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番外編(恋人編)
半分こ
しおりを挟む「っ、寒っ!!」
学校を出た瞬間に襲ってきた冷たい風に肩を竦ませる。
「寒いならあっためてあげるよ!もちろんオレの身体で!」
「っ、抱き付くんじゃねええええ!!!」
「はぐあっ!!」
後ろからがばりと抱き付いてきた高塚の足を踵で踏みつける。
「い、痛いよ森ちゃん……!」
「お前が変な事するからだろ!」
「変な事じゃないよ、森ちゃんの盾になって寒さから守ろうとしたのに!そりゃあわよくば家までくっついたまま帰ろうかなとか帰ったら肌と肌を重ねて暖め合おうかなとか色々考えたけど!」
「それが変な事だっつんだよバカタレー!!!」
「変じゃないもん!」
叫んだ高塚が、今度はそっとオレの手を包み込んできた。
「……っ、おま……!」
「大丈夫だよ、誰もいないから」
「そうだけど!」
「好きな人に触りたいっていうのは普通のことでしょ?」
「……」
「それに、好きな人が寒がってたら暖めてあげたいのも普通のことでしょ?」
まっすぐに目を見つめられ諭すように言われるが、
奴は繋いだ指先をオレの手にちゃっかりと滑らせている。
そんな高塚をじろりと睨む。
「だから、お前のは下心が丸見えなんだよ」
「森ちゃんは嫌?手、離した方が良い?」
「……っ」
しゅん、と眉を下げ子犬のような瞳を向けられ言葉に詰まる。
こいつ絶対オレがその顔に弱いってわかってやってる。
「……離さなくても良い」
相変わらずそれには抗えず、ぽつりと呟く。
途端に高塚の表情がぱあっと明るくなる。
そら見ろこの変わり身の早さ。
「良いか、寒いからだからな!そうじゃなきゃ外でなんか……!」
「うん、わかってる」
「ニヤニヤすんな」
「それはムリだよ、嬉しいんだもん!」
「だからニヤニヤすんなって!」
「森ちゃん、大好き!」
「なっ、ばっ!こんな所で何言い出すんだよ!!」
「いつもの事じゃん」
「誰かが聞いてたら」
「それもいつもの事でしょ」
ぶんぶんと繋いだ手を大きく振り回されながら凍えそうな道のりを並んで歩く。
「あ!森ちゃん、肉まん食べよう肉まん!」
「食いたいけど……」
「けど?」
「……今月金欠」
「あはっ、オレも!だから半分こしよ!」
「わっ、ちょ?!」
「コンビニまでレッツゴー!」
「ば、バカ!手は離せ!!」
「やーだ、店員さんに見せびらかすんだもん!」
「はああああ?!ふざけんな!!」
「ふざけてないもん本気だもん」
「っ、っ……!!」
振り解こうにも高塚の手はがっちりとオレを掴んでいて離れず、結局そのままコンビニまで連れて行かれ。
店員の驚いた後の生温い視線に晒されながらひとつの肉まんを半分こにして。
寒くて仕方がなかったはずの帰り道が、恥ずかしさといたたまれなさのせいで一気に暑くなり。
これは決してこいつと手を繋いでいるからではないと、肉まんを頬張りながら必死に心の中で言い訳を続けた。
終わり
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