高塚くんと森くん

うりぼう

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修学旅行編①

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木枯らしの吹き始める時期になり、とうとうオレにとっての高校生活最大のイベントの時期がやってきた!
そう、修学旅行だ!
オレだけじゃない、誰にとっても最大のイベントだと思う。
行き先は北海道。
海外でないのは残念だが仕方がない。
どこに行こうと楽しみなのに変わりはない。

というよりも。

(絶対森と同じ班になるぞ!)

森と一緒ならば砂漠だろうが何もない山奥にだろうが喜んで行ける。
同じ班になれば宿も必然的に同じすなわち旅行中は四六時中一緒。

(いつもと違う場所に上がるテンション、弾む鼓動さりげないボディタッチも許してくれてしかも夜は大浴場!逃げる場所なんてない!男同士だもん同じお風呂に入るのは当然だよね火照る身体滴る汗乱れる浴衣ああああたまんねえ!)

駄目だ想像しただけでもう駄目だ色々はち切れる。
運命のこの日、オレは気を引き締め、いつにも増して気合いを入れた。







今日、道徳の時間に数週間後に控えた修学旅行の説明及び班決めが行われる……のだが。

「……」

なんだか後ろからのギラギラした視線と熱気が怖い。
二学期に入ってから妙に浮き足立っていたが、今日は特に凄い。
なんというか、気合い入りまくりだ。

「というわけで、説明は以上。残りの時間で班決めて、自由時間の行動とか大まかに決めろよー」

先生の言葉に一斉に教室内がざわつく。
と、同時に。

「森ー!同じ班になろ?はいけってーい!」

後ろから高塚が飛びついてきた。

「嫌だ!」
「そんな事言わないで!」
「お前と同じ班なんかになったら旅行どころじゃなくなるだろうが!」

どうせどこに行こうとベタベタと引っ付いてきて場所を弁えない発言連発するに決まってる。
楽しむどころの騒ぎじゃない。
校内ならともかく他所でそれをやられた日には目も当てられない。
それに慣れてしまっている自分が嫌だ。

「良いじゃん!一回きりなんだよ?ね、お願い!」
「う……」

こ、こいつ……!

最近見せてなかった子犬のような目に怯む。
いやだからこういう目は苦手なんだってば。
なんでオレが虐めてるみたいな気持ちにならなきゃいけないのだろうか。

「だっ、でも……」
「お願い!」
「いやだから」
「……つーか、周りもう決まってるから無駄だと思うぜ?」
「え!?」

石野の言葉に辺りを見回すと、確かにもう既に班が出来上がりつつある。
余っているのはというと、オレ達三人といつの間にか傍にいた佐木、そしていつも高塚達と連んでいた横田と間宮である。
ちょうど六人。
何の陰謀だこれは。

「……マジかよ」
「決まりだね!やったー!」
「いちいち抱き付くんじゃねえよ!」

オレの意見をガン無視して、班は決定してしまった。

「まあまあ諦めろって森」
「そうそう、どっちにしろこうなる運命だったんだって」
「男は諦めが肝心だぜ?」
「ま、そういう事だ」

上から佐木、横田、間宮、石野の慰めのお言葉である。
全然慰められなかったのは言うまでもない。

決まってしまったものは仕方がない。
幸い宿は大部屋ばかりだし、変態と二人きりにさえならなければ大丈夫だろう。

そんなわけで自由行動の計画を立て、修学旅行までの日数が過ぎていき……







『いよいよ明日だねー!』

旅行の準備を終えたところでタイミング良くかかってきた電話。
相手は言うまでもなく高塚である。
最近ではこうしてかかってくる電話にも慣れてしまった。

『楽しみだなあ、北海道ってさ、おいしい食べ物いっぱいあるんだよね!』

受話器越しでもにこにこと笑っているのがわかる。
どれだけ楽しみなんだと思わないでもないが、それはオレも同じなので何も言えない。

なんだかんだと話していると、あっと言う間に時間が経ってしまった。

「あ、やべ、もう寝ないと明日起きれねえ」
『ん?ああ、そうだね。明日早いもんね』
「んじゃあな、おやすみ」
『……!も、森ちゃんもっかい言って!』
「は?」
『だって、おやすみって!初めて言われたああああダメオレ寝れないかも今のでたっちゃった!』
「くたばれ変態」

言ってすぐさま電話を切る。
何はともあれ、いよいよ明日である。
高塚とか別の意味でどきどきとはやる胸に、オレも眠れないかもなんて、そんな事を考えた。










当日の朝は見事な快晴。
少し肌寒いが、気持ちの良い朝だ。

「気をつけて行ってくるのよ。向こうはもう寒いから風邪ひかないようにね」
「わかってるって」
「忘れ物ない?ハンカチは?ティッシュは?ちゃんと着替え入れた?ご飯食べ過ぎてお腹壊さないでよ?お腹出して寝ないでしっかり布団に入って、夜更かししないでね?あと着いたら連絡ちょうだいよ?」
「だからわかったって!何歳だと思ってんだよもう……」
「心配なものは心配なの!仕方ないでしょう?」
「はいはい、わかった。んじゃ行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」

ほんの数日なのに物凄く心配をされているような視線を寄越されるが、もう高校生なんだからそこまで心配しなくても大丈夫なのに。
更に何かを言い出しそうな母親を遮り、大きな荷物を持って家を出た。

早朝とも言える時間。
普段ならまだ静まり返っている学校も、この日ばかりは騒がしい。
大型のバスが何台も並び、先生がクラス毎に生徒を分けていた。

「先生おはよーございまーす」
「おう、おはよう。荷物下に入れて乗れー」
「はーい」

担任のいる場所へ行き、言われた通りに大きな荷物を預けてバスへと乗り込む。
中には既に半数の生徒がいた。
席順は自由らしい。
何人かがかけてくれる声に返事をしつつ、窓際が良いなあなんて思ってちらりと見渡すと。

「森ー!おはよう!」
「……」

高塚が後ろの方の席で今日も元気に両手を振ってきた。

そこに行けと。
隣に座れと。

冗談じゃねえと思って渋っていたら、後ろから例のごとく佐木がやってきた。

「よー森。おはよ」
「!佐木、おはよ」
「何止まってんだよさっさと行けよ」
「ちょ、押すな!」

何でいっつもこんなにタイミング良いんだこいつ。
ぐいぐいと背中を押され、高塚の近くへ。

「はい、お届けものお待ちどうさん」
「わ!?」
「!!!」

最後にぽん、と強く押され、高塚の膝の上へとダイブ。
痛くない。
痛くはないがなんてことしやがる佐木このやろう。

「やだー!森ってば朝から大胆!」
「離せボケ!テメェ佐木何すんだ!?」
「えー?だっていつまで経っても座らねえから」
「だからって……!」

押さなくても良いじゃないか。
高塚は嬉々として抱きしめてくるしああうざい。

「離せ!」
「もうちょっと」
「ふざけんな!」
「ふざけてないよー。んーっ森の匂い!これから四日もずっと一緒なんて幸せ!」
「ちょっ、このバカ!」

首筋に顔を埋め犬のように嗅ぐ。
前から倒れたため、目の前には背もたれと窓しか見えず、周りの様子がわからない。
が、絶対ニヤニヤして見ているに違いない。
あいつらはそういうやつだ。

(くっそ!!!)

助けは期待出来ないため、高塚の腿を膝で踏んづけ首筋にあった顔を力任せに引き剥がした。
鋭角に当たるようにしたから相当痛いだろうな。
なんかごりっとしたし。
そうでなくても腿は弱いから大打撃だろう。

「いったあああ!?ちょっ、森ちゃんそれ流石に痛い!」
「うっせえ離さないお前が悪い」
「あ!そうだ、あのね、あの後治まんなくてさー」

痛みに悶えたのも一瞬で、すぐさま復活した高塚に舌打ち。
いや、それよりもあの後って電話の後の事だよな。
何言い出すつもりだこいつ……なんて考えなくても容易に想像出来た。

「しかも森と同じ部屋にいれるってわかったらそれこそ引っ込みつかなくなっちゃって三回も」
「ああああうるせえええ!!!お前は朝っぱらから何考えてんだ!そういう事言うなっつってんだろ!?」
「だってすっげえ可愛かったんだもん森ちゃん!(妄想)皆がいる部屋で襲ったら『声我慢出来ない』とか言っちゃって!(妄想)ちゅーして塞いだら苦しそうなんだけどでもすげえ必死で舌絡めてくんの!(妄想)もう最高!」
「妄想も大概にしろおおお!!!」

頭の中に作家でも飼ってんのかこいつ。
そして本人に妄想をぶち撒けるなと何回言えばわかるのか。
聞きたくもないし、大体にして本当にあった事のように話すのはやめてほしい、つかやめろ。

話しているうちに全員が揃い、担任も乗り込んできて簡単に点呼を取る。
皆がいるのを確認した後、一号車から順番に発車し始めた。
まだ地元も出ていないというのに気分が高揚する。

「楽しみだねー」
「……そうだな」

ふわりと笑む高塚に、オレも笑って答える。
そこは全力で同意しかない。

この修学旅行でオレとこいつの関係が変わるなんて、この時は想像もしていなかった。









「ああ、席離れちゃった……!」

空港に着き受け取った搭乗券にその場で打ちひしがれる高塚。
適当に配られたために離れていて、思わずガッツポーズ。

「誰か席変わ……」
「はーい立ち止まるなー、乗るのお前らだけじゃないんだぞー、さくさく行けーさくさく」
「あっ、あ、あーっ森ちゃあああん!」

変わってと言い終わる前にさらりと引率の先生によって押し込められている高塚。
次から次へと乗り込む人の流れに飲まれ、あっさりと引き離された。

全員が搭乗を終え、飛行機が離陸した瞬間にはみんなでうおーだのきゃーだの言って盛り上がった。

「なあなあ、見た?さっき高塚のやつキャビンアテンダントのお姉さんからなんか紙渡されてたぜ」

こそこそと話してくるのは隣に座った佐木。
内容は正直どうでも良い。

「そりゃまた物好きな」
「あれ、気にならねえの?お前のダーリンなのに」
「ダーリンじゃねえ!」

冷たいの、なんて言われたがオレにどうしろと言うのか。
付き合ってられないとばかりにトイレへと行く。

「ねえ、見た?あの高校生超カッコイイよね!」
「見た見た!修学旅行みたいね、どうする?声かけちゃう?」
「やだあ、もー!」
「……」

途中聞こえてきた会話に絶句。
指差し隠す気のない会話の中身は明らかにあの変態。
あっちでもこっちでもよくもまあ。
ていうか高校生に声かけちゃう?とか良く言えるな、とOL風の女性達に思う。

あいつすげえよ地元だけじゃなかったんだな、まあ確かに顔だけは自慢出来るもんな。
なんて席に戻った時。

「おかえりー森ちゃん!」
「……なんでここにいんだよ」

何故か高塚がオレの席にいた。
いや、元々いた奴がいない事を考えると何故なんて理由はわかりきっている。

「佐木が代わってくれた!」
「だと思ったよあんちくしょう……で、その足はなんなんだ」

見下ろすとそこには通路に投げ出された高塚の足。

「えー?オレの胸に飛び込んでこい、みたいな?………っだ!?」

どう見てもその格好は飛び込んでこい、ではなくただの通せんぼである。
躊躇うことなく足を思い切り踏みつけて、怯んだ隙に背もたれの方へと押し付け奥に座った。

「いったい!」
「ああごめんごめん」

鼻で笑って全く心の籠もってない声で謝ったのに。

「ああっ、森ったらそんな顔も可愛いなんて反則!」
「くたばれ変態空から飛び降りちまえ」

全く効果がなかった。
高塚効果なのだろうか、色んな女子から貰ったお菓子をぽりぽりと食べ。
珍しくセクハラなしに他愛のない話をしているうちに、段々と瞼が重くなってきた。

「……森?」
「んー……」

高塚の呼び掛けに生返事をして、夢の世界へと旅立っていた。

目が覚めた時に高塚の肩へと頭が預けられていたのは、きっと奴が引き寄せたからに違いない。
断じてオレから寄っていったわけじゃない……はずだ。




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