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セレナ編⑧決戦
リズリィの真実 ―ラグナの告白―
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戦いの緊張はひとときの静寂に変わった。
セレナの魔法がリズリィに喰らわした瞬間、勝敗は決していた。
「……勝ったね、素晴らしいよ」
カテリーナが静かに笑みを浮かべ、戦いの終わりを告げる。
肩で息をしながらもセレナは剣を下ろし、視線を落とした。
「……復讐心は、あまりいいものじゃありません。それに……リズリィの動きが途中で止まっていた」
その言葉にリズリィは顔を歪める。
「なぜだ……? なぜ、私は止まってしまった」
そこに割って入ったのは、ソレイユだった。
「あんたが恐怖したからよ。身体が覚えてるんだろうね。自分でも気づかないうちに」
その場を包んだのは、乾いた拍手の音だった。
視線が一斉に向いた先に立っていたのは、ラグナ。
長い銀髪を揺らし、冷ややかに手を叩いていた。
「……まさか、リズリィが負けるとはな」
彼女の声音には、勝者を称える響きなど一片もない。愉悦に満ちた冷笑があるのみだった。
健司はその姿をじっと見つめた。胸に湧き上がった違和感を隠すことなく、口を開く。
「……ラグナさん。リズリィさんが攻撃を受けるその瞬間、あなた……笑っていましたね」
場に緊張が走る。
「トラウマを植え付けたのは、あなたですね」
沈黙のあと、ラグナは口角を吊り上げ、あっさりと肯定した。
「その通りだ」
リズリィの表情が凍りつく。
「な……なぜ……? なぜそんなことを……!」
「簡単なことだよ」
ラグナは肩をすくめ、愉快そうに答えた。
「面白いからだ」
「貴様ァッ!」
リズリィが怒りに任せて突進する。しかし、その攻撃はことごとく空を切る。
ラグナは涼しい顔でかわし続け、そのたびにリズリィの瞳から涙が溢れた。
「もうやめろ……!」
健司が駆け寄り、崩れ落ちるリズリィの身体を支える。彼女は子供のように震え、嗚咽を漏らしていた。
健司はそっと抱き寄せ、頭を撫でる。
「大丈夫だ。君は悪くない。怖かったんだろう……」
ラグナが鼻で笑った。
「優しいな。まるで救済者だ」
しかし、健司の視線は鋭くラグナを射抜く。
「……あなたは誰ですか。ラグナさんではないですね」
広場にいた全員が息を呑んだ。
「な、何を言っているの、健司」
アナスタシアが眉をひそめる。
「本当なの?」
健司は頷いた。
「はい。精神を乗っ取られている。……心当たりがあります」
ラグナは、わずかに目を細める。
「ほう……気づくとはな。なぜわかった?」
健司は静かに答えた。
「昔、とある魔女に聞いたんです。精神魔法の奥義を――。自分の精神を、別の肉体に移し替えて生き延びる者がいる、と」
広場の空気がさらに重くなる。
その魔女とは誰か――アナスタシアも察したのか、唇を強く結んだ。
ラグナ――いや、その中に潜む何者かは、楽しげに口を開く。
「正解だ。私はラグナではない。だが、この身体は便利だ。強靭で、魔力も豊富。なにより、この国で恐れられる名声を持っている」
健司は一歩前に出た。
「……あなたの目的は何ですか。リズリィさんを苦しめ、恐怖を与え続けて……それが“面白いから”なんて、そんな言葉で済むものじゃない」
“ラグナ”は唇を歪めた。
「では、真実を教えてやろう。リズリィは私にとって――実験体だったのだ」
リズリィの瞳が大きく見開かれる。
「じ……っけん……?」
「そうだ。恐怖の感情を極限まで植え付ければ、精神はどう壊れるか。力は増すのか、それとも弱るのか。魔女の潜在力を測るには格好の素材だった」
「やめろッ!」
セレナが叫び、剣を構える。
だが“ラグナ”は一瞥すらくれずに続けた。
「彼女は期待以上の成果を見せてくれた。恐怖で心を縛られたとき、無意識に月の魔法を暴走させ……周囲を壊滅させた。素晴らしかったよ」
リズリィの唇から震える声が漏れる。
「……あれは……私がやったことじゃ……」
健司は彼女の手を強く握った。
「違う。君は悪くない。仕組まれていたんだ」
アナスタシアが息を呑んだ。
「精神を……弄ぶなんて……あなたはいったい……」
“ラグナ”の笑みは、ついにその本性を現す。
「私は、精神を渡り歩く者――“ソール”とでも呼んでおけ。審問官の連中は私を封じたと思い込んでいたが……愚かなことだ。私は生きている」
その名を聞いた瞬間、リズリィとクラリーチェの顔が青ざめた。
「……ソール……!」
「知っているのか」
健司が問う。
「ええ。カリストの審問官の中でも禁忌とされた存在……精神魔法を極め、同胞すら犠牲にした……」
“ラグナ”――ソールは、愉快そうに嗤う。
「正解だ。そして今、私はラグナの肉体を得た。次は……健司、お前だ」
その言葉に、場の全員が息を呑んだ。
健司の心に走ったのは恐怖ではなく――覚悟だった。
「僕は……絶対に屈しません」
その言葉に、リズリィが涙を拭い、セレナが剣を握り直す。
仲間たちの視線がひとつに集まった。
ソールの正体が明かされ、戦いは新たな局面へと突入する――。
⸻
セレナの魔法がリズリィに喰らわした瞬間、勝敗は決していた。
「……勝ったね、素晴らしいよ」
カテリーナが静かに笑みを浮かべ、戦いの終わりを告げる。
肩で息をしながらもセレナは剣を下ろし、視線を落とした。
「……復讐心は、あまりいいものじゃありません。それに……リズリィの動きが途中で止まっていた」
その言葉にリズリィは顔を歪める。
「なぜだ……? なぜ、私は止まってしまった」
そこに割って入ったのは、ソレイユだった。
「あんたが恐怖したからよ。身体が覚えてるんだろうね。自分でも気づかないうちに」
その場を包んだのは、乾いた拍手の音だった。
視線が一斉に向いた先に立っていたのは、ラグナ。
長い銀髪を揺らし、冷ややかに手を叩いていた。
「……まさか、リズリィが負けるとはな」
彼女の声音には、勝者を称える響きなど一片もない。愉悦に満ちた冷笑があるのみだった。
健司はその姿をじっと見つめた。胸に湧き上がった違和感を隠すことなく、口を開く。
「……ラグナさん。リズリィさんが攻撃を受けるその瞬間、あなた……笑っていましたね」
場に緊張が走る。
「トラウマを植え付けたのは、あなたですね」
沈黙のあと、ラグナは口角を吊り上げ、あっさりと肯定した。
「その通りだ」
リズリィの表情が凍りつく。
「な……なぜ……? なぜそんなことを……!」
「簡単なことだよ」
ラグナは肩をすくめ、愉快そうに答えた。
「面白いからだ」
「貴様ァッ!」
リズリィが怒りに任せて突進する。しかし、その攻撃はことごとく空を切る。
ラグナは涼しい顔でかわし続け、そのたびにリズリィの瞳から涙が溢れた。
「もうやめろ……!」
健司が駆け寄り、崩れ落ちるリズリィの身体を支える。彼女は子供のように震え、嗚咽を漏らしていた。
健司はそっと抱き寄せ、頭を撫でる。
「大丈夫だ。君は悪くない。怖かったんだろう……」
ラグナが鼻で笑った。
「優しいな。まるで救済者だ」
しかし、健司の視線は鋭くラグナを射抜く。
「……あなたは誰ですか。ラグナさんではないですね」
広場にいた全員が息を呑んだ。
「な、何を言っているの、健司」
アナスタシアが眉をひそめる。
「本当なの?」
健司は頷いた。
「はい。精神を乗っ取られている。……心当たりがあります」
ラグナは、わずかに目を細める。
「ほう……気づくとはな。なぜわかった?」
健司は静かに答えた。
「昔、とある魔女に聞いたんです。精神魔法の奥義を――。自分の精神を、別の肉体に移し替えて生き延びる者がいる、と」
広場の空気がさらに重くなる。
その魔女とは誰か――アナスタシアも察したのか、唇を強く結んだ。
ラグナ――いや、その中に潜む何者かは、楽しげに口を開く。
「正解だ。私はラグナではない。だが、この身体は便利だ。強靭で、魔力も豊富。なにより、この国で恐れられる名声を持っている」
健司は一歩前に出た。
「……あなたの目的は何ですか。リズリィさんを苦しめ、恐怖を与え続けて……それが“面白いから”なんて、そんな言葉で済むものじゃない」
“ラグナ”は唇を歪めた。
「では、真実を教えてやろう。リズリィは私にとって――実験体だったのだ」
リズリィの瞳が大きく見開かれる。
「じ……っけん……?」
「そうだ。恐怖の感情を極限まで植え付ければ、精神はどう壊れるか。力は増すのか、それとも弱るのか。魔女の潜在力を測るには格好の素材だった」
「やめろッ!」
セレナが叫び、剣を構える。
だが“ラグナ”は一瞥すらくれずに続けた。
「彼女は期待以上の成果を見せてくれた。恐怖で心を縛られたとき、無意識に月の魔法を暴走させ……周囲を壊滅させた。素晴らしかったよ」
リズリィの唇から震える声が漏れる。
「……あれは……私がやったことじゃ……」
健司は彼女の手を強く握った。
「違う。君は悪くない。仕組まれていたんだ」
アナスタシアが息を呑んだ。
「精神を……弄ぶなんて……あなたはいったい……」
“ラグナ”の笑みは、ついにその本性を現す。
「私は、精神を渡り歩く者――“ソール”とでも呼んでおけ。審問官の連中は私を封じたと思い込んでいたが……愚かなことだ。私は生きている」
その名を聞いた瞬間、リズリィとクラリーチェの顔が青ざめた。
「……ソール……!」
「知っているのか」
健司が問う。
「ええ。カリストの審問官の中でも禁忌とされた存在……精神魔法を極め、同胞すら犠牲にした……」
“ラグナ”――ソールは、愉快そうに嗤う。
「正解だ。そして今、私はラグナの肉体を得た。次は……健司、お前だ」
その言葉に、場の全員が息を呑んだ。
健司の心に走ったのは恐怖ではなく――覚悟だった。
「僕は……絶対に屈しません」
その言葉に、リズリィが涙を拭い、セレナが剣を握り直す。
仲間たちの視線がひとつに集まった。
ソールの正体が明かされ、戦いは新たな局面へと突入する――。
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