勇者の料理番

うりぼう

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ホットドッグと不穏な空気

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「ぶーた、豚ー」

先日太陽が倒した豚型の小型魔獣達。
食肉加工されたそれを更に加工して、えっちらおっちらと作ったもの。
それは……

「わー!良い感じ!」
「ベーコンとソーセージだー!」

そう、ベーコンとソーセージである。
塩漬けして塩抜きして乾燥させて燻製にして、と手間がかかるベーコンだったが魔法の力であっという間。
ソーセージはあらびきにして、さすがに魔獣の腸は使えなかったから市場で豚の腸を仕入れてきた。
たまたま近くに泉があって良かった。

そして完成したベーコンとソーセージが今回初お披露目なのである。
保存してあった保存容器を開くと隣で見ていた太陽の目が輝く。

「めっちゃ美味そうじゃん!売り物みたい!」
「初めての割に良く出来たよね」
「で、どうやって食べんの?」
「そりゃもちろん、こうしてこうして、こうでしょ!」

予め用意してあった細長いパンに切り込みを入れ、そこにレタスを挟みボイルしたソーセージを挟み更にチーズをオン。
それを焼いたものに上からケチャップを掛けてホットドッグの完成!

「ホットドッグだー!」
「これはスタンダードバージョンね」
「他のもあるのか?」
「たま、よくぞ聞いてくれました!他のはこれ!」

と言いながら取り出したのは豆入りの特製ソースとぶ厚めの違う種類のチーズ、そしてカレー粉で炒めたキャベツである。
ソーセージを挟んだパンにたっぷりと特製豆ソースをかけチーズを乗せて焼けば、ずっと前に食べた某コンビニのオリジナルホットドッグが完成。
これ好きだったんだよねー、ソースがピリ辛だけどチーズのまろやかさと相性抜群でめちゃくちゃ美味しいの。
辛いの苦手な太陽ですら一口寄越せと言ってたくらいの一品。
もう一つはカレー粉キャベツとソーセージというこれもスタンダードのひとつだが間違いない一品。
カレー粉が妙にマッチして美味しいんだよね。
普通のも好きだけどこれもたまに食べたくなる。

さてさて次はベーコンだ。
ひとつはカリカリに焼いてサラダに乗せる。
もうひとつはぶ厚めにスライスしたものを焼いて、さらに卵を投入。
そう、ベーコンエッグです!
あのお城が動く映画見て一時期はまってこれ作りまくってたなあ。
あのシリーズの映画反則だよね。
ご飯が全部美味しそうなんだもん。

(あ、やば、お肉三昧になっちゃった)

ホットドッグも肉だしベーコンもあるし肉だらけだ。

(……まあいっか。野菜たっぷりスープもあるしサラダも二種類作ったし、何より朝だもんね!)

お肉食べすぎてもこれから消費されるから問題ないない!

朝からお腹を空かせた太陽や王子、騎士さん達にふるまい、自分も出来立てのホットドッグをぱくり。

「ん!んんー!!」

噛んだ瞬間皮がパリッと弾け、中から肉汁がぶわーっと広がり口の中いっぱいに肉の油の甘さが広がる。
少しさくっとしたパンも美味しいし当たり前だけどケチャップとの相性抜群。
我ながらめちゃくちゃ美味い!
って、ホットドッグなんて誰が作っても大体同じ味になるんだけどね。

「朝日、これやばいめっちゃ美味い!」
「本当?良かった!辛さ大丈夫だった?」
「ばっちり!コンビニのより辛さ控えめにしてくれたんだな」
「そっちの方が食べやすいかと思って」
「さっすが朝日!」

太陽の分だけコンビニで食べたものよりも少しだけ辛みを抑えてあるのにすぐ気付いたようだ。
少しの変化だけどそれに気付かれると嬉しい。

太陽もたまもガツガツ食べるし、騎士さん達もかなり食べるから次々準備しておかないとな、と準備をしようとしたのだが。

「座っていろ」
「え」

ぐいっと腕を引っ張られ、座っていた場所に逆戻りしてしまった。

「何?」
「焼くくらいならば自分達で出来るだろう。たまには落ち着いて食べたらどうだ?」
「え?」

そりゃあとは焼くだけだから自分達で出来るだろうけど、これは俺の唯一与えられた仕事なのに。

「良いから座っておけ」
「いやでも……」
「たまの言う通り、座っとけって」
「太陽までどうしたんだよ一体」

たまばかりか太陽にも止められてしまった。
ついさっきまで普通だったのに突然俺に動くなとはどうしたんだ。

ふと見ると騎士さん達もにこにこしながら自らさくさくと動いておかわりを焼いている。

「そうそう朝日くんは座ってて!」
「何なら俺達がおかわり焼くよ」
「それともサラダ取り分ける?」
「スープにする?」
「え?え?」

え、本当にどうしちゃったのみんな。
俺お役御免?

「良いから甘えておけ」
「いや本当に何が何だかわからなくて怖いんだけど」

料理を作ってふるまうのに慣れてしまっているからか、自分がやられる立場になると困惑してしまう。

自分でやりますから!
ていうか俺にやらせて!
面倒かもしれないけど作る側にもこのタイミングで食べて欲しいっていうのがあるんだよ。
焼き加減とか量とか配分とか色々!

そう思うけれどたまは俺を離してくれないし太陽はしれっと自分でおかわり作って大量に食べてるしウェイン王子もにっこり笑うだけで何も答えてくれない。
結局おかわりは全員自分達でやってしまって、俺の分まで作ってくれて、おまけに片付けもさせてもらえなかった。

(こわ……え、マジで俺お役御免?)

討伐隊を追い出されるのか?
予算使いすぎた?
ご飯しか作れない奴は帰れって?
いや、それか魔獣の肉食わせやがって、とか?
喜んで食べてくれてたように見えたけど実は後からお腹壊したとか!?
それともご飯に飽きた?
そうだよな、俺が食べなれたものしか作ってないんだからこの国の人達には飽きられているかもしれない。
追い出されたら俺どうすんの?
城に帰るの?
でも太陽もいないしウェイン王子だって討伐に出てる状態で城にいられるか?
いられないよ普通に考えて!
だって俺おまけだもん。
太陽がいないと俺の居場所なんてこの国にあるはずがない。

そんな俺に追い打ちをかけるように昼ご飯の時間になり客がやってきた。
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