは私がやる。――証明してあげる。理想が、どれほど甘いか」

空が唸った。

次の瞬間、空中に巨大な光球が現れた。

まるで、第二の太陽。

「――サンフレア」

ソレイユが名を告げた瞬間、その光球は村の上空で爆ぜ、空間そのものが燃え上がった。

灼熱が広がり、地面がひび割れ、木々が焼け焦げる。

ルナとミイナはクロエに守られ、リセルは健司のもとへと走る。

だが――

健司だけは、まったく動かなかった。

そして、太陽の熱が健司の体を包んでも、彼の肌は一切焦げなかった。

まるで、太陽の怒りそのものを、無視するかのように。

「……なに?」

ソレイユは呆然とした。

「効いてない……? サンフレアが……?」

炎はすでに消えていた。
だが、村には一切被害がなく、健司はそこに立ったままだった。

「なぜ……?」

ソレイユの声が震えていた。

健司は、静かに答えた。

「……それは、ソレイユさんの痛みに比べたら、たいしたことないからです」

「なっ……!?」

ソレイユの目が見開かれる。

「何を……知ったようなことを……!」

健司は一歩、彼女のほうに進み出た。

「……太陽の下で、何時間も磔にされたことがあるんですよね」

その瞬間、ソレイユの表情が凍りついた。

「っ……!」

「人間に、能力を疑われて、魔女だと気づかれて。陽の光が大好きだったあなたが、光に殺されそうになった」

ソレイユの拳が震えた。

「やめて……」

「誰も、助けてくれなかった。周りの人は見て見ぬふりをした。――その中に、あなたの友達もいた」

「やめろって言ってるでしょ!!!」

ソレイユが叫び、再び手を天に掲げた。

「サンフレア・リバース!!」

太陽の光が、逆流するように集まり、爆発的に放たれた。

熱線が一直線に健司へと向かい、地形ごと焼き尽くすほどの威力を持っていた。

地が焦げ、空が裂けた。

だが――その中で。

「……だから、効かないです」

健司の声は、揺るがなかった。

光が収まった後、健司は、立っていた。

無傷のままで。

「……ソレイユさんが受けた痛み。あなたが、太陽を恐れながらも、愛していた想い。人に裏切られた悲しみ。――それに比べたら、こんな熱なんて、怖くない」

ソレイユは、その場で膝をついた。

「やめて……もう……そんなこと……思い出させないで……」

肩を震わせ、歯を噛み締める。

「私は、ただ……光を、誰かと分かち合いたかっただけなのに……!」

彼女の魔力が、静かに揺れ、収まっていく。

炎のようだった彼女の気配が、どこか――人間らしい温もりを取り戻していた。

「それでいいんです」

健司が手を差し伸べる。

「あなたが、痛みを抱えたままでも。人を信じることが怖くても。――それでも、“共にいたい”と願うなら、きっと誰かと光を分かち合えます」

ソレイユは、その手を見つめた。

そして、ゆっくりと顔を伏せる。

「……悔しいくらい、あなたの言葉は、まっすぐね……」

その姿を、後ろから見ていたカテリーナは、唇を強く噛んでいた。

「……ソレイユまで……」

その瞳に、静かに怒りが宿る。

「幻想を――広げないで」

そして、次なる魔女が、健司へと歩み出ようとしていた。
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