復讐のはじまりは暗くて寒い

皐月亭 もっちりー

文字の大きさ
227 / 274

178.

しおりを挟む
突然現れた獣は『言葉』を使った
頭を下げ従順を示した
その光景にはどこか儀式の様な厳かさがあった…

それらを目の前で見ていた大人達は動けなかった
彼らの知る常識が揺さぶられ驚きにより頭は混乱した目の前の出来事に対応できず言葉もなくただ傍観していた

しかし、幼いエメージュは良くも悪くも柔軟だった
世の中の常識などまだよく知らない彼女にはあり得ないことなど無かった
獣が言葉を使っても驚くことはなかったしその獣が纏う存在感に対して無頓着で臆する事もなかった

エメージュは起き上がると指を突きつけ怒りの感情のままに叫んだ

「どろぼうっ!!勝手にシュシュにさわらないでよ」

エメージュは獣が言葉を使ってもそれに驚くことはなかったがその代わりに嫉妬をした
それはシュシュの語ったその言葉が自分ではなく別の少女に向けられた物であったからだった
言葉の内容を全て理解できなかったが
自分は『アナタノモノ』と言っている事は分かった

更にその少女が大胆にも手を伸ばしその白い毛皮を撫でたのだ
自分の許しもなく!

シュシュをもらった時には彼女はシュシュをペットとして可愛がるつもりだったし
その美しいフカフカの毛並みを撫で回し顔を埋める事を夢想したが叶わなかった

時間をかけてもシュシュとの関係は縮まらず仲良くは成れなかった
常に檻越しにしか会えずその冷ややかな眼差しは歩みよりを許さず一定の距離を保つしかなかった
見ているだけでは直ぐに飽きてしまい世話係に任せきりになった
エメージュが自発的にシュシュに会いに行くことはなくなり用が無ければ思い出すことも無くなった

それでも、シュシュは自分の物だった
あの鳥とは違う
あれは要らないとエメージュが捨てた物だったその後に他の人の物になっても構わなかったが
シュシュを捨てたことも要らないと言ったこともない!
勝手に他人の物に手を出すのは泥棒だと母も兄も言っていた
それなら目の前の少女は? 

わたしの物を家から勝手に持ち出したうえに自分の許しも無く勝手に撫で回しているこの少女は間違いなく『泥棒』だった

エメージュの大きな怒鳴り声に驚き顔を上げたリザリディスに向けて怒りで真っ赤になった顔をしたエメージュが足を踏み鳴らし駆け寄ってきた
シュシュから引き離すために突き飛ばそうと突進してきたのだった


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...