復讐のはじまりは暗くて寒い

皐月亭 もっちりー

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168.

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「ん?あーフクロウ…とか?」

目の端で光るシグナルに気づき資料から目を上げた
その視線の先にはバニエアラ邸の庭の全図がありその図の屋敷の西側に一つの白っぽい光の印が新しく灯り点滅していた

光の色と大きさそして点滅の仕方で何が入ってきたかが大体分かるようになっている
その仕掛けはこの屋敷の一番外側に仕掛けられた魔道具によるもので今、点滅しているその光から読み取れる情報はそれがおそらくは小動物であり北の高い屏を越えて来た事
その事からおそらくは鳥だろうと予想した
王都にいる鳥の種類から考えてフクロウあたりかと推測したのだ

しかし、西寄りに庭をふらふらと進んでいる光を見つめて眉をひそめた

「鳥か?」

その光の挙動は鳥だと考えた彼の推測を裏切るものだった
あの屏を越えるなら鳥だと考えたのだが、誰かが何かの意図を持って投げ込んだ物ならそうとは限らない

「面倒だな…」

自分がこの仕事を選んだ理由は2つで1つ目はこの仕事が楽だからだ
男爵家とはいへども貴族である事に変わりは無いのだ王都の貴族家でそうそう警備上の問題なども起こる訳がない
この仕事は面倒もなく余った時間を好きに使えた実際に少し前までは理想の職場であった

だが、今は明らかにめったに起こらないはずの面倒が起きていた
バニエアラ男爵家の当主よりその後ろにいる侯爵家の事を考えるとこれを知らなかったと無視するリスクは負えなかった
今の王都の政治状況でこのバニエアラ家に何かを仕掛けるなんてバカなのかと思うがそういうバカは絶滅しない事も知っていた
仕方が無いとため息をつきローブを手に取ると部屋を出た

扉を開けると廊下の向こうは吹き抜けになっていて階下のがらんとした待機所内の様子が見て取れた
バニエアラ邸の警備の中心であるこの建物の一階には今は二人ほどしかいなかった

バニエアラ夫人が亡くなって直ぐにこの屋敷のあちこちから人が減っていった
慌てたバニエアラ家の家人が頭を下げてまわり何とか残った最低数の人で現在は屋敷をまわしている状態だった
この待機所にも以前は5~6人は常駐していたのだが今はこの有り様だった

「西の3番の辺りに外から不審物が投げ込まれたようだ
侵入物のその後の動きから考えると…犬か大きめの猫だろう」

流石に人ではないだろうと考えていた
人であった場合は赤子や幼児の様な大きさだったからだ
あの高さから人が落ちては無事ではすまない

「庭の西側を死なずにうろうろしているようだ私が確認に行くからお前達は屋敷の外の確認へ行け」

そう指示を出すと自身は庭の西側に最短で進むために整えられた花の咲く花壇に当然の様に踏み入り踏み分けながら進んでいった

その傍若無人な行動を見咎める者は居ない

この広い庭園を管理する者達は今は数人しか居らず
この庭を荒らす様な暴挙に怒りそれを雇用主へと告げ口する者は居ないので心配はなかった

だから、彼の今の心配はローブの中の魔法のスクロールについてだった
王都で許可無く使って良い魔法は決められていて彼の得意とする魔法は必ず許可が必用な物ばかりだった

彼の使う雷系統の魔法は効果範囲が大きくターゲット以外の周りも巻き込むためだった
王都などの人の多い場所では危険なだけで需要もないのは当然だった

得意とする魔法が使えないなら他の魔法を使えばいいのだが彼ははっきり言って下手くそだった
ターゲットを絞るのが苦手で雷系統の様な大雑把な目標で大きな範囲での効果がある魔法以外で標的を仕留めた事が無かった

「まあ、死にかけの動物なら当たるか?」

外れても数打てば当たるだろうとローブの中のスクロールに込められた魔法を確認していた

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