婚約者の恋

うりぼう

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悔しい。
悔しすぎる。

「なーんか全然歯ごたえなかったんだけどー」

笑いながら首を傾げるその姿も腹が立つ。
けれど確かにアルの圧勝なのは間違いない。

「全然攻撃出来なかった……」

ええい負けは負けだ。
潔く認めなければ。
最初の一撃しか攻撃を繰り出せなかったのが情けなくてがっくりと項垂れる。

何でだ?
アルが強いのは確かなのだがそれでも結界で防ぎつつ攻撃を仕掛けられたはずだ。
なのに結界で手一杯になってしまい全く攻撃に繋げられない。
今のを振り返ってダメなところを探していると……

「全くなってないな」
「え?」

黙って見ていたリースがぽつりと呟いた。

「何が?」
「……」

それに反応して問うがリースはそっぽを向いたまま答えようとはしない。

よし良い度胸だ。
また無視攻撃だな。だんまりするつもりだな。
おっさんのしつこさナメんじゃねえぞ。

ぴきりと青筋を立て矢継ぎ早にリースへと問おうとしたのだが、その前にダリアに答えられてしまった。

「魔力の調節だ」

ちっ、先に答えるなよ。
とは思うが、答えられてしまったのなら仕方がない。

(っていっても、魔力の調節?)

はて、と首を傾げる。
魔力の調節とはその名の通り、魔法の力を自分で調節するものだ。
自由自在、とまではいかないが、ある程度は自分で好きな量の魔力を放つ事が出来る。
初歩中の初歩で、それこそ4、5歳の子供が学ぶような事だ。
それを今になって全くなってないと言われてしまった。

「調節出来てないってことですか?」
「そうだな、無駄に放出しすぎていると思う」
「あーだから結界はめちゃくちゃ強いのに全然攻撃に回らなかったんだ」
「え?え?嘘だろ、ちゃんと調節してるつもりだったのに」
「無駄があるのは確かだな」

リースとアルに続き、ダリアが溜め息を吐きながら近付いてくる。
そっと差し伸べられた手をじとりと見つめる。

「……一人で立てますけど」
「抱き上げられる方が良いか?」
「遠慮しておきます」

そう言ってダリアの手を無視して一人で立ち上がる。

「そこは素直に手借りれば良いのに」
「骨でも折れてれば借りるよ」
「うーわー素直じゃないんだからー」
「はいはいすいませんねー」

アルと軽口を叩き合っているとリースがきょとんとした顔をしていた。
どうしたのだろうと目を向けるがすぐに視線が逸らされる。

何なんだ?
まあ良いか。
それよりも今は俺の魔力の無駄使いについてだ。

「エル、手を出せ」
「え、何でですか?」
「良いから」
「あ……」

先程とは違い、有無を言わさず手を掴まれる。

「魔力の流れを調べるだけだ。そんなに嫌そうな顔をするな」
「……口で伝えられないんでしょうか」
「実際に感じる方がわかりやすい」

片手に魔法具を握りしめたまま下から包むようにダリアの手が重なる。

「何でも良い、使ってみろ」
「はい」

言われるまま魔力を込める。
この距離で攻撃をするわけにもいかないので、光を浮かべる魔法にした。
これも魔力の調節と同じで初級中の初級の魔法。
暗闇で凄く重宝するんだよな、これ。
懐中電灯いらず。
急な停電にも即対応出来るのが素晴らしい。
ぽわぽわっと俺達の周りにテニスボールくらいの光の玉がいくつも浮かぶ。

「……やはりな」
「え、どこかおかしいですか?」
「光の大きさを調節出来るか?」
「ええと、こうですかね」

大きさの調節、大きさの調節、と。

「……あれ?」
「うわあ、とげとげー」
「え?あれ?何でだ?」

大きくしようとしたら光の玉が中から膨張しているようにうようよと動き安定しない。
アルの言う通りにあちこちとげが生えたような形になってしまっている。
どういう事だとダリアを見上げると。

「見ての通りだ。魔力の調節が出来ていれば……」
「おお……!」
「この通り、大きさも量も自由に操れる」

言葉よりも見せた方が早いとばかりに今度はダリアが光の玉を浮かべる。
色を赤く変えているからどちらがどちらのものなのか一目瞭然だ。

「エルの魔力は安定していないんだ」
「え、そうだったんですか?」
「ここ数か月だけどな」
「良く見ていらっしゃることで」
「エルの事だからな」

はいはい、本当に良く見ていらっしゃる。
しかし魔力が安定していないとは気付かなかった。
あまり無駄に放出しすぎていると魔力切れを起こす場合があるし、体力と同じでだんだんと力が入らなくなり、最悪意識を失う事もある。
今まではそんな事なかったが、大会が始まるといつも以上の魔力を消費するので倒れてしまうかもしれない。
ここにきての問題発覚である。
代表に選ばれたのは単純に魔力量が多いし授業でも活躍していたからという事なのだが、これではいけない。

「ちなみに今の魔力の動きはこんな感じだ」
「うっわ……っ」

ダリアの手から伝わってくる魔力にぞわりと肌が粟立つ。
なんというか、気持ちが悪い。
大きかったり小さかったりつつくように触れたりがっつりと掴まれたり、そんな色々な感覚に襲われる。

「きちんと魔力の調節が出来ているとこうだ」
「……!」

こちらも、目で見るよりも明らかだった。
俺の魔力の使い方を模したのとは全く違う、安定していて物凄く心地良い魔力の流れ方。

「……すごいですね」
「伊達に優勝した訳ではないからな」

強い人には強い人なりの理由があるものだと改めて実感する。

(前は出来てたんだよな?)

ダリアが気になり始めたのは数か月前。
という事は前世を思い出してからという事になる。

今まで抑えていたものが爆発してしまったのだろうか。
純粋に魔法使うのが楽しすぎて、魔力の調節なんて考えていなかった。
それとも前世を思い出した事で何か不都合が生じたのだろうか。
どちらにしろ気を付けなければならない。

「それにしても、その内以前のように戻るかと思ったんだが戻らなかったな」
「それって練習すれば戻りますか?」
「ああ、もちろん。ただ使い慣れているものを根本から変えるから少し時間がかかるかもしれん」
「わかりました、練習します」

時間がかかろうがやるしかない。
大会中に魔力切れで退場なんて情けなさすぎる。
そのくらいの調節は出来るようにならなくては。
今後の為にも!




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